印刷技術 インキの硬さ | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

梅雨ですから、仕方が無いんですが、まぁ、雨がよく降りますねぇ~。

湿度が高くて、気温も高い。そんな時期に、マスクを掛けて行動する

ってのは、本当に苦しいですね。私のような、汗っかきな者にとって、

この、夏場のマスクってヤツは、まさしく、拷問に等しいのですわ~。

 

最近のマイブームとして、万年筆ってのが有るんですが、万年筆って

ヤツはね、インクの選択が、ケッコウ微妙で、おもしろいんですよ~。

寒い冬に使い出した万年筆のインク。最近はメッチャ暑くなって来た

ので、印刷インキと同じように、冬用のインクではアカンのですわ。

 

粘度が低い、シャビシャビのインクは、クソ暑い夏場に成ると、メッチャ

流れが良く成ってしまって、ドバドバとインクが出過ぎてしまい、書いた

文字が、ドボドボに太く成ってしまうんです。そこでチョッと硬めのインク

に替えてやると、これが絶好調に成るってわけなんですわ。

 

んじゃ、この硬めのインクを一年中、使えばいいじゃん。って事が出来る

んなら簡単なんですが、硬めのインキは流れ(フロー)が悪くて、冬場の

寒い時期に成ると、文字を書いてる最中に、カスレてしまって書けない

だとか、最初っから、全くインクが出て来ない。なんてハメに成ります。

 

この辺りは、印刷機のインキと、よく似てますよね~。冬用のタラタラの

インキを、今時のような暑い季節に使ったら、インキが出過ぎて、汚れが

止まりませんし、夏用のガチガチに硬いインキを、冬場に使ったら、こりゃ

紙剥けの雨嵐、ヘタすると、まともな着肉さえしてくれないですよね。

 

インキってヤツは、「熱」で大きく変化を起こしてしまう物なんですね。

ずっと昔、ある輪転機工場さんで見たんですが・・・。インキローラーや、

水ローラーの所って、安全カバーで囲われています。そのカバーは、

ただの鉄板ではなく、穴開きのネット状とまでは行かないけど、細長い

穴が無数に開けられているってのが普通ですよね。

 

私が見た輪転工場さんでは、そのローラーカバーの所に透明フィルムを

貼っておられました。しかもカバー全面ではなく、カバーを3分割したとし

たら、駆動側、操作側の両サイド、1/3 づつをカバーして、真ん中の1/3は

カバーせずに、空間が空いてる状態だったのです。

 

これは何ですか?と伺うと、ローラーの両サイドで、乳化したインキが飛び

散って、印刷本紙に着いてクレームに成ってしまった事があったので、その

対策として、やっていますとの事でした。・・・いやいや、そりゃアカンです。

 

水ローラーからインキローラーの部分まで、両サイド合計2/3 をフィルムで

塞いでしまったら、その部分だけ、熱気がこもってしまって、インキがメチャ

軟らかく成ってしまうので、汚れやすく成ってしまうんですよ。そこが汚れる

からと言って、またまた湿し水を多目にしたら、今度は乳化の雨嵐ですわ。

 

印刷トラブルってヤツは、対処療法じゃアカンのです。例えば、頭痛が酷い

からと言って、痛み止めばかり飲むってのは対処療法ですよね。これでは、

いつまで経っても、頭痛と付き合って行かなくては成りません。頭痛の根源

に成っている、本当の原因を探して、その根源を完治するのが理想ですね。

 

印刷トラブルも同じで、乳化してインキが飛び散るから、それが印刷物に

付着しないように、フィルムでカバーするってな対処療法ではなくってね、

トラブルの根源である、乳化を防ぐってのが、一番の改善方法ですよね。

乳化させない方法なんて決して難しくはないですから、さっさとフィルムを

外して、トラブルの根源である乳化対策をするのが先決ですよね。