印刷Q&A 色温度 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

いつも、成田さんのブログで勉強させて頂いております。
オペスタで使用する色見評価用の蛍光灯は、 『5000ケルビン 』と理解をしているの
ですが、この時に『色温度』と言う単語が関係してくると思いますが、あくまでも
明るさを表してい る筈で、本来なら『ワット』等と表現されると思うのですが、なぜ
『色温度』と表現されるのでしょうか?

●回答

質問下さい~、と書いたら、早速のご対応、ありがとうございます。

しかしながら、この質問、理解の仕方が間違っちゃってますねぇ。
色温度の問題は、技能検定試験にも出てきますし、今回の質問のような問題も、
過去に有りましたので、ご紹介しておきましょうね。

問( )色温度とは、光源の明るさを示すものである。 ・・・×です。

チョット難しいですが、きっちり理解してやって下さいね。
照明の世界ってね、単位がたくさん有って、非常に難しいんですが、まずは初歩的な
W(ワット)のお話しからです。光源の明るさと、ワット数は、実は無関係なんです。

ええッ!なんでッ!50Wより100Wの方が明るいに決まってるじゃん!って言いたいよね。
そりゃね、白熱球だけで考えたら、そう成るんだけど、白熱球と蛍光灯を比べたら、どう
成るでしょうか。・・・実はね、54Wの白熱球と、10Wの蛍光灯は、同じ明るさなんですよ。
ワット(W)ってのは、あくまでも消費電力の事であって、明るさとは無関係なんです。

んじゃ、光源の明るさを表すのは何か?って言うと、これには「ルーメン」と言う単位を
使います。正確にザックリ言うと「光源から発せられる光の量」ってのがルーメンです。
54Wの白熱球と、10Wの蛍光灯は、両方とも 810ルーメンなんですよ。

さてと、ここまでは大丈夫ですか?今度は、光源で照らされた、机の上の明るさの話です。
例えば、同じ 810ルーメンの光源だとしても、机の上から遠く離せば、机の上は暗く成るし
近付ければ明るく成りますよね。この、光源で照らされた机の上の明るさを「ルクス」と
言う単位で表します。ルクス=照度 です。

さぁ、問題の「色温度」なんですが。これは、ルーメンとかルクスとかとは無関係で、
あくまでも、光源の色の事を言っています。例えば、白熱球って赤っぽい色の光ですよね、
これは、3200K(ケルビン)で、夕日は 3500K、標準的な太陽光が 5000~6000ケルビン。
曇りの日の空の色は、少し青くて 7000ケルビンだと言われています。

ケルビンってね、絶対零度って呼ばれる、マイナス273度を基準に考えて行くんですわ~。
マイナス 273度の時に真っ黒な、黒体だった物質(金属とかを想像して下さい)を、
どんどん熱して行くワケです。そうすると、この黒体が、だんだん、赤色に成って、
オレンジ色から黄色に成って、そして白く成って、まだまだ熱して行くと、青く成る。
この熱した時の色の変化を、その時の温度で表したのが、色温度ってヤツなんです。

さて、ここからは、光の三原色(RGB)のお話しですよ~。
レッド(R)の光と、グリーン(G)の光と、ブルー(B)の光が同じ強さで均等に
混ざると、白色の光に成ります。これが、 5000ケルビンの光ですね。

んじゃですよ、例えば普通の蛍光灯の光って、ちょっと青っぽいですよねぇ。
これは、なんで青っぽいのかって言うと、RGBの内の、Rの成分が足らないから。
と言う考え方が出来るんですよ。

特色作りで、淡いグレーの色を作っていたとしましょう。色見本と比較しても、
バッチリのグレーが出来上がった!と思っても、その時に見ていたのが、青味の強い
蛍光灯の光だったとしたら、これはアカンのですわ~。

自分の作った色で刷った物と、色見本の物を並べて比較してるんだから、どんな光源
だって一緒じゃん!って思うかも知れませんが、これはアカンのです。今回のように、
R(レッド)の成分が少ない蛍光灯の明りでは、印刷物の赤色を、充分に反射する事が
出来なくて、色見本に比べて、赤が強くても弱くても、その識別が出来ないんですよ。

こうしたトラブルが起きてしまうので、日本工業規格(JIS)では、色評価用に、
5000ケルビンと言う、最もニュートラルな光源を指定してるんですね。
・・・すんません。チョット難しかったですか?