「アンカット製本」って、あまり聞き慣れない言葉ですよね。
普通の印刷屋さんが本を作る場合は、「三方断裁」と言って、
本の小口(背の反対側・開く所)と、天と地(上側と下側)を断裁して仕上げます。
断裁した箇所は、当然のように、真っ平で、とってもキレイに仕上がりますわね。
これに対して、「アンカット製本」は、小口も、天も地も、一切、断裁をしません。
・・・あれ?製本する時って、16ページ折とか、8ページ折とかして、それらを
組み合わせて、本にしますよね~。小口とかを断裁しないって事は、小口等に
袋が残ってしまって、ページを開く事が出来ませんよねぇ~。
いわゆる、アダルト系の「袋綴じ」みたいに成ってしまってるってワケですわ~。
・・・その昔、書籍ってのは、非常に高価な物で、袋綴じの部分をペーパーナイフで
切り開きながら読んだのだそうです。まぁ、これこそが、新品の本である証しであり、
読み終えた後に、上製本等のハードカバーを付けて装丁し、保管したのだとか。
その名残りが有るのが、日本の文庫本です。完全なアンカットと言うわけには、
行きませんので、小口と、地だけを断裁して仕上げ、天だけは、アンカットのまま。
と言う「天アンカット」が、今でも、普通に書店に並んでいる文庫本なんですわ~。
こんな感じです。「高級感が有り、オシャレで、カッコイイ!」と言う理由で、今でも、
文庫本に採用されている製本の方法なのですが、これ、カッコイイですか~???
高級感が有る~??? オシャレ~???(私は、そうは思わないけどなぁ~)
んでもね、こうやってアンカットで仕上げる方が、製本としては難易度が高いんです。
ぶっちゃけた話、どうせ三方断裁してしまうんなら、折りなんて、適当でイイじゃない
ですか~。(一生懸命、製本の折をしてる人達には、ゴメンナサイ!)
ところが、最初っから天を断裁しない!と成れば、こりゃ超大変です。面付位置を
しっかりシビアに出して、刷り位置にも、相当の精度が必要に成る。しかしながら、
そこまでシッカリやっても、紙は伸びたり縮んだりしてしまうので、どうしても綺麗に
揃うことは有りませんわね。
どうなんでしょうかねぇ、このガタガタ具合。アンカット製本と言う伝統を知らなければ、
こんなもの、クレームで返品したいくらいの雑さ!としか、私には思えないんですよね。
「手造りのような、暖かい風合い」とでも、言いたいのかなぁ~?んでもね、今、普通に
売られている、「伝統工芸品」とか、見てごらん。とても緻密な造りに成っていますよ。
テレビが、白黒のブラウン管から、4K、8K なんて言う、超美しいデジタル画面に進化
している時代です。画像のゲームも、初期のブロック崩しのような、滲んだ単純な画像
から始まったのに、今時は、3D の、超リアルで美しい画像に成っています。
文庫本と言う、私達には、とても身近な物が、古い伝統のみにコダわって、その進化を
止めてしまっていても良いのでしょうか?三方断裁で、コストダウンが出来るのならば、
少しでも安価に本を提供する方が良いのでは?もともと、本ってのは、その中身で勝負
する物であり、古い伝統的な製本で勝負する必要は無いと思うのですよ。と言うより、
この、ガタガタの天面は見苦しい!と、そう感じる人達が増えていると思うのです。
一番の伝統である、本物の「アンカット製本」が無く成り、「天アンカット」へと進化しました。
「紙離れ」と言う言葉が示すように、ネットやデジタルのおかげで、紙の需要が、激減して
しまっている時代です。「だからこそ、アンカットで!」と言う考え方も有るのかも知れません。
でもね、それが本当に、次世代の若者達に支持されるのかどうか、真剣に考えなければ
ならない時に来ているのだと思います。