印刷Q&A 逆トラッピング | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

高感度UVの印刷機を使い出して、1年近くに成りました。
先日、4色カラーで、その絵柄の中は、ほとんどが、墨ベタ。
墨ベタの中に小さな写真が有ったり、特にイヤなのが、
けっこう大きな文字で、タイトルのような、黄ベタの文字が
有るのです。この、黄ベタの文字が、印刷が進むにつれて、
どんどん黒っぽく成ってしまって、まともな黄色が出ません。
バックトラッピングだと聞いたのですが、どのようにすれば
きいれいな黄色を刷る事が出来るでしょうか。

●回答

UVのバックトラッピングは、本当に困りますよね。
特に今回のような絵柄は、最悪なパターンですわ~。墨の総ベタの
中の太めの、黄色のタイトル文字・・・ こりゃ本当に大変です。

バックトラッピング(逆トラッピング、または、逆トラ、なんて言います)、
このメカニズムは、チョット複雑なんですが、例えば、普通の4色機などの
場合、1色目のインキが乾燥する前に、2色目、3色目、4色目と印刷を
進行させて行きますよね。

まだ、乾いていないインキの上に、どんどん塗り重ねて行きますので、これを、
「ウエット・トラッピング」って呼びます。こうして、塗り重ねて行く時に、
例えば、1胴目の墨がベタで、しっかりインキが盛ってあるなんて場合、
紙の上に乗った、墨のインキが、2色目の藍のブランケットにもタップリと
着いてしまうんですよ。(普通の盛りの場合でも着くんですが)

2色目(藍)のブランに着いた墨のインキは、藍の版面にも、薄く着いて
しまいます。これが、版面からインキローラーへと転移して行き、インキを
黒くして行ってしまうんですよ。

藍や紅は、少々、黒く成っても分かり辛いんですが、黄色はアカンですね。
黄色のインキローラーが、黒っぽく成って行ってしまって、黒っぽい黄色に
成って行ってしまうので、本当にメチャメチャな感じに成ってしまいます。

油性の場合だと、インキが紙に浸透するので、ある程度は楽なんですが、
UVインキは、ほとんど紙に浸透せず、紙の表面にインキが乗っかっただけ
のような感じに成っているので、逆トラッピングが非常に激しいんですよ。

対処法としては、まず、黄色の湿し水を少しだけ多目に上げてやる事です。
ブランから版面に、逆転移する際、版面が濡れていれば、水と油が反発して、
版面に転移する量が、少なくて済むんですよ。

ただし、水を上げ気味にすると、濃度が低く成ってしまうので、そこんとこは、
濃度の低下と相談しながら、上げる量を決めてやらないとイカンですね。

あと、墨のインキを硬めの物にしてやるってのも、少しは効果があります。
が、正直なところ、この二つの方策で、完璧に良く成る事は、ありません。

んじゃ、完璧にするためにはどうするか。今回のような印刷物の場合は、
印刷を2回に分けるってのが、最善の策のようです。つまり、1回目は
墨、藍、紅の3色を刷って、その後、もう一度通して、黄色だけを刷る
って、ことなんですわ~。

油性をやっている人にとっては、ハア~ン!そんな面倒な事やるのォ!
って気がしてしまいますが、UVの人達にとっては、当たり前のこと
だったりするようです。

あまり、やりたくはない方策ですが、究極の場合、こんな方法も有ると
覚えておいて下さい。