印刷Q&A 印刷機清掃 | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

 

私も、印刷現場の管理をしておりますので、昨日の成田さんのブログは、

身の引き締まる思いで、読ませて頂きました。そこで、改めて質問ですが、

一口に「印刷機の清掃」と言っても、程度の問題が有るかと思います。

成田さんが、様々な工場をご覧に成っていて、一番、目に付く汚さとは、

どのような点でしょうか。参考までに伺わせて下さい。

 

●回答

 

そうですよね。清掃、掃除なんてのは、程度の問題が有りますよね。

あくまでも私の基準なのですが、まず、工場の床にゴミが落ちていたら、完全に失格です。

ゴミなんてのは、気が付いたら拾って捨てれば済みますよね。そんな行為、数秒で完結

してしまえる事だと思いませんか?

 

その数秒の行動が出来ない理由って何も無いと思うんですわ。それでも、床にゴミが

落ちている工場が有る。これってね、ゴミが落ちてても気に成らない人達の集団が、

その印刷現場で働いているって事なんですわ。・・・意識改革が必要です!

 

印刷物ってね、版傷が付いているのに、気付かずに刷ってしまったとか、ゴミが乗ってる

のに、そのまま刷ってしまったとかしたら、クレームが発生したり、値引きに成ったり、

刷り直しに成ってしまったりする事が有りますよね。印刷オペレータの仕事ってのはね、

そうした、版傷やゴミを目ざとく見付けて、確実に排除するってのが大切なんです。

床にゴミが落ちてても平気な人間、知らん顔して放置出来るような人間に、そんな

細やかな気遣いが出来るとは、とても思えないんですわ。

 

そうした、気遣いが出来ない人達が使っている印刷機は、こりゃやっぱり汚いです。

基準はね、新台の時の綺麗さですわ。納入されたばかりの、新品の印刷機は、

全く汚れてませんよね。その綺麗さを、どこまで維持する事が出来るかの勝負です。

 

私は、印刷機のボディを、自動車用の、半練りワックスを使って、毎日、磨いてました。

毎日やってると、それほど時間を掛けなくても、磨く事が出来るもんなんですわ~。

あと、ステップも、毎日、乾拭きしてピカピカにしてから、帰宅していました。

 

これだけでも、「エエッ~、そこまでするの~」って思う方も、おられる事と思いますが、

世の中には、上には上が居ます。私が見た静岡県の印刷会社さんでは、5S活動を

徹底されていて、「掃除し辛い箇所を改善する」と言う姿勢が完璧に浸透していました。

 

例えば、印刷機のブロアーポンプ。この周りって、熱風と埃で、ケッコウ汚れます。

かと言って、ポンプは重いですから、その下を掃除するなんてのは、こりゃ大変です。

「掃除し辛い箇所を改善する」・・・この印刷現場では、ポンプ一つ一つに、鉄骨で

作ったゲタを履かせて、ポンプを床から浮かせた状態にしてあり、いつでも簡単に

ポンプの下を掃除出来るように成っていました。

 

さすがに私は、そこまでの事は出来ませんでしたが、ポンプや、そのホース類に付いた

ホコリ等は、ウエスで乾拭きして、キレイにしてました。

・・・チョッと発想を変えてみて下さい。

 

例えばですよ、5年の長期ローンを組んで、やっとの思いで購入した、お気に入りの新車。

コイツが、たった1ヵ月で、ドロドロのゴテゴテに汚れてしまったら、悲しくないですか?

印刷機械ってね、数千万円~数億円もする物なんですよ。経営者さんは、必死の思いで

スゴイ借金をして購入されてるワケですわ。

 

その、超高価な印刷機械が、たった1ヶ月で、インキや油でコテコテに汚れてしまった姿を

経営者さんが見たら、こりゃ悲しく成ってしまいますよね。我々、オペレータってのはね、

そうした貴重な会社の財産を、責任を持って、預からせて頂いているんですよ。

 

もう古い印刷機だから~ とか、メチャ汚れてしまってるから今更~ なんて思わずに、

一度、シッカリ磨いてやって下さい。放置すればするほど、汚れは増すだけなんです。

まずは、印刷機のボディとステップから。そこが綺麗になると、もっともっと綺麗にしたい

と言う意欲が湧いて来るものなんですわ。