本の紹介です。

馬たちよ、それでも光は無垢で/古川 日出男

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福島出身の著者が震災一ヶ月後にふるさとを訪れた時の様子を中心に、小説家としての思いや葛藤を描いた作品。

ほぼルポですが、作者曰く(うそを一個も書かないフィクション)とのこと。


本文から抜粋。


「どうして犠牲者は私ではないのか。(中略)どうしてあちらのあの人たちが犠牲者なのか。」


「生まれてきたっていいんだろう。囁いているような声が聞こえる。私にできることは他者を憎まず、世界をも憎まないことだけで、それはつまり、態度としてはひたすら愛することだった。私はそれを、私たちの態度(もの)になることを望んでいる。」


「私たちはどうすればいいのか。私たちは誰も憎めない。だとしたら、そこにしか希望はない。私たちは憎まず、ひたすら歩くしかない。」




タイトルの「馬たちよ・・」というのは、その地名が馬に由来している相馬地区を訪れたときのことから来ています。


「私は馬たちに、放出される放射線は目に見えないのだ、と説明することもできない。(中略)そもそも光は光だから、見えない。これほどの晴天なのに。いいや、晴天だから。」


ただそこにある幸せってほんとに失って初めてそれと気づくんですね・・。

放置され脱走した白馬が、他の家畜と共に雑草を見つけて喰むシーンがあります。


「そして雑草たちを光が育てている。降る、陽光が。」


ずいぶん重い作品ですが、それでも最後は希望と力を感じさせてくれる。

ヒト(作者)の苦悩に触れてそれによって自分がチカラを得るっていうのどうかなとも思いますが、それが小説家としての古川氏の本望かもと思いつつ、読んで不思議なチカラ宝石ブルーをもらった本でした。