8編からなる短編集です。
「ルオエス」
街に、いつの間にか砂漠が入り込んできた。ルオエスの街に。
かつてはそうではなかったのに。いつ、どうやって。
「私」はバスに乗ってルオエスに出かける。
それから地下鉄に。街を彷徨う。人々を見る。砂の匂いの風が吹きすさぶ。
とりたてて事件が起こるわけでもなく、(いや、あるにはあるのだけれどまるで夢を見ているような感覚?)淡々と歩み語る「私」。不思議な感覚があって、夢幻的でおもしろいです。
とりあえずこれが表題作ということに。砂漠が入りこんだ街ルオエス、LUOES、アルファベットを逆読みするとSEOUL、ソウル。
この小説はフランス語の作品ですが、著者のグカ・ハンは
韓国人。33才の女性です。26才の時韓国を離れパリ大学で学び、わずか6年でこのフランス語の小説を発表して、評価を得ているようです。
固有名詞は多分出てきていない?「私」あるいは「あなた」で語られて行きます。人々の性別もそのため時に不明になる、もしくは
読んでいて揺らぐ。
恋話である「真夏日」もそんな一作。激しくて静かな、不思議な魅力です。
「雪」ではある友との交流とその死のことが語られる。静かで切々として、ラスト3行の美しさには、泣いてしまうw
このデビュー作品、まだ韓国では出版されていないとのこと。
著者自身の翻訳?で出版されるでしょうかww
独特な筆致にすっかり魅了されました。
次回作を待ちたいと思います。