印刷技術 知らずにやる | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

皆さん、繁忙期してますか?10~20年位前なら、この3月ってのは、

毎日、本当に大変な状態で、1日は24時間しか無いってのに、そこへ

26時間分の仕事を、どうやって詰め込もうか?? なんて事で毎日、

頭を悩ませてましたわ~(笑)。・・・エエッ?休憩時間を抜いたら1日は

22時間も無いよ~って? そんなもん、休憩時間は管理職が替わって、

印刷機を回すに決まってるじゃないですか(笑)。

 

毎日、その日の印刷をこなすだけで精一杯で、「ああ、紅のローラーが

アカンなぁ。新品と交換したいなぁ~」とか思っても、そんな暇はないから、

何とか、ダマしダマし使って行くって感じでしたね。

 

これね、「紅のローラーがアカン」って事を、分かってて、やってるって事

ですよね。まぁ理想的には、繁忙期に入る前にメンテをしておくってのが

イイんですが、それでもね、アカンって分かっててやってるのか、アカン

事を全く理解せずにやってしまってるのかには、雲泥の差が有るんです。

 

印刷ってヤツに限らず、何でもかんでも、完璧な状態で仕事をするのが

理想なんですが、世の中って、理想通りに行く!なんて事の方が少ない

ワケでして、何とか無理をしてでも、やる!って方が多い事も有ります。

 

紅のローラーがアカン。インキ壺の7番キーがウマく動いていない。

2胴目のブランケットが寿命だ。・・・こうした事を分かっててやってれば、

チョッと無理してでも、やっちゃおうッ!てな話に成るんですが、全く分か

っていなくて、「なんか調子悪いなぁ~」ってのが一番アカンのです。

 

人間ってのは、おかしなもんで、訳が分からずに突拍子も無い事が

起るとパニックに成ってしまいます。・・・例えば、夜中に、何だか妙な

音が、クワァ~ン!とか響いたら、ビックリして飛び起きるかも知れ

ませんが、「ああ、またボロ冷蔵庫が異音を出してるわ~」って、その

原因を分かってたら、パニックに成る事など有りませんわね。

 

「あれ?この部分、一生懸命に壺を絞ってるのに、ちっとも淡く成らない!

何でだ!これじゃマズいぞッ!ああ、どうしようッ!」なんて焦ってしまうと、

汚れてるのを見逃してしまったり、他の部分の色調が悪く成ってしまってる

事に気付かず、どんどん不良品を生産してしまったりと散々です。

 

これがね、「壺キー7番の動きが悪い」って分かってれば、「チッ!やっぱり

アカンか~、しゃあねぇなぁ、手動で動かしてくるか~」で済んでしまいます。

 

なんでも「完璧」がイイんですが、我々の身体でも、完璧な状態ってのは、

なかなか有るもんじゃないですよね。肩が重い。腰が痛い。全体が怠い。

人間だって、不調が色々有ります。ましてや相手は「機械」。機械ってのは、

壊れて当たり前。不調なんてのは日常茶飯事。ってのが普通なんですよ。

 

それを、壊れないように、不調に成らないように手を加えて行くのが、我々、

印刷機を使うオペレータの仕事なんですわ。繁忙期で、充分に手を加えて

やる時間が無いから、ある程度、妥協して使って行く。でも、それならそれで、

妥協した部分を、シッカリと把握しておく事、妥協したおかげで最悪の場合、

どんな事が起こってしまうのかを、シッカリと理解しておく事が大切です。

 

そして、繁忙期が過ぎて、少しでも時間が空いたら、一生懸命にメンテを

してあげて下さい。我々オペレータにとって、印刷機ってヤツは「飯の種」

です。その大切な飯の種が、ぶっ壊れて廃棄処分に成ってしまったら、

次の日から、お金を稼ぐ術が無く成ってしまいますもんね。