印刷技術 エメラルドグリーン | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

先日テレビで「黒部の源流」とかってタイトルで、黒部渓谷にドローンを

飛ばせて撮影した風景を、見せてくれていました。渓流の水が、緑色、

メッチャ美しい、エメラルドグリーンの輝きを放っていました。

 

この「エメラルドグリーン」って言う色彩は、オフセット印刷では、再現不可能な

色ですよね。・・・いわゆる「蛍光色」ってヤツですからね、光の三原色である

RGBでなら再現出来ますが、色の三原色・CMY では再現不可能なのです。

 

最近は、デジカメで写真撮影する人が増えて来たので、RGBという言葉も、

昔に比べれば、ずい分浸透して来ていますね。・・・と言うか、我々が自分の

肉眼で、毎日、普通に見ている色彩は、RGBの世界ですし、テレビの色も、

昔からRGBで、色彩の再現をしていますよね。

 

光の三原色・RGB と、色の三原色・CMY では、再現可能な色彩の範囲が

違います。色彩の表現領域、なんて意味で「色域」って言葉を使いますが、

「CMYは、色域が狭い」なんて言い方をしますね。

 

例えばね、観光パンフの印刷で、外国の海の、エメラルドグリーンの写真なんて

のが有ったとしましょう。発注して下さる、お客さんは、写真のデータを、RGBの

モニターで見て、こりゃキレイだッ!この写真を載せよう!なんて事に成っている

のですが、これを印刷すると、「なんじゃ、この海の色はッ!」って事に成ってしま

ってクレームが発生してしまうなんて、昔、よく有りました。

 

化粧品関係も、ヤバいです。蛍光ピンクのネールの色とか、リップの色とか、

そんな鮮やかな色彩を、普通のオフセット印刷で出す事は不可能なんですよ。

クレームで刷り直しに成ったら大変ですから、何度も色校をやって、なんとか、

お客さんに、妥協して頂く。って感じですね。

 

話は変わりますが、学校の教科書が、タブレットに成ると言う話が有りますよね。

タブレットは、小さなモニターですから、これはRGB再現で、色彩を見せる事が

出来るんですよね。・・・印刷された教科書のCMYの色彩しか知らない子供達に、

RGBの美しく豊かな色彩で教育が出来るってのは、本当に素晴らし事です。

 

でもね、問題は多々有ります。例えば「これが正しいエメラルドグリーンです!」

ってのを、どうやって決定して行くかとか、例えば決定が出来たとしてもですよ、

タブレット一つ一つの再現誤差を、どうやって埋めて行くのか?なんて事も大きな

問題に成って来るのではないでしょうか。

 

まぁね、今までの教科書も、印刷物ですからね、それほど厳格に色調管理がされて

いるワケではないと思うのですが、せっかく、教科書をタブレット化するのであれば、

RGBの豊かな色彩感覚を、小さな子供の頃から、正しく学んで、今までには出来な

かったような、色彩溢れる教育をして行って欲しいと思うのです。