印刷技術 水上げの基本 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

最近は、輪転工場に行く機会が多いのですが、輪転の人達の、湿し水の上げ方は、

こりゃ、ケッコウ凄いんですわ~。もちろん、全ての輪転オペレータが凄いワケでは

無いんですが、大半の人達は、完全に、水の上げ過ぎです。

 

 

分かりますか?印刷中の版面に、湿し水が浮いてしまっていて、向こう側に有る

蛍光灯が、版の表面の湿し水に反射して、テカテカと光っていますよね。こりゃ、

完全に水が多過ぎ。枚葉機では、考えられないくらい、非常識な状態なんですが、

こんな状態で、印刷してしまっているんですねぇ~。

 

 

チョッと角度を変えて、写真を撮ってみると、蛍光灯の映像を、ハッキリと見る事が

出来ますね。私が知る限りでは、7割以上の輪転屋さんが、こんな感じですわ~。

 

「輪転は枚葉とは違うから、水を絞ったら、パイリング(ブラン残り)が発生するから、

水を多目に上げなきゃダメだッ!」と豪語するのが、多くの輪転オペレータさんです。

・・・んな訳きゃ無いだろッ!何十年前の 「迷信」 を語り継いでるんだよッ!

 

多過ぎる水で、インキのタックを無理矢理、落として、グチャグチャの状態で転移

させてるってのが分からんかなぁ。乳化しまくって、変質しちまったインキが、ほら、

ローラーカバーやステップに飛び散ってるわ~。湿し水のタンクを覗いてみぃや、

乳化したインキが、プカプカ浮いてるやろう。

 

 

これも輪転機なんだけど、ほら、見てみぃ、印刷中の版面が、マット調に成って、

余分な水が無い事が分かるやろう。これが、正しい「水上げ」 ちゅうもんやわ。

 

 

輪転だろうが、枚葉だろうが、同じ版を使って、同じように、水と油の反発で印刷を

してるんだから、基本は同じ。「水はシッカリ絞れッ!」 なんだよ。輪転ってのはさぁ、

絵柄の重い印刷物を大量に刷る事が多いから、インキ代がメチャ掛かってしまうね。

そこへ、水をガバガバ上げて、濃度が出ないからと、また、インキをドバドバ盛る。

 

多過ぎる水と、多過ぎるインキは、乳化するしか手が無いんだよ。乳化して飛散って

しまうから、またまたインキの消費量が増えてしまう。こりゃ完全な悪循環だわなぁ~。

パイリング(ブラン残り)だってそうだ、多過ぎるインキが、まともに転移しきれないから、

ブランに残ってしまうんだよ。水をキッチリ絞って、インキの性能を損なわなければ、

薄いインキ被膜でも、シッカリと濃度を出す事が出来る。これが印刷の基本だ。

この基本をシッカリ守れば、今時のインキでパイリングなんぞ発生しないよ。

 

輪転は水を上げなきゃいけない!なんて言う古い「迷信」を、いつまでも信じるな!

それは間違っている!そんな基本中の基本の事くらい、いい加減、理解しろ!

 

もうすでに、水を絞れるように成っている輪転技術者が増えています。その人達の

印刷品質は本当に素晴らしい。そして、インキ使用量にも、大きな差が出ています。

早急な意識改革が必要なのです。何度でも言います、「輪転は水を上げなきゃダメ」

って言うのは、間違った「迷信」です。それを「技術」とは、決して呼びません。

「水を絞る」と言う、基本を踏破する事こそが、本当の 「印刷技術」 です。