我々、印刷関係者にとって、「エッチ液」と言う言葉は、ゴクゴク普通な、
業界内の専門用語なのですが、印刷とは無関係な一般の方にとっては、
非常に刺激的な言葉のようで(笑)。「エッチ液」と言うタイトルをブログに
付けると、アクセス数が、一気に跳ね上がります (^^)v 。
さて、そのエッチ液ですが、刷版の材料が、現在のアルミではなく、亜鉛
だった頃、非画線部を腐食(エッチング)させながら、印刷を進めて行く事が
必須だったため、エッチングの、エッチを取って、エッチ液と呼ばれるように
成り、現在は何も腐食させていないけど、名前だけが残っています。
昔はね、エッチ液と言えば、刷版の非画線部(インキが乗らない所)を守る!
ってのが、その役目だったんですよ。それが、連続給水システムの開発で、
・・・このシステム、最初の頃はアルコールが大量に必要だったのです。
この大量なアルコール添加を、何とか減らしたい、またはゼロにしたいとの
思いから、「ノンアルコール用エッチ液」なる物が登場して、様々な機能が
エッチ液に求められるように成って来ました。
例えばね、調量ローラー(湿し水系のゴムローラー、着けローラーではない)に
インキが絡んでしまってさぁ~、その手入れが大変なんだけど、エッチ液の力で
何とか成らない?って言われると、「了解!何とかしましょう!」なんつって、
エッチ液メーカーさんが頑張って開発してしまうってな具合です。
もともとは、非画線部の保護だけしてりゃ良かったのに、エッチ液メーカーの
化学者さん達が、いろんな機能を、エッチ液に付けてくれたんです。これはね、
本当に画期的な事なんですよ。例えばインキローラーのグレージングを軽減
してくれちゃうエッチ液とかね。
調量ローラーのインキ絡みを防ぐってだけでも、ケッコウ凄いなぁと思ってる
のに、インキローラーのグレージングまで軽減させちゃうって、こりゃ本当に
メチャメチャ凄い機能だと思います。その他にも、湿し水多目の人用エッチ液
とか、シビアに湿し水を切れる人用エッチ液とか、いろいろ有るみたいです。
でもね、こうして多様化して来てしまうと、我々、使う側は、その選択が本当に
難しく成ってしまいますね。迷いに迷って、何が一番イイのか分からなく成って
しまいます。そこで、そんな時は是非、エッチ液メーカーさんに相談して下さい。
今時のエッチ液メーカーさんは「技術サービス」的な部門を持っていますから、
その人達に相談すれば、自分の印刷にマッチするエッチ液を勧めてくれます。
技術サービスさん達は、かなり膨大なデータを持っていますから、そうした
事例に基づいて、的確な回答をくれる事と思います。
ただし。いいですか、ここからが重要ですよ。・・・優秀な技術サービスの中にも、
レベルの低い者が居ます。「このエッチ液は2%で使うのですが、御社の印刷機は
2%では汚れが取れないので、チョッと増量しましょう。」とか言って、その添加量を
どんどん増量して行って、「あっ、5%添加で汚れが取れましたから、この印刷機は
5%の添加で、お使い下さい」 なんて指導するヤツ、これは完璧に詐欺です。
2%で使うように設計した物なのに、なんで、その倍以上もの量を入れちゃうの!
今一度、オフセット印刷の基本に立ち返って下さい。汚れが出るのは、エッチ液が
少ないせいだけですか?違いますよねぇ。インキが必要以上に多過ぎれば、汚れ
を取る事は出来ません。ローラーニップが悪くても同じです。
そうした、根本的な改善を、そっちのけにして、エッチ液の増量を勧める。こりゃね、
飛んでも無い事です。2%を5%にすれば、エッチ液が倍以上、売れますわねぇ。
倍以上売れれば、メーカーは儲かります。これを、詐欺と言わずして何と言うのか!
他の印刷会社が、2%で使ってるのなら、オレはメンテを完璧にして、1.5%か、
1%でやってやっるぜッ!ってくらいの意気込みを持って欲しいと思っています。
高性能で強力な、今時のエッチ液を、大量に入れるってのは、決して良い事では
有りません。技術ってのは、いつの時代にも、常に「基本」が、基本なのです。