4月に出た中村文則氏の新刊。

 

いつもながら、読むと・・・・引き込まれます。物語の面白さに、ではなくて、ぽっかり足元に黒い穴が出現してその底知れない不気味さの中に・・・ドクロ

 

残虐なサスペンスなども読みますが、この方の作品は全く違う種類の恐ろしさをいつも感じます、個人的に。

 

それは多分、フィクションを超えてあまりにリアルなものを突き付けられるから。かも?

 

 

 

 

今回の物語。

戦時中に作られたある美しいトランペット。”熱狂”と呼ばれ魔力を持つそのトランペットを所持してしまった主人公は、謎の男に付け回される。

「一週間後君が生きている確率は4%だ」

 

逃亡の日々が始まる。

彼にはどうしても果たしたい事があった。

事故で死んだ恋人の残した断章をまとめて、小説として完成させたい・・・・。

 

主人公と恋人のそれぞれの来歴、そこから過去におけるキリスト教の弾圧のことや、トランペットをめぐっては戦時中の事がかなりページ数を割いて語られます。

そのあたりは・・・もう相当にキツイですあせる

 

 

「海行かば」という曲をこの本で初めて知りました。

昭和に作られたいわゆる唱歌?軍歌?歌詞は万葉集の大伴家持の歌から取られており、戦時中に意志高揚のためによく歌われたらしいです。

かなりショックを受けた歌詞なのでここに写しますww

 

”海行かば 水漬く

 

 山行かば 草生す屍

 

 大君の 辺にこそ死なめ

 

 かえり見はせじ”

 

((海に行けば水に浸かった屍となり、山に行けば草が生えた屍となり、天皇陛下の足元で死のう、顧みはしない。)

 

もちろん、熱狂をもって誇り高く歌われたわけです。(作中では魔のトランペットでこれを演奏してさらに鼓舞しようという.ww)

 

・・・・・・・・・・あせる

 

 

それから、日本におけるキリスト教の歴史、過去のあの凄まじい弾圧(フィクション顔負けの残虐さ汗)とそれにも屈せず(というか苦しみ惑いつつ)信仰を持ち続ける人間の力、それも個人一代ではなく何百年にもわたって持ちこたえてついには日本に根付いたという事実。

 

いろいろ考えさせられます。

 

ただ、最初に書いたこの作品に感じた不気味さ怖さというのは、そういった内容に基づいてではなくて、

 

カフカの「審判」を読んだときに感じたような、この世界が存在すること自体の不条理さ?わけの分からない、どうにもならない感?

不可解さが恐怖になっていく感じですww

 

 

なので、いつも中村作品は気持ちが落ちるので読みたくない汗

 

でも 何かに惹かれてつい読んでしまうあせる

 

個人的には、小説としてはもっと構成も表現もきっちりと素晴らしい物語がいくらでもあると思う。

でもこの方はやはり何か、持っているのかなーと。ぜったいに好きな作家さんでは無いのですがww

 

 

 

 

 

さぁ、やっとたどり着いた日曜日!読むのが面白くてたまらない秀作小説を読みます!!  叫び