印刷Q&A 印刷濃度 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

 

印刷の標準濃度に関する質問です。

先日、成田さんの記事で、80%の平網を、濃度1.70の高濃度で刷る。

と言うのが有りましたが、当社では、藍の標準濃度を、常に 1.70で

刷っています。これって、当社の設定が異常なのでしょうか?

ちなみに、当社の基準濃度は、墨=1.90 藍1.70 紅=1.45 黄=1.35

で、場合によっては、墨を 2.0 以上まで盛る事が有ります。

 

●回答

 

ん~、普通に考えれば異常ですよねぇ~。何か意図が有って、そう決めてらっしゃる

のでしょうが、この、藍=1.70 ってのは、かなり異常に感じます。ここまで盛る意味が

何なのか?チョッと教えて欲しいですわ~。

 

私は、化粧品関係の印刷物を多く刷ってました。毎日、女性の顔ばかり刷っていた

ってワケなので、藍が濃いのは、完全にアウトなんですわ~。髪の毛の色調も、

微妙な茶色の色彩を再現しなきゃいけないので、藍が濃いってのは絶対厳禁でした。

 

まぁ、私にとっては、超異質な濃度管理ですが、色調に関してはねぇ、製版で調整を

するって言う手も、アリはアリだと思うので、これはチョッと、目をつぶるとして・・・。

問題は、インキの膜厚ですわね。

 

何度も解説しているように、インキの膜厚ってのは、1ミクロンとされています。

あるインキの膜厚と濃度を計測したら、1ミクロンの膜厚で、その時の濃度が

墨=1.80 藍=1.50 紅=1.40 黄=1.30 だったそうです。

 

これから見ると、藍=1.70 ってのは、標準膜厚の1ミクロンを越えてしまっている

って事ですよね。こうなると、まず、乾燥不良、裏移り、藍→紅のトラッピング不良や

擦れの問題等々、紙面上では様々な問題が出て来ますが、それよりも問題なのが・・・

 

ローラー上や、刷版上での、インキと湿し水のバランスの問題なのですわ~。

「多過ぎるインキと、多過ぎる湿し水はアカン!」と、毎度、言っているように、

標準膜厚を越えてしまったインキ量は、当然のように、汚れやすく成ります。

それを汚さないために、必然的に湿し水も多く成ってしまう。

 

こんな状態を作ってしまたら、決して、良い印刷物とは言い難いですよね。

 

藍=1.70 が、御社の特長を活かしているとか、これでメシを食っている!とか、

何か特別に、大切な理由が有れば、それはそれでイイかも知れないですが、

「基本的には間違っている」って事だけは、決して忘れないようにして下さい。

 

あと、もし「昔から、1.70で刷っているから。」とか言うような、根拠の無い理由で

そうされているのなら、今一度、シッカリ考え直してみる必要が有るかと思います。

技術はね、常に「基本が基本!」なんですわ~。