オカルト作家村上春樹氏の今回の作品は、幾分ファンタジー寄りで楽しく読めました。655ページの長編というのでずっしり重い内容を予想していましたが、とても読みやすかったです。

 

過去の村上作品で一番好きだったのが「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」なのですが、今回の新作は「壁」に囲まれた不思議な世界を描いていて、当然この作品を受けた続編なのか、完結編のようなものなのか、期待と不安を持って読みました。

 

読後感を一言でいうと、素晴らしかったです!ある意味、彼の代表作と言ってもいいのでは・・・ とこれはあまりに個人的過ぎる意見かもしれませんが。

 

第一部。

17才の僕は16才の少女に恋をする。その彼女が、壁に囲まれた不思議な街のことを教えてくれる・・・とこれは思い出話。彼はその壁の街で暮らしている。脱出を考えたりしながら。

 

第二部。

こちら側の世界にいる彼はもう40代。かつての少女が忘れられずに孤独な生活を送っている。地方の図書館の責任者の職を得て、そこで不思議な出会いを経験する。サヴァン症候群の感じの少年と壁の街。

 

 

ところで第二部に行った時、あれ?彼はあの街から脱出していないはずなのに・・・?と思ったのですが、というか他もナゾや疑問だらけの物語ですが、

 

第三部。

ここでナゾ解き。いや、解かれるほど簡単な世界ではないけれど、ちょっと、あっ という感じでした。見事だと思いました。多分本作は賛否両論別れると思いますが、ユーリ的には、大好きな作家テッドチャンのレベルで、この私達の世界の謎というか真理を、美しく描いてくれたと思います。

 

 

読み始めの文体が、何だか彼の初期の作品を思わせるような。美しいけれど甘ったるくて気取った文章?「春樹だけは絶対読まない!」という方がたまにおられますが、わかる気もしますww

 

でもそのプロットは甘くなく、深くて鋭敏です。相変わらずの行きて戻る物語。井戸もしっかり登場。

人は死んだら、もといた場所にもどるのだろうか、

この世界とは、自分とは、そもそも何なのだろうか、といった事に日々関心がある方にお薦めの一冊    かもww