第一篇 幽界の探検 八衢の光景  〔六〕 | フリーランス宣伝使への道

フリーランス宣伝使への道

フリーランス宣伝使を目指して修行中!

前の記事

--------------------------------------------

ここは黄泉(ヨミ)の八衢(ヤチマタ)といふ所で米の字形の辻(ツジ)である。

その真中に一つの霊界の政庁(セイチョウ)があつて、
牛頭馬頭(ゴヅメヅ)の恐い番卒(バンソツ)が、猛獣(モウジュウ)の皮衣(カワギヌ)を身につけたのもあり、
丸裸に猛獣の皮の褌(マハシ)を締めこみ、突棒(ツクボウ)や、手槍(テヤリ)や、鋸(ノコギリ)や、斧(オノ)、鉄棒に、長い火箸(ヒバシ)などを携(タスヅサ)へた奴が沢山に出てくる。

自分は芙蓉(フヨウ)仙人の案内で、ズツト奥へ通ると、
その中の小頭(コガシラ)ともいふやうな鬼面の男が、
長剣を杖に突きながら出迎へた。そして芙蓉仙人に向つて、

 『御遠方の所はるばる御苦労でした。
  今日は何の御用にて御来幽(ゴライイウ)になりましたか』

と恐い顔に似合はぬ慇懃(インギン)な挨拶をしてゐる。
自分は意外の感にうたれて、両者の応答を聞くのみであつた。

芙蓉仙人は一礼を報(ムク)いながら、

 『大神(オホカミ)の命により大切なる修業者を案内申して参りました。
  すなはちこの精霊(モノ)でありますが、
  今回は現、神、幽の三界的使命を帯び、
  第一に幽界の視察を兼ねて修業にきたのです。
  この精霊(モノ)は丹州(タンシウ)高倉山(タカクラヤマ)に古来秘めおかれました、
  三つ葉躑躅(バツツジ)の霊魂です。
  何とぞ大王にこの旨御伝達をねがひます』

と、言葉に力をこめての依頼であつた。
小頭は仙人に軽く一礼して急ぎ奥に行つた。
待つことやや少時(シバシ)、
奥には何事の起りしかと思はるるばかりの物音が聞ゆる。

芙蓉仙人に、

 『あの物音は何んでせうか』

と尋ねてみた。仙人はただちに、

 『修業者の来幽につき準備せむがためである』

と答へられた。自分は怪しみて、

 『修業者とは誰ですか』

と問ふ。仙人は答へていふ、

 『汝のことだ。肉体ある精霊(モノ)、幽界に来るときは、
  いつも庁内の模様を一時変更さるる定めである。
  今日は別けて、神界より前もつて沙汰なかりし故に、
  幽庁では、狼狽の体と見える』

と仰せられた。
しばらくありて静かに隔(ヘダ)ての戸を開いて、
前の小頭は先導に立ち、数名の守卒らしきものと共に出できたり、
軽く二人に目礼し前後に附添(ツキソ)うて、奥へ奥へと導きゆく。

上段の間には白髪異様(ハクハツイヨウ)の老神(ロウシン)が、机を前におき端座したまふ。
何となく威厳(イゲン)があり且つ優しみがある。
そしてきはめて美しい面貌(メンボウ)であつた。

 芙蓉仙人は少しく腰を屈めながら、
その右前側に坐して何事か奏上する様子である。
判神(サバキガミ)は綺羅星(キラボシ)のごとくに中段の間に列(ナラ)んでゐた。

老神は自分を見て美はしき慈光(ジコウ)をたたへ笑顔を作りながら、

 『修業者殿、遠方大儀(タイギ)である。はやく是(コレ)に』

と老神の左前側(サゼンソク)に自分を着座(ツカ)しめられた。
老神と芙蓉仙人と自分とは、三角形の陣をとつた。
自分は座につき老神に向つて低頭平身敬意を表した。
老神もまた同じく敬意を表して頓首(トンシュ)したまひ、

 『吾は根(ネ)の国(クニ)底(ソコ)の国(クニ)の監督を
  天神より命ぜられ、三千有余年当庁に主たり、
  大王たり。
  今や天運循環(テンウンジュンカン)、いよいよわが任務は一年余にして終る。
  余は汝とともに霊界、現界において相提携(アイテイケイ)して、
  以て宇宙の大神業に参加せむ。
  しかしながら吾はすでに永年幽界を主宰(シュサイ)したれば
  今さら幽界を探究するの要なし。
  汝は今はじめての来幽(ライユウ)なれば、現幽両界のため、
  実地について研究さるるの要あり。
  しからざれば今後において、
  三界を救ふべき大慈の神人たることを得ざるべし。
  是非々々根の国、底の国を探究の上帰顕(キケン)あれよ。
  汝の産土(ウブスナ)の神を招(マネ)き奉(マツ)らむ』

とて、
天(アマ)の石笛(イハフエ)の音(ネ)もさはやかに吹きたてたまへば、
忽然(コツゼン)として白衣の神姿(シンシ)、雲に乗りて降りたまひ、
三者の前に現はれ、叮重(テイチョウ)なる態度をもつて、
何事か小声に大王に詔(ノ)らせたまひ、
つぎに幽庁列座(ユウチョウレツザ)の神にむかひ厚く礼を述べ、
つぎに芙蓉仙人に対して、
氏子(ウヂコ)を御世話であつたと感謝され、
最後に自分にむかつて一巻の書を授けたまひ、
頭上より神息を吹きこみたまふや、
自分の腹部ことに臍下丹田(サイカタンデン)は、
にはかに暖か味を感じ、
身魂(ミタマ)の全部に無限無量の力を与へられたやうに覚えた。






 
にほんブログ村 




 


人気ブログランキングへ
 

ランキングに参加しています。
クリックして頂きありがとうございます!


感謝!



ペタしてね
 




【送料無料】超訳霊界物語 [ 飯塚弘明 ]
価格:1,785円(税込、送料込)