印刷Q&A 印刷機のオイル交換 | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

 

今年も、年末が近付き、年末の整備を行う時期を迎えます。

当社では、この時に、印刷機のオイル交換をするのですが、

これって、やっぱり、必要不可欠な整備なのでしょうか?

交換時にオイルを見ても、自動車オイルの様な汚れは無い

ので、まだ使えると思ってしまうのですが。

 

●回答

 

そうですね。印刷機のユニット内で、いわゆる 「オイルシャワー」として、ギヤや軸受け等

に対し、上から降り注ぐように、循環供給されているってのが、印刷機では最も一般的な

潤滑の方式ですよね。最近は、循環をさせずに、垂れ流し方式の物も有りますが、多くの

多色印刷機は、この、オイルシャワー方式で、オイルを循環供給させていますね。

 

おっしゃる通り、自動車だと、黒ずんだ様な色に変色してしまいますが、印刷機の場合は、

それほど色も変化せず、「まだ使えるんじゃない?」って感じがしてしまいますよね。これは、

「熱」の差だと言われています。自動車だと、エンジン内で爆発を繰り返し、オイル自体が

スゴく高い温度に成ってしまうので、熱による劣化が激しいですから、黒く成ってしまいます。

 

印刷機の場合は、温度が高く成っても、50℃を越えるような事は無いでしょうから、この

熱による劣化が無いため、オイルが黒く成ってしまうと言う事は、まず有りませんわね。

であるならば、定期的なオイル交換は不要か?って言うと、こりゃやっぱりアカンのです。

 

これから解説する事は、もう30年程前に聞いた話ですから、あれから状況が変わって

しまっているかも知れませんので、「成田さん、そりゃ古いよ~」って言う箇所が有りましたら、

遠慮なく、コメントを書き込んで、ご指摘のほどを、お願い致します~。

 

印刷機内部のオイルシャワーのオイルの場合、確かに、熱による劣化は、まず大丈夫なの

ですが、車のエンジンのような気密性が無いため、様々な物が混入してしまう可能性が有り

ます。こうした、いわゆる、ゴミに関しては、フィルターを付けて除去してやれば良いのですが、

一番、問題に成るのが、「水分」なのだそうです。

 

まずは、結露による、水分の混入。そして、オイルシャワーの場合は、激しく、空気に接触

する事に成りますが、この空気ってヤツには、当然のように湿気(水分)が含まれているって

ワケで、この空気中の水分が、オイル内に混入し、オイルの性能を低下させるのです。

 

例えば、印刷機のフレームのカバーを開けて(停止中に)、でっかいギヤ等、オイルが供給

されてる部分を、見てやって下さい。オイルが流れている箇所に、「黒ずんだ汚れ」が垂れる

ように流れている部分は有りませんか?それを、「汚れの涙」と言うのだそうです。

 

この汚れの涙は、オイル内に入り混んだ水分が、機械パーツを酸化させて、出て来るのだ

そうです。ですから、循環しているオイルその物が、それほど汚れていなくても、汚れの涙が

発生してしまっているようでは、こりゃ、オイルの役目を充分に果たしていないって事に成り、

必然的に、定期的なオイル交換が必要に成ると言う事なのです。

 

ですが。この、オイルの中の水分を除去する事が出来るフィルターが有れば、こりゃ本当に

印刷機のオイル交換なんて、不必要に成りますわね。「そんな便利な物が有るのかい?」

って言いたい方もおられるかと思いますが、それがね、有るんですよ。

 

私が、昔、使っていた、小森さんのリスロン(菊半4色)には、最初から、このフィルターを

付けてもらいました。フィルターの寿命が1年でしたので、毎年年末にフィルターだけは、

交換していましたが、オイル交換は1回もせず、もちろん、汚れの涙も、全く出る事も無く、

結局、7年間、小森さんの修理を、1度も呼ぶ事無く、快調に稼働させていました。

(7年目で、転職したので、後の事は分かりません~)

 

印刷機のオイルってね、人間の身体で言うなら、血液とか、リンパ液みたいな物だと思うん

ですわ。リンパ液が滞おれば、人は病気に掛かり易く成ります。また、血液に障害が発生

すれば、命に係わる大問題が起こってしまいますよね。

 

印刷機も同じで、オイルが劣化すれば、印刷機の寿命を大きく縮める事と成ります。また、

オイルの供給状態に問題が発生すれば、印刷機のパーツは、すぐに加熱し、最悪な場合、

焼け付きを起こして、印刷機を、破損、停止させてしまいます。とっても重要な役割を持った

オイルですから、定期交換などのメンテは、確実に行ってやって下さい。

 

尚、今回の回答は、30年程前に、「新日本油研株式会社様(東京都)」から教わった知識を

元に書かせて頂きました。(30年も前に教わった事、まだ覚えてるわ~(笑))