印刷技術 昔のワザ | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

もう、40年以上も前の話ですが、その当時、私に印刷技術を教えて下さった

古い職人さん達は、かなり、いろいろな、独自のワザを持っておられました。

そのワザは、その人が独自に開発したか、また、その師匠から受け継がれた

非常に尊いワザですので、なかなか伝授して頂けないのですが・・・(笑)。

 

今時、そんな古(いにしえ)のワザを紹介しても良いのか?ってチョッと迷う

ところではあるのですが、実際に実践するかどうかは別として、昔はこんな

事をやってたんだ~。くらいに留めておいて頂ければ幸いです。とは言え、

工夫をする!と言う意味では、少し参考に成るかな?とは思います。

 

例えば、ブランケットの凹み。・・・今は当たり前のように、エアーブランって言う、

エアー層(気泡層)の有るブランが主流ですが、昔はそんな物は無くてですねぇ、

いわゆる、ソリッドブラン(ゴム層と布層だけのブラン)が普通だったんですよ。

 

新品のブランに交換して、いざ刷り出してみたら、異物の混入かなにかで、

ブランの真ん中あたりに直径1cm くらいの凹みが出来てしまった。端っこなら

ブランを巻き込んで凹みの場所をズラすって方法で凹みの部分を印刷面から

逃がしてしまえばイイんですが、真ん中では、そうは行かない。

 

この時、私の師匠が採った第一の方策。・・・これ、ケッコウ、おもしろいです。

ブランケットメーカーに電話して、「なんだ、おまえんとこのブランはッ!新品に

交換したばっかなのに100枚も刷らん内に凹んじまったぞッ!大至急、新品の

ブランを持って来いッ!」 ・・・エエッ!新品のブランが凹んだのは、こっちに

落ち度が有ったワケで、ブランメーカーさんの責任じゃないでしょう~。

 

んでもこの時代はね、「ハイッ!申し訳有りません!すぐ持って伺いますッ!」

なんて事で話が付いてしまうんですね。あっ、もちろん、新品ブランの請求書は

キッチリ会社へ回って来ますよ(笑)。・・・今時なら「申し訳ないですが、新品の

ブランを凹ませてしまって予備が無くて困っているので、すぐに持って来て頂く

ことって可能でしょうか?」なんて感じかと思うんですが、当時の機長さん達は、

ケッコウ威張ってらっしゃる方が多かったんですよ~。

 

ん?これって、ワザの話に成ってませんね(笑)。・・・まぁそうやって、新品の

ブランを確保しておいて、ここからがワザです。ブラン胴にブランを張ったままの

状態で、凹んでしまった箇所を、油性ペンで丸を書いて囲んで目印を作ります。

その後、ブランを外して、その目印の部分の裏面に、グリスを擦り込むんです。

 

要するに、凹んだ部分のブランの裏面(布面)に、グリスを擦り込む事で凹みを

修正してしまおうってワケです。これね、ウマい人がやると見事なくらい綺麗に

凹みを修正してしまうんですよ。「本当はな、グリスに砂糖を混ぜるとイイんだ。

砂糖が熱で溶けて、凹んで低くなった所に溜まるから、丁度良く成る」とかって

話もしてましたが、それはチョッと、どうかな(笑)。

 

実はこのワザ、数年後に私も、3回ほど、やってみた事が有ります。正直ね、

ソリッドブランなら、もう少しウマく行くかもですが、エアーブランではチョッと

辛いんじゃないかな?って感じでした。私の腕が、師匠のワザの領域にまで

到達していないって事もあるのでしょうが、まぁそれ以上、極める気は無い

かな(笑)って思っています。

 

ベテランさん達は、それぞれに、なかなかスゴい裏技みたいなのを持ってる

ことが有ったりします。時間が有れば、ベテランさん達から、昔話を聞くのも、

ケッコウおもしろくて、勉強に成る部分も有りますよ。(^^)v