映画「ブラック・クランズマン」(2019年公開)(監督・脚本:スパイク・リー)を観て

本作は、黒人監督スパイク・リーによる、実話を基にした作品

警察内でも人種差別のあった時代、新人の黒人警官が「ブラックパンサー」と「KKK」に潜入捜査する物語だ。

実際の物語は1978年だが、映画では1972年のコロラドスプリングスが舞台と言う設定にしてある。

主演は、元アメリカン・フットボール選手と言う肩書きを持つ、俳優ジョン・デヴィッド・ワシントン

彼は、スパイク・リーの盟友、デンゼル・ワシントンの息子だ。

映画「モ・ベター・ブルース」(1990年)

映画「マルコムX」(1992年)

黒人解放運動を展開した政治組織「ブラックパンサー」と白人至上主義団体「KKK」をそれぞれの立場から描いている。

また、映画「風と共に去りぬ」(1939年)で黒人初のアカデミー助演女優賞を獲得した「ハティ・マクダニエル」の話が少し出てくる。
この映画は、名作と呼ばれているが、黒人にとっては黒人差別の映画だ。

同じく1915年の映画「國民の創生」も映し出されるが、こちらも、KKKが出てくる黒人差別の映画だ。

本作は、スパイク・リーならではの独特の演出により、黒人差別を時にユーモラスに、時にシリアスに描いた秀作だと思う。

本作は、アカデミー賞6部門(作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞、編集賞、作曲賞)ノミネートされたが、残念ながら、脚色賞のみの受賞となった。

クワメ・トゥーレ演説会場入口のシーン




ジム・クロウ法(Jim Crow Low)
1876年から1964年にかけて存在した、人種差別的内容を含む、アメリカ合衆国南部の諸州の州法の総称


映画「ブラック・クランズマン」(予告編)
 

Oh Happy Day / ‪The Edwin Hawkins Singers‬
  

ブラックパンサーの演説後、バーで流れるダンスミュージック
‪Too Late To Turn Back Now / Cornelius Brothers & Sister Rose‬

黒人の誇りを歌った、James BrownのFUNKナンバー
‪Say It Loud, I'm Black & I'm Proud / James Brown‬

We Are Gonna Be Okay ‬/ Dan Whitner

KKKのメンバーの車の中で流れる曲
Freedom Ride‬ / R.J. Phillips Band

‪Brandy‬ / Looking Glass

‪Ball Of Confusion (That's What The World Is Today)‬ / The ‪Temptations 

映画「HIT MAN」(1972年 日本未公開)

映画「Cleopatra Jones」

映画「Coffy」(1974年)主演:Pam Grier
映画「SHAFT(邦題:黒いジャガー)」


映画「Super Fly」


主人公のロンとヒロインのパトリスがデートしながら会話していた「ブラックスプロイテーション」とは、1970年代前半にアメリカで生まれた映画のジャンル。
主に郊外のアフリカ系アメリカ人をターゲットに作られた映画のことを言う。

映画「燃えよドラゴン」(1973年公開)に代表されるカンフー映画が製作されるようになってから、次第に衰退を始める。


Lucky Man‬ / Emerson, Lake & Palmer


TV「Soul Train」司会:Don Cornelius

後半で、重要なシーンがある。
KKK加入式が行われている裏では。公民権運動の象徴である、歌手ハリー・ベラフォンテ演じる黒人活動家が、地元の黒人学生組織を訪問し、実際に起きたジェシー・ワシントンのリンチをを目撃した体験を語るシーンだ。

1916年5月15日、テキサス州ウェーコで、17歳の農場労働者ワシントンが白人女性をレイプ、殺害したとして有罪判決を受けた。

判決が言い渡された後、ワシントンは群衆によって裁判所から引きずり出され、首には鎖が巻かれた。ワシントンはレンガやナイフで襲撃され、市庁舎の外にある木からつり下げられ、性器を切り取られ、繰り返し火あぶりにされ、焼き殺された。

約1万5000人がその様子を見ており、警察も止めに入らなかったと言う酷い事件を、ハリー・ベラフォンテが若い学生たちに話すシーンは必見だ。


ラストには、2017年に起きたシャーロッツビルでの暴動のドキュメンタリー映像を差し込んでいる。

南北戦争で南軍を率いた、ロバート・E・リー将軍の銅像の撤去を抗議するために各地から集まった白人至上主義者たちと、反ヘイトを掲げた人々が真っ向から衝突して緊急事態発令が出される事態に発展
白人至上主義者のジェームズ・フィールズが抗議側に車で突っ込み、活動家だったヘザー・ハイヤーさんが亡くなると言う痛ましい悲劇で幕を閉じる。

‪エンディングには、Princeの「Mary Don't You Weep」が流れ、観るものに衝撃を与えて終わる。

この作品で、スパイク・リーには、アカデミー賞監督賞を取ってもらいたかった。


‪【ENDING】
Mary Don't You Weep / Prince