印刷Q&A 耐光インキの保証期間 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

 

ポスターの印刷が有り、屋外貼りのため、紅と黄に耐光インキを使う事と

成りました。その際、顧客から「耐光性に関して、どれくらいの期間、保証が

有りますか?」と聞かれたので、インキメーカーに問い合わせてみたところ、

「保証期間の設定はありません」との回答でした。ちょっと納得が行かない

回答でしたので、この点に関して解説を頂けると助かります。

 

●回答

 

屋外貼りのポスターの場合、紅と黄が、日光等によって退色してしまうと、場合によっては、

賠償問題にまで発展してしまう事が有ります。例えば、新製品の紹介ポスター等の場合で、

 

 

  先着100名様 無料!

 

なんて言うタイトルが有ったとするじゃないですか。

「先着100名様」って言う赤文字の部分は、紅100%+黄100%ですから、こりゃ、耐光性が

悪くて、直射日光に長く当たっていると、退色して、無くなってしまします。そう成ると青文字の

「無料」って所だけが残ってしまうんですね。

 

「無料」って文字だけを見て来店して来たお客さんは、「なんだッ!ポスターに偽り有りかッ!

無料って書いて有ったから、遠くから来たのに、最低でも交通費くらいは払ってくれッ!」

なんて事にも成り兼ねないワケです。

 

こうした、社会的な賠償問題にまで発展してしまうような事柄に対して、インキメーカーが、

明確な保証期間を設定する事は、こりゃ非常に難しいですよねぇ。特に耐光性ってヤツは、

そのポスター等が使われる状況によって、大きく違ってしまうんですよ。

 

例えば、真夏の炎天下、モロに南向きに貼られたポスターなんて、こりゃ、退色してくれ~ッ

って叫んでるような状態ですわ。同じ屋外でも、北向きに貼られた物とは、大きな差が出て

しまいますよね。こうした点からも、保証は難しいですよね。

 

そして、もう一つ。実はね、印刷するオペレータの技量で、耐光能力にスゴく大きな差が

出てしまうんです。耐光インキってヤツは、薄盛りよりは、厚盛りの方が耐光性が良好に

成ります。んでも、ただでさえ、印刷し辛い耐光インキですから、簡単に汚れが出ます。

汚れたから、湿し水を多くする。とか、安易な対応をしていると、簡単に乳化してしまいます。

こうなると、もう、耐光性がどうとか言う問題じゃないですわね。

 

それとね、着肉性の良し悪しでも、耐光能力に大きな差が出るんですよ。ベタが、キレイな

ベタに成ってなくて、ガサガサのベタだったら、こんなもん、耐光性もへったくれも有りません

わね。網点も同じ。素抜けた網点ではアカンのですよ。

 

インキメーカーさんが、お客さんであるオペレータの悪口を言うワケには行きませんから、

口が裂けても言わないだろうと思いますが、耐光インキの保証期間を設定出来ない

一番大きな理由は、オペレータの技量に差が有り過ぎるから。なのだと私は考えています。

 

もし、何らかの形で、保証期間を設定しなくては成らないのなら、自分で印刷したポスターを、

自分の会社内の、いろんな所に貼って、退色の度合を確認し、その上で安全圏を考慮して

設定されるのがベストだと思いますよ。