印刷Q&A 湿し水の量 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

4色機のオペレータです。湿し水の量に関する質問なんですが、
昔、先輩から「ベタは水を絞れ。文字物は水を上げろ」と教わりました。
ベタの場合は、ほとんどがインキの乗る部分なので、湿し水は少しで良いが、
文字物は、ほとんど、水の乗る部分なので、湿し水が多目に必要だと言うの
ですが、この理屈って合っているのでしょうか。最近、疑問に思っています。

●回答

ほほ~、なるほどですねぇ~。物理的に考えると、そう言う事に成りますねぇ。
ベタは水が乗る部分が少なくて、文字物は水が乗る部分が多いから、文字物の
方が、湿し水を多く出さなきゃいけないってワケですね。なるほどですねぇ~。

先に結論から言ってしまいましょうね。「この理屈は、完璧に間違っています!」
なんだかねぇ、理論的には合ってるような気がするかも知れませんが、これは、
絶対にやっちゃアカンことなんですよ。

先輩さんは、単色機のオペレータさんですかね?単色機だから、こんな理論が
生まれたような気がしますね。例えばですよ、4色機で考えてみて下さいな。
文字物=墨ですよねぇ、そして、ベタ=紅や黄だったとしましょうね。

先輩さんの理論からすれば、墨の水を上げて、紅や黄の水を絞る事に成りますね。
・・・これ、4色機のセッティングでは、最悪のパターンだって事、分かりますよね。

1色目で水を多くしてしまったら、その後の2色目が着肉不良を起こしますよね。
単色なら関係ないんですが、4色機の場合だと、まだ乾いていないインキの上に
次から次へと、インキを塗り重ねて行く(ウエットトラッピング)わけですから、
先刷りの胴ほど、水を絞ってやらないと、良好な着肉が得られませんよね。

ですから、私流で言えば「ベタだろうが、文字物だろうが、とにかく極限まで
水を絞れ!」っていうのが正解ですわ。例えば、単色機の場合で、先にベタ物を
刷っていて、その後で文字物に成ったから、さぁ水を多く出そう!なんて、そりゃ
どう考えてもおかしいでしょ。

オフセット印刷ってね、目で見ると、物理的な事をやってるように見えますが、
インキや湿し水の関係って、完全に科学の世界なんですね。その科学の分野を
物理で処理しようとすると、大変な目に合ってしまう事に成りますよ。