チョッと難しい話です。
印刷してる時に、湿し水の量を多くすると、印刷濃度が低下します。
と言うと、「ええッ!そうなの?」って人と、「そう!そう!」と言う人が
居ます。・・・この差は、どこに有るのか?
湿し水の量ってのを考える時に、どうしても切り離せないのが、インキの量
なんですわ~。インキの量と湿し水の量が、キレイなバランスで安定してると、
汚れも出ず、色ムラも出ず、トラブルも発生せずに印刷する事が出来ます。
ただね、どんな状態でバランスが保たれているのか?って事をね、チョッと
考えなくては成らないんですよ。・・・極少量のインキを、極少量の湿し水で
バランスさせて、それで印刷濃度が確保出来るってのが理想です。
極少量のインキで濃度が出せれば、余分なドットゲイン(網点の太り)は
出ません。インキ被膜が薄くて済みますから、乾燥も速く、トラッピング
(下刷りのインキ上に、上刷りのインキがキレイに乗る)ってのも良好に
成ります。
これに対して、多目のインキと、多目の湿し水でバランスさせている。ってのが、
一番アカンのですわ。湿し水ってのは、そのほとんどが、ただの水なんですが、
必ず、エッチ液ってヤツが入っています。このエッチ液ってヤツは、活性剤と言う、
いわゆる、液体洗剤が、主な成分に成っています。
台所洗剤を思い浮かべてくれればイイんですが、ほんの2~3滴、スポンジに
付けて、食器を磨いてやるだけでも、ケッコウな泡立ちを得る事が出来ますよね。
これほど、スゴイ力を持っているのが、活性剤ってヤツなんですわ。
油汚れを溶かし落とす活性剤。オフセット印刷は、油と水の反発で、インキの着く
ところと、着かないところを仕分けしています。オフセット印刷の場合、油=インキ
ですよね。活性剤は、このインキをも溶かす力を持っているんですわ。
・・・と言ってもね、肉眼で見えるような、物理的な世界での話では有りません。
紙の上に乗ったインキの厚み=適正膜厚ってのは、たったの、0.001mm です。
1,000分の1mm = 1μ(ミクロン)と言う、肉眼で確認する事が出来ないような、
極薄の 「科学」 の世界での話なのです。
多過ぎる湿し水の中には、当然、それに見合った、多目のエッチ液が存在します。
と言う事は、極少の湿し水でバランスさせている場合よりも、インキを溶かして
しまいやすいって事ですよね。溶けて濃度が低く成る(淡く成る)から、インキを
盛って対応する⇒ 汚れる⇒ 水上げる⇒ 淡く成る⇒ インキ盛る⇒ 汚れる⇒
こりゃ、地獄の無限ループの始まりですわね。
極少の湿し水と、極少のインキでバランスを取っている人は、湿し水が少し多く
成った事による濃度変化を、的確に感じ取る事が出来ます。だから両方とも、
極少でやるようにして下さい。・・・なんつってもね、自分が慣れてしまっている
バランスってのが、有りますよね。
それに、自分のインキの出し方が、多いのか少ないのかも分かり辛いですよね。
慣れてしまった事を変えるってのは、本当に大変な事だと思います。でもねぇ、
何にでも、1度は挑戦してみないと、本当に良いのか悪いのかを判別する事が
出来ませんよね。
暇な時でイイので、是非一度挑戦して欲しいのは、
① インキが無いローラーに、インキを撒く時、今までの半分の量でインキを撒く。
② その少ないインキ量の中で、汚れが少し出る所まで、水を絞ってみる。
③ この状態から、適正濃度に成るまで、インキも水も、本当に少しづつ少しづつ
上げながら、調整をして、適正な濃度の絵柄にする。
これをやってみて、湿し水の上げ量(湿し水目盛り)と、インキの上げ量目盛りを、
今までやっていた時と比べてみて下さい。少しでも、それぞれの上げ量が少なく
成ればOKですし、今までが多目だったって言う確認に成りますよね。
あんまり変わらんって場合には、ローラーニップ等のメンテをまずやってみて、
それでも変化が無い時は、エッチ液を替えてみるとか、いろいろ改善の方法が
有ります。・・・まぁ最初っから少ないバランスでやってるって人は、目盛りが、
あまり変化しないと思いますが、それも一つの確認ですよね。
今時の、高性能なインキ、高性能なエッチ液、高性能なローラー、ブラン。
それらの、本来の性能を存分に発揮させてやるためには、極少量のインキと、
極少量の湿し水をバランスさせる事が、必須条件なんですわ~。
紙が高く成ってしまったので、テスト刷りなんぞ、飛んでもないッ!
なんつって、叱られないよう、余り紙を使ってやってみて下さいな。