印刷Q&A 印刷立会い | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問
 
いつも楽しく読ませて頂いております。印刷会社で営業をしています。
毎年、年明けのこの時期に成ると、春の新製品のカタログ製作など、
色調の難しい印刷物が多くなり、お客さんの印刷立会いが続いて
しまいます。お客さんからのOKが出ないと印刷が開始出来ないため
生産効率がガタ落ちと成り、製本等、後工程の納期も危なく成って来て
しまいますので、営業としては、立ち合いを回避したいのですが、
なかなか、そうも行きません。立ち合いをスムーズに終わらせる方法
と言うのは、何かないものでしょうか。
 
●回答
 
そうですよね、立ち合いの印刷ってのは、メチャクチャ、時間を取られてしまう事が
有りますから、ページ数の多い冊子カタログなんかだと本当に大変だったりします
よね~。「いい加減OKしてくれや~ッ!」って、喉元まで言葉が出て来ますね。
 
一番の問題はね、「お客さんが印刷を理解してない」って事なんですわ~。
RGBで再現された蛍光色のような、美しいエメラルドグリーンみたいな色が有ると
しましょう。こっちは、CMYKの4色しか無いワケですから、そんな色が出るワケが
無いですわねぇ~。所詮「印刷」ですから、当然のように限界が有りますわ。
 
その限界が分かっていないから、何度も試し刷りを繰り返して、時間を取られて
しまうんですね。・・・でもね、お客さんが「印刷」を分かっていないように、刷る側も、
お客さんの「商品」を分かっていないから、アカンのですよ。
 
お客さんの商品を分かっていないから、お客さんが要望する色調を正確に把握
する事が出来ない。・・・お互いに、お互いの事が分かっていなくて、そんな状態で
会話なんて、成り立つワケがないですよね。韓国語とドイツ語で話をしてるような、
そんな状態で、かろうじて、ジェスチャーだけで意思の疎通を図ってる・・・なんてね。
 
これが、上手く行っていない立会い印刷の実態ですわ~。それじゃ、こうした事を
回避するために、どうしたら良いのか?・・・お客さんに、印刷の限界を知って頂く?
 
それは、最悪の回答ですね。
 
相手は「お客さん」ですからね。印刷会社の収入源は、お客さんが支払って下さる
料金です。そのお客さんに嫌われ、他の印刷会社に乗り換えられてしまったら、
収入源が減りますよね。そう成れば、今時の厳しさなら、簡単に倒産ですわ。
 
ここで重要に成るのが、今回の質問者さんのような、「営業さん」のチカラなんですよ。
お客さんの商品を徹底的に知り尽くし、お客さんがドイツ語でしゃべるんなら、自分も、
ペラペラでしゃべれるようにする。・・・そこまでやれたら、そのお客さんは、あなたを頼り
にして来ますし、あなたから離れられないように成りますよね。
 
お客さんにとって、エメラルドグリーンが非常に大切な色であるならば、それを再現する
ために、例えば広演色インキを提案するとか、FMスクリーン、超高精細、特色の追加
など、事前に提案出来得る事は、いくらでも有りますよね。
 
今は、濃度計が付いた印刷機が、普通に使われてますから、本機校正なんてのも、
簡単に作る事が出来ます。その、本機校正を持参して、「この商品は、もう少し明るい
緑色の方が良いと思いますので、修正して来ます。ここも、質感が商品イメージに
合わないので、赤味を抑えます。このロゴカラーは、ベストだと思いますが・・・。」
 
なんて具合に、お客さんが指摘したい事を、全て先回りして言ってしまえるくらいの
商品知識が備わっていたら、「分かった、全て君に任せるよ。」って話に成りますよね。
お客さんもね、忙しいんですよ。出来れば立会い印刷なんて、時間の掛かる事は
したくないんです。
 
しかしね、カタログの出来栄え次第で、商品の売り上げが大きく変わって来てしまう
と成れば、立ち会って確認しなくちゃ、どうしようもないんですわ。でも、もしそこに、
お客さんの商品の事を知り尽くした印刷会社の営業マンがいたら、そりゃ楽ですわ。
 
「営業さんのチカラ」ってね、絶大だと思うんですわ。そのチカラが存分に発揮され
れば、立会い印刷なんて無く成ってしまうのではないでしょうか。無く成らないまでも、
かなり楽な立会いに出来ると思います。是非、頑張ってみて下さい。