印刷技術 水目盛り | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

急に寒く成って来ましたねぇ~。

今週は久々に、京都の本社勤務です。先週の仙台も寒かったけど、

京都の底冷えは、毎年経験してても、やっぱりキツイですわ~(笑)。

 

こうして、急に気温が下がると、メッチャ変化が出るのが、印刷機の

湿し水の目盛り。 いわゆる「水目盛り」ってヤツなんですよね~。

 

「エエッ?変化するの?オレは、いつも、目盛り20で立ち上げてるぞ~」

なんて人がケッコウ多かったりしてしまうんですが、それね、間違いです!

夏の暑い時でも、冬の寒い時でも、いつでも20で固定ってのはアカンです。

水目盛りってヤツはね、そんな、乱暴に扱えるモノではありませんのですわ。

 

まぁねぇ、24時間、印刷機が回りっ放しで、工場内の空調がメッチャしっかり

してて、1年中、工場環境が変化しない!なんて、羨ましいような工場なら別

なんですが、普通の工場の場合、そうは行かんでしょう。扉を開ければ冷たい

外気が入り込むし、地熱が下がるので、工場の床から冷えて来ますしね。

 

んじゃ、工場内の室温が下がると、なんで水目盛りに変化が出るのか?って

話しなんですが・・・。簡単に言ってしまえば、ゴムローラが縮んでしまうから!

なんですよ。ゴムってね、温度の変化によって、伸縮しますよね。ローラーで

言うならば、その直径が変わってしまうんですわ。

 

温度が高ければゴムが膨張して、ローラーの直径が太くなり、温度が低ければ、

ゴムが縮んでローラーの直径が細く成ってしまいます。これはね、そのゴムが

軟らかければ軟らかいほど、直径の変化が大きく成ると考えて下さい。

 

多くの場合、湿し水の上げ量は、水舟に浸かったローラーと、次のローラー、

いわゆる「調量ローラー」ってヤツとの締め込み具合が一番の根本に成ります。

ここを締め込んでやれば、水が通過し難くなり、緩めてやれば沢山、通過します。

 

その、締め込み方の基本は、各印刷機メーカーで違いますよね。・・・例えば、

調量ローラー上の水膜が切れてから、90度締め込むとか、3ノッチ締め込むとか、

そんな感じで、印刷機の取説に記載されていると思います。

 

工場内の気温や、印刷機自体の冷え具合等によって、ゴムローラーの直径が

細く成ってしまうと、一番基本に成る「水膜が切れるポイント」が、変わってしまい

ますよね。本来なら、まずそこを再調整するべきなんですが、輪転機の場合だと、

なかなか、そこまでは見ていない方が多いですわね。

 

そんな繊細な状況の中で、常に20で固定してしまっていると、ローラーが細く

成ってしまった寒い朝は、完全に湿し水が多過ぎる状態に成ってしまいます。

水が多過ぎるのだから、こりゃ、インキの乗りが悪くて、印刷濃度が出ません。

「こりゃ、淡いなぁ~」とか言って、濃くするために、インキを盛ってしまう。

 

こうして作り出されてしまうのが、水も多過ぎ、インキも多過ぎって言う、最悪の

状態なんですよ。・・・寒い日の朝一番、「あれ?濃度が出ないなぁ」と思ったら、

インキを盛るんじゃなくて、まず、水目盛りを下げるとこ。一番正しくは、調量の

締め込み具合を再確認する事が、本当に大切なんですわ。

 

オフセット印刷は「物理」ではなく、「科学」です。発生した不具合に対して安易に

物理的な対応をするのではなく、「なぜ?」と一度考えて、根本的な原因を探り、

正しく、科学的に対処出来るように成れば、トラブルは全て無く成り、楽に良い

物が刷れるように成ります。沢山の知識が必要に成りますが、頑張りましょう (^^)v