中国系アメリカ人作家ケンリュウ氏の、最新短篇集を読みました。

 

これまでいくつか彼の作品を読んできて、そこそこ面白いと思ってきましたが、今回この作品で、個人的に一気に株が急上昇www

秀作ぞろいの一冊です!

 

一番おどろいた?のが最後に収録されている歴史を終わらせた男-ドキュメンタリー

ボーム・キリノ粒子によって過去のある時点に行くことができる。

「我々は自分の目で事実を見る」

関係者が訪れた先は、中国平坊地区。あの731部隊のところです。まさかの、残虐な史実が描かれて、読むのがかなりきつかったです汗

「星を見上げてください。わたしたちは平房区の最後の犠牲者が死んだ日に発せられた光を浴びているのです

「わたしたちは彼らの悲鳴を聞き、彼らの幽霊のなかを歩くのです。わたしたちは目を逸らせたり、耳を塞ぐことはできません」

その後の事、ミドリ十字社のことなどもしっかり記載。

「ドキュメンタリー」という体裁を取ったのもわかります。力作です。

 

 

いちばん好きだったのが「メッセージ」

父と子がある異星人の廃墟の都市を探索する話ですが、この都市の存在がすごくいい!元妻の死後に初めて一緒に暮らすようになった娘への思いも切々と描かれて、そしてタイトルの「メッセージ」。

ラスト大泣きで読みましたwww これは映画になるといいなー。

 

冒頭の表題作、「宇宙の春」も素晴らしかった。宇宙の生成と収縮を四季に例えて、ちょうど冬の時期、つまり全てのものの終末期にいるある知的存在が語る・・・ファンタスティックで美しくて切ない小編。

 

「灰色の兎、深紅の牝馬、漆黒の豹」はいかにも中国っぽいファンタジー活劇。こちらも映画になると絶対面白いと思います。冒険ものです。

 

「マックスウェルの悪魔」

アメリカで生まれ育ったひとりの日本人女性の、戦時中の困難。

戦争末期の沖縄が描かれます。これもなかなかつらい物語。SFですがww

 

今回、ケンリュウ氏、かなり突っ込んで書いている気がします。

「中国人はうその巨大メーカー」という一文も目にしたりwww

 

全部で10編、どれもすばらしいSFの理論に驚かされ、めくる手が止まらないストーリーにも唸らされ、そして作品全体の持つ美しさや切実さ。これはSFファンに限らず多くの方々に読んでいただきたい作品だと思いました。