最期の小野小町が福井県越前市に生まれた事で生誕地と終焉地の関係が一通り説明が出来る様になりましたが、今回、福井県立図書館に問い合わせた結果の中に面白い事を書かれていました。
勿論、問い合わせたのは越前市の小野小町の伝承と、「小町」の名がつく地名についてですが、伝承は概ね同じような内容らしく、小町の付く地名はなかったとの回答でした。
地名は采女、「小町」に必須な条件だったのは平安時代の話なので、鎌倉末期は500年後の世界なので、後宮での仮称は廃止されていた可能性は高いと思います、代わりに近世と同じように「通称」を名乗っていたと思います。(江戸時代まで諱は名乗っていませんでしたので、鎌倉末期も同様と考えます。)
通称の名乗りはルールが分かりませんが、多分、自分で付けて名乗って良かったと考えます、なので、越前から采女になった娘は大胆にも「小野小町」を名乗ったのだと思います。(親が付けた名ならば仕方が無いですが、自分で名乗るには相当勇気がいったと思います。)
それだけ最期の小野小町が気丈で美人で聡明で、伝説の小野小町を名乗るのに不足が無いと自認していた事が分かります。
では、そんな小野小町を生んだ越前の小野氏はどういった家なのか?
少し興味を持っていたところ、福井県立図書館からの回答に、『白山村誌』の「小野町」の項に「地名の由来について、小野姫がこの地にきて永住していたので、小野という名がつけられたといわれているとあります。また、墓所として言い伝えられている五輪の塔跡の記述もあります。」とありました。
へ~そうなんだぁ~とスルーしそうな内容ですが、ちょっと引っかかりました!
私の研究からも、当時、荘園を開いて良いのは五位以上の貴族になった者で、おそらく何かしらの顕著な貢献を示した者に天皇から許可が下りていたと思われ、女性が荘園を開き土着するなど「珍しいことこの上ない!」話だからです。
墾田永年私財法が適用された以後、小野氏の娘で叙爵されたものなど片手で足りるほどで、思いつくのは、小野虫賣、小野石子、小野俊賢子、小野氏野ぐらいでしょうか?(六国史にでてくるのは、この四人ぐらいだと思います。うちの吉子さんは正六位上なので爵位は貰ってないんですよね~。記録に無いだけで貰っている可能性はありますがね。)
四人のうち石子さんは「長岡京市」に荘園があったと思います、氏野さんは「山科」にあった事は有名です、残るは虫賣か俊賢子ですが、時代が古く奈良朝の様な印象がありますので、私は「小野虫賣(おののむしめ)」を推したいと思います。
『続日本紀 巻第三十一 光仁天皇』の項で、「宝亀(ほうき)二年(771年)五月十七日」の項にこうあります、「壬寅、授(二)正六位上小野ノ朝臣小野虫賣ニ従五位下ヲ(一)」、これは正六位上だった小野朝臣の小野虫賣に従五位下を授けると書いていて、叙位のされかたからみて、天皇妃で二人目の子供を産み、5年経ち死ぬことも無かったので天皇から認知された為だと思います。
一人目で六位というのは吉子さんと同じなので、分かりやすくて良いですね。
虫賣は「氏女(うじめ)」だった様で(後宮の仮称に「小野」が入っているのは、氏を名乗れない采女ではあり得ないからです。)、後宮での仮称がそのまま通称となっていると思われ、通称が「小野虫賣(おののむしめ)」となっているのが面白いです(普通は通称は「虫賣」のみで、小野朝臣虫賣となる筈です。)、男どもが六国史に出る時は、「小野朝臣竹良」となり、通称のみである事が分かりますよね、つまり「小野虫賣」が通称になるのです。(ちょうど名前の表記の過渡期で官符に女性の名を載せるのに、どうしたら良いか悩んだ結果なのでしょうね~)
アレっ!? 初代小町は740年頃からと予想しているので、ちょうど、初代小町と二代目小町の間の女性という事になります、という事は.......。
と一瞬、小野小町の可能性を思いましたが、小野虫賣(おののむしめ)という名前自体が後宮での仮称の様なので、同時代に采女の「小町」が居たからこその仮称と判断出来ます。(小町が後宮のボスだったので、問題無かったと思います。)
私は小野氏の中で女が一家を興したのは吉子さんぐらいかと思っていましたが、どうやら先駆者がいた様ですね、俊賢子は尚書として後宮勤めが長かったと思いますので「小野姫」と表現されるあたり、天皇妃であった可能性は高いと思います。(四代目や五代目小町も天皇妃だからか、位牌には「小町姫」と姫がついています。
中世の「姫」とは天皇妃への尊称だったのかも知れません。(公式なものではなく、市井での尊称だと思います。だから大名の娘が姫になったんでしょうね~)
これで初代小町が強かった理由の一端が分かりました、同時代に天皇妃の娘がいたので後宮での発言力が強かったのだと思います、小町と虫賣の二枚看板で後宮を席巻していたとするのが真相なのでしょう!
いやぁ~、小野氏の娘の強い事、強い事! 男どもはたまらなかったでしょうね~、相対的な関係では女性陣に頭が上がらなかった時代なのではと思いますね。
龍海