「許容範囲」っていう言葉が有りますよね。これくらいの範囲内に収まってれば
大丈夫だよ~(^^)v。なんて言う、良好な範囲の広さを示したりする場合に使う
事が多いかと思います。またその逆に、これに関しては超厳しいから、メッチャ
狭い許容範囲内に収めなきゃ、OKが頂けない!ってな場合も有りますわね。
許容される幅が狭い程、シビアな管理が求められ、幅が広い程、ラフな管理
でもOKって話なんですが、我々、印刷の世界でも、この許容範囲ってヤツは、
いろんな場面で出て来ます。色調の管理なんて、まさにそのものズバリって
感じですよね。・・・前回見本と、バッチリ同じ色調にしたいんだけど、チョッと
ベタ部分の赤味が足らない。でも紅を盛ると、写真が真っ赤に成ってしまうし。
まぁこれなら許容範囲ギリギリだから、OKにしようか。なんて感じですね。
湿し水の量ってヤツにも、その許容範囲ってのが有ります。湿し水の場合は、
それを指して、「水幅」なんて呼んで、水幅が広いとか、狭いとか言う表現を
しますよね。要するに、湿し水を、汚れが出るギリギリまで絞った状態から、
その逆に、これ以上、湿し水を多くすると乳化してしまうって言う、その良好な
範囲内の幅が広ければ、水幅が広い。って言ってるわけです。
普通の油性印刷を経験して、高感度UVに替わった人には、よく分かる話だ
と思うんですが、油性に比べると、UVって、メッチャ水幅が狭いですよね。
水が少ないと、変な「散り汚れ」が出たり、その逆に水がチョッと多いだけで、
すぐに濃度ダウンしてしまったり乳化してしまったり。油性から高感度UVに
転向した人を、まず悩ませるのが、この水幅の狭さですよね。
私ね、最近よく思うんですよ。油性 ⇒ 高感度UV で、水幅の狭さに悩む。
であるならば、高感度UVの狭い水幅に慣れた人が、もう一度、油性機に
戻ったら、こりゃさぞ素晴らしい品質の印刷物を造り上げられるのではない
だろうか!って。これね、輪転機だと、もっと明確に差が出るんですよ。
輪転機ってね、版面が湿し水で、テカテカに光るほど、メチャクチャに多い
水上げをしても、何とか刷れてしまうんです。・・・ん~違うな。まともな物は
刷れてないな。何とか、紙にインキを着けてるって言うレベルだろうなぁ。
でもね、輪転は、そんなメチャクチャな事をやっても、紙にインキを着ける
事が出来てしまうんですよ。もしも枚葉機で、こんな水上げをしたら、こりゃ
まともにインキが着きません。まともな印刷物を作る事が出来ません。
ですから、ある意味、枚葉機よりも輪転機の方が、圧倒的に水幅が広い
っていう言い方が出来ます。と言う事はですよ、UV ⇒ 油性の時の様に、
枚葉 ⇒ 輪転に替わったら、水を絞る事に慣れてる枚葉オペレータなら
輪転機でも、シッカリ水を絞る事が出来て、印刷品質の圧倒的な向上が
望めるってワケなんですよ。
その逆も有りますよね。水をダバダバに上げる癖が付いてしまっている
輪転オペレータが枚葉機を使ったら、そんな水上げじゃ全く刷れないから、
必然的に水を絞る方法を覚える事が出来る。・・・これね、実際にやってる
工場さんが有ります。3ヵ月交替で、枚葉と輪転の機長をローテーション
しているんですわ。ここの輪転機の水絞りは本当にキレイです。
許容範囲とか、水幅ってのはね、狭ければ狭いほど、様々な技術力が
必要に成ります。逆に言うなら、技術力を磨くためには、広い許容範囲、
広い水幅ってやつが、邪魔に成ってしまう場合が有るんですよ。
輪転機オペレータさんでも、ウマい人は沢山居ます。でもね、7割以上の
輪転オペレータは、ド!ヘタクソです。この人達の技術向上が出来れば、
大幅な品質向上が望めるし、刷り出し損紙の削減や、インキの削減等、
輪転会社さんにとっては、即座に利益に繋がる改善が出来るんですよ。
数億円もする高価な輪転機を、インキまみれにして平気で居られる様な、
そんな古い考え方のオペレータは、もう不要なんです。技術力の向上に
意欲を示さないオペレータが生き残って行く術は、もう無いんですよ。
これからの印刷業界ってのは、そんな甘い人を雇っておく余裕は無いと
言う事をシッカリ認識しなければ、会社そのものが傾きますよね。