印刷技術 なぜ、出来ない? | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

何か新しい事をやる時、初めての事に挑戦する時。

それを実際に実行する当事者は、「そりゃ無理だ!絶対に出来ない!」と、

開口一番、否定的な、「出来ない!」 という言葉から始まる事が多いです。

 

これは、その実務に対する経験年数が長い人ほど、発する傾向が強い。

まぁ、そりゃそうですわね。経験値の低い人とか、初心者の人とかには、

それが、どれほど大変な事かって言う、想像も判断も出来ないですもんね。

 

人が、「出来ない」 という言葉を発するのには、大きく三つの理由が有るのだ

そうです。まず一つ目は、「出来ない」と断言してしまえば、それで全てオシマイ。

それ以上の事を考える必要が無いから、楽が出来る。

 

二つ目は、出来ない理由を並べるのは、とっても簡単だと言う点。例えばね、

「時間が無いから出来ない」「やった事が無いから出来ない」「人がいないから」

「機材が無いから」「場所が無いから」「資金が無いから」「資料が無いから」

「何よりも、そんな事に挑戦する気が無いから出来ない」・・・

 

出来ない理由って、いくらでも出す事ができてしまうんですわ。ですからね、

出来るか出来ないかを、多数決で決めようとすると、結果は「出来ない」に

成ってしまうんです。そう言う意味からすれば、出来るか出来ないかを議論

すると言うのは、完全に時間の無駄なんですよ。

 

出来るか出来ないかではなく、最初っから「やるッ!」と決める。そしてその、

やる方法、やれるようにする為の方法を議論する。・・・簡単な事なんです。

時間が無いと言うのなら、時間を作る方法を考えればイイだけの事。人も

機材も場所も資金も資料も、それを調達する方法を考えればイイだけです。

 

そして、一番アカンのが、出来ないと言う、三つ目の理由。「やった事が無い」

とか「挑戦する気が無い」って言ってる人達の根源に関わる部分なのですが、

人間ってのは、自分が、それまでにやって来た事に対して、多大なプライドや、

その業績に対する自負が有ります。

 

今までのやり方を変えて、新しい事をやるってのに対して、このプライドや、

自分が残して来た業績を、頭から否定されてしまうようで、ここに嫌悪感を

感じて、思いっ切り反発してしまうんですね。だから「出来ない」と言う。

 

例えば、初めて見る紙が、印刷用紙として入って来て、「この紙で印刷して」

と言うと、・・・それがファンシー系の紙だったりすると、多くのオペレータは、

まず、否定的な態度から入って来ます。「ええ~、乾きが悪そうな紙だから、

裏移りしても責任持てんよ~」 なんてね。

 

んじゃ、外注で印刷した方がイイかな?「ああ、その方がイイよ。ウチの印刷機、

もう古くてガタが来てるし、ローラーも古いから安定しないし、パウダー装置も、

なんかイマイチだしさぁ。値段が高そうな紙だから、失敗した時の損害を考えたら

外注にやらせた方が安全だよね」・・・もうね、言い訳のオンパレードですわ。

 

このオペレータ君の言ってる事、これって、自分を擁護するための、小学生並みの

ガキのような言い訳ですよね。印刷機にガタを来させてしまったのは誰?ローラー

を古いまま放置してるのは誰?パウダー装置をイマイチのままにしてるのは誰?

 

全ての機械や機器は、何もせずに放置しておくだけでも、経年劣化で悪く成って

行きます。それを手入れし、清掃し、調整して行くのが、オペレータの仕事です。

その仕事を怠ってしまった自分に、全ての責任が有るのに、それをまるで他人事

のように言う。・・・出来るか出来ないか?と言う以前に、自分で「出来ない原因」

を作ってしまっているんです。そんな人間が、プロとして給料もらってちゃアカン!

 

それが出来なきゃ、生き残れない。やれない!と言ってしまったら、生き残って行く

道が閉ざされてしまう。・・・今はね、そんな厳しい時代なんですわ~。実際の話、

出来ないと言って外注に出した印刷物、それを、その外注先の若いオペレータが

鼻歌で印刷してしまったら、もう、恥ずかしくて生きて行けませんわね。

 

プロなんですよ。プロはね、その地位を堅持するために、成長し続けなければ

成らないんですわ。必死に成ってやれば、出来ない事なんて、何も無いんですよ。

必死にやって、何度も何度も失敗すると、そこに素晴らしノウハウが残って行く。

その失敗のノウハウこそが、技術屋の一番大切な、財産なんですわ。

 

「出来ない」は言わない。出来る方法を考える。必死に成って挑戦する。

その前向きさこそが、こんな厳しい時代を生き残って行くために、今、一番、

必要なことだと、そう思っています。