●質問
印刷会社で、品質管理をしております。品質管理と言えば聞こえが良いのですが、
実際は、社内で印刷した物のミス処理係です。つい先日も、納めた印刷物に汚れが
有るとの事で、2万枚の印刷物(菊全判)を、全数検品して来ました。
検品に関しては、ある程度、仕方が無い事かとも考えているのですが、検品が
頻繁に続くと、著しく信用を失い、取引停止に成ってしまう場合も有ります。
印刷オペレータに自覚を促すべく、罰金制度なども設けようかと言う話も有りますが、
そうした、ミスに関して、成田さんの考え方をお聞かせ下さい。
●回答
私の、ミスに関する考え方は、少し独特かも知れませんので、覚悟の上でお読み下さい。
まずは、罰金制度に関してですが、これは、ミスの損失金を従業員に補填させると言う
意味合いに成る場合が有ります。つまり、ミス損金を従業員に弁償させると言う事です。
この事は、労働基準法でも禁止されていますので、かなりヤバいですよ。
また、道路交通法の罰金制度に関してもそうなんですが、罰金と言うのは「何をしては
いけないか」を教えるものであり「どうするべきだったか」は、教えてくれません。
例えば、自宅への帰り道を急いでいて、スピード違反で捕まったとします。この場合、
「制限スピードを超えてはいけない」と言う事は教えてくれますが、では、どうすれば
良かったのか?と言う点を教えてはくれないのです。
単純に考えれば、スピードを抑えて走れば良かった。と言うだけの話なのですが、
自宅から電話が入って「母親が突然倒れたので、大至急帰って来い」等と言うような、
スピードを出さざるを得ない事情とかが有って出していたような場合など、そうした
緊急対応時に、どうしたら良かったのかを、罰金ってヤツは教えてくれないんです。
我々の現場では「何をしたらいけないか」よりも「どうするべきだったか」の方が
数段、大切だと思います。そうした意味合いからも、罰金制度には、私は反対です。
それと、ミスが発生すると「誰がやった!」と、怒鳴ってる社長や上司を、よく
見掛けますが、この「誰がやった!」と言う考え方が、そもそも間違っているのですよ。
あなたの社員がミスをしたのです。あなたの部下がミスをしたのですよ。誰が悪いのか?
と、問うのであれば、指導不足の社長や上司が、一番悪いんですよ。
一人の人間に、ミスの責任を押し付けていたのでは、ミスなんて減るわけがないです。
人間が悪くてミスが出たのではない。システムが悪いからミスが出てしまったのです。
であるならば、誰がやってもミスが出ないように、システムを作り直せばいいんです。
何年前に成りますか、福知山線脱線事故って言うのが有りました。沢山の人が犠牲に
成ってしまった、大変な事故ですが、あれは、運転手のヒューマンエラーだと言われて
います。であるならば、悪いのは、その運転手であり、彼はもう死んでしまったので、
二度とあのような事故は起こらないか?と言うと、決してそんなワケはないですよね。
システムを変えてやらなくちゃ、第二、第三の事故が起ってしまいます。
印刷現場でも同じなんですよ。ミスをした本人に全責任を押し付けて処罰したって、
第二、第三と、同じようなミスが発生してしまうんですわ。
品質管理の方達は、何をしていますか?事後処理だけに奔走している状態ですか。
それでは、ミスは減らないですよね。例えば、発生した仕事に関して、オペレータと
直接会って、注意点だとか、対応方法などを打ち合わせする。なんて時間を持つなど、
システムを変えて行く方法を考えてみてはいかがですか。