印刷Q&A 湿し水の交換時期 | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

 

当社では、湿し水の交換を、月1回と定められています。湿し水が「廃液」と

言う位置付けになるため、廃液処理業者に依頼して処分してもらわないと

いけないので、料金が掛かり、早目に交換する事が出来ません。

濾過器なども使っていないので、1ヶ月使うと、かなりの汚れが発生しています。

こうした汚れは決して良くないと思うのですが、何が、どう悪くなるのか?また、

濾過器を付けたら効果が、どれほど有るのか等を教えて下さい。

 

●回答

 

そうですよねぇ~、昔は下水に流す事が出来たのですが、今は処理業者に有料で

回収してもらわなければ成らないってのが標準に成りつつありますね。そう成ると、

なかなか気軽に、水交換する事が出来なく成ってしまいますわねぇ~。

 

私の講義ネタなんですが、オフセット印刷には、「三大不安定要因」ってのが有ります。

それが、「インキ」、「紙」、「湿し水」なんですわ~。それぞれに関して、不安定にさせて

しまう「要因」を考えてみましょうね。・・・まずは、インキ。

 

インキは、「温度変化」に、メチャ弱いですよね。同じインキなのに、夏はタラタラに流れて

しまい、冬には、ヘラが刺さらないほど、カチカチに硬く成ってしまいます。この温度変化が、

季節的な変動だけじゃなく、例えば、朝、昼、晩とか、ロングランの時の印刷スピード等で

発生してしまうので、我々オペレータは苦労してしまいますよね。

 

そして、「紙」。コイツは、「湿度」でメチャメチャ変化しちゃいますね。湿気が有れば伸びるし、

乾燥してれば縮んでしまうし、紙の波打ちや、静電気なども、湿度の変化によって発生して

しまいますから、紙の管理ってヤツは、本当に大変です。

 

さて、んじゃ、「湿し水」を不安定にさせてしまう要因って、何でしょうか?

これね、「混ざり物」・・・難しい言葉で言うと、「夾雑物」ってヤツなんですわ~。例えばね、

ごく普通に印刷してるだけでも、紙粉だとか、インキが溶けたヤツだとか、いろんな物が

溶け込んで来て、湿し水を汚してしまいますわね。

 

特に、強い溶剤系・・・ 例えば、プレートクリーナーだとか、洗い油だとかが、湿し水の中に

入って来てしまうと、こりゃアカンですわね。・・・ええッ?なんでアカンのか?って。

 

湿し水ってね、印刷中の刷版に供給して、インキの着く部分と、インキの着かない部分の

仕分けをしているってのが、一番大切な仕事ですわね。しかもですよ、例えばですねぇ、

細かな網点の、本当に小さな小さな隙間の中で、その仕事をしなけりゃならんのですわ。

 

しかもです、版面上のインキの厚み(膜厚)って、ほんの数ミクロンなんて言う超繊細な世界

なんですわ。・・・チョッと考えてみて下さい。インキ壺を洗浄する時、ウエスに洗い油を付けて

インキを溶かすように洗って行きますよねぇ。あの時の、インキ壺の中の、インキの厚みって

(ヘラで取った後ですよ)、ケッコウ厚いと思いません?そんな、分厚いインキをも、溶かして

しまうのが、洗い油なんですわ。

 

こんな強烈なモノが湿し水の中に入ってしまったら、ミクロの世界でのインキなんて、完全に

ノックアウトされてしまいます。だからね、プレートクリーナーを使ったら、必ず、乾拭きまたは、

水拭きする!なんてのは、当然ですね。輪転の人達みたいに、水の調量ローラーを洗い油で

清掃するなんてのは、こりゃ、アカンに決まってますわ~。

 

そうした強烈な物を防いだとしても、やはり、紙粉だとか、紙に塗布されている成分だとかは、

どうしても湿し水の中に溶け込んで来てしまいます。その溶け込んだ物が、湿し水を劣化させ

印刷品質を落とし、さまざまな印刷障害を発生させてしまうんですよ。

 

濾過器を付けるとね、上手に使えば、半年(6ヵ月)経過しても、まるで新品の水道水のように、

澄んだ湿し水をキープする事が出来ます。濾過用のフィルターが消耗品に成ってしまいますが、

これから先は、廃液処理代が高騰して行く可能性が有りますから、濾過器の導入に関しては、

印刷品質を保持するためにも、必須アイテムだと考えた方が良いかと思います。

 

尚、その際には、当社「コスモテック」の「スーパー・ピュアネスクリーン」をヨロシク~(^^)v

https://www.cosmotech-jp.com/printing/dampening/dampening-filtration/

・・・たまには、ウチの製品を宣伝させて下さいませ~(笑)。