翻訳ものを好んで読みますが、イスラエル発のSF小説は初体験。しかも、面白いもの名人のぱい師のご推薦本です。後ろの解説を入れて700ページ余、全16篇をたっぷり楽しみました
1作目「オレンジ畑の香り」
未来のテルアヴィヴ、夜に浮かぶ明るい宇宙港を遠くに眺めながら、男はかつてそこに広がっていたオレンジ畑に思いをはせる。
今、自分達は、オーグやノードを装着し、一族の全ての記憶を共有できる。「他者」という、これは超AI的な存在?というか機能?がヒトの身体に「相乗り」している。
「人格とは何十億という神経繊維でできた合成装置で、人間の脳という灰色物質のなかで半独立的に作動する精妙なネットワークでしかないのだ」
やたら未来すぎて、ほぼ感覚的にしか分からないのだけれど、それでも抒情的な美しさの広がる一編にまずうたれる。
「アレクサンドリアを焼く」
街中の空き地に突然真っ黒な謎の球体が出現して、兵士たちが出動する。球体内部に入った彼らが出会った「司書」。そこは延々と維持されてきた惑星地球のアレクサンドリア図書館だった。
「エルサレムの死神」
モールは35才。大学で働く。ある日、端正で清潔で知的でリッチでやさしい男性ディビッドと出会って恋に落ちた。彼の唯一の欠点は、どんな美味しい食べ物にも興味がない事だった。彼の身体が暗闇で青い微光を放ったり、金属的な光が漏れていたりするあたりからだんだんと面白くなりますwww
「夜の似合う場所」
2年も続いている脅威の空中竜巻の話から入って、これは異常気象による異変とそこからのサバイバルという、よくある話ではあるのだけれど、登場人物達がリアルで本能的というか生理的に描かれて、独特の物語になっています。けっこう傑作かも。好きではないですがw
「ろくでもない秋」
物凄いおもしろさ!「何かが起きつつあった」という一文から始まって、ハチャメチャにいろいろ起きていきますww
彼女が突然去り、ルームメイトの両の瞳が輝きだして何やら啓示を受け教祖的に大人気となり、実入りもどっさりw
ロバが喋り、UFOが訪れ、主人公の部屋はピカピカに磨き上げられ、いろいろあってww彼は死のうと拳銃を手に海辺へ。
次々にテンポよく展開していってのラストも、にんまり大満足の作品。映画になるといいのにと思いました。
この作品にもしか代表されるように、こういったSF作品や、あとファンタジー等も、ただ興味をかき立てるための絵空事の羅列、と思う方もあるかもしれません。でも優れた仮想作品は、時にリアリスティックな作品を超える、と思っています。なぜならこの世界のことを言葉でどう描いてもそれは言葉でしかない、むしろファンタジーやSFのほうが潜在意識に落ち込んで、このわからない摩訶不思議な私達の存在世界をくっきり感じさせてくれることがある、と思うのです、あ 存在ってそういうことなのね、みたいなww
個人的感想です。分かりにくくてすみません。
たとえば上の「ろくでもない秋」読了時思ったのは、人生ってある時気づきもせずに奇跡のように始まって、いろいろ、それこそいろいろあって経験して、そしてまた戻るんだ、始めに、つまり無に。と変に納得しましたww
なおこの作品↑は実のところ、おバカ系コミカル話ですので、念のためww
個人的な余計な話にいってしまいましたが、このイスラエルのSF集はいつも読むのとはちょっと違った雰囲気もあり、どれも興味深く読みました。
未来の立体ジグゾーパズル・・3次元レプリカを何万ものピースから作りあげるコンテストや、睡眠中の夢で見た人物をリアルに引き寄せてしまう話や、鏡の話・・・違うのが見える怖いやつですヾ(。>﹏<。)ノ
きりがないのでこの辺で。お薦め作品です♪♪^^