前回、小野一族はウケモチの子孫である可能性を指摘しましたが、父方は大物主のクシミカタマの可能性についても書きました。
今回はクシミカタマが小野一族の祖であるいう可能性を示す証拠を見つけたのでご報告したいと思います。
島根県益田市に小野神社があるのですが、この神社は寛平3年（891年）に建てられた記録があるのですが、延喜式内社で以前は「小野天大神之多初阿豆委居命神社」という名前だったそうです。
長い名前ですが読みとしては「ヲノノ アヅワケ」としか残っていないようで、普通に読んでも“小野の天つ大神の初め、阿豆委居（アヅワケ？）命“としか読めないので、小野一族の始まりの神が「アヅワケ命」である資料になります。
漢字を素直に読むと「アヅイイ」又は「アヅイコ」ですが、これで調べても全く見当たりません。
諦めて「アヅワケ」で調べていると、東京都に属しますが、伊豆諸島の一つに利島村があり、此処に「阿豆佐和気神社」があり阿豆佐和気命を祀っていることがわかりました。
明細帳には「創立年代詳ナラズ、延喜式小社ニ列セラレ、阿豆気明神称セリ」と書いてあるらしく、「アヅワケ命」と同一人物とみなして良さそうです。（こんな名前は他にいないので…）
では阿豆佐和気命とは誰なのか？島の伝承では三島明神の王子と伝わっていて、三島明神とは事代主命の事の様です、更に三嶋大社を調べると「積羽（ツミハ）八重事代主神（ヤエコトシロヌシ）」と書いてあります。
そうです、日御碕神社で述べた「天葺根命」の養子に入ったクシミカタマの父親なのです、つまり阿豆佐和気命とはクシミカタマの可能性がいよいよ強くなったのです。（私としては、ほぼ確定かなとは思っていますが）
小野一族は「クシミカタマ」とウケモチ系の「オノヒメ（仮称）」の子供から始まり、ヤマトタケル尊の段で登場する地名、「相模の小野」も小野一族が領した土地で後の「横山党」の小野氏の所領でもあったと思われます。（横山党は小野篁の子孫にしていますが、多分違うと私は思っています。）
クシミカタマは出雲の大物主ですが、神武天皇の右臣として近江に土着したみたいなので、小野所領を近江にあることも納得しますし、神武天皇が妹のタタラヰソスズ姫を皇后として、後の天皇が生まれていく過程で天足彦国押人命が「春日の親君」となった時に小野一族とも再び血縁関係を結んだのも納得出来ます。
全く分からなかった小野一族の出自が見えて来ました、父系の直系ではなく母系氏族で神武天皇の義兄弟の息子（娘）、つまり神武天皇とは甥（姪）にあたるので名門扱いされていた訳です。
母系の方もウケモチ系であれば最古の皇族の一人なので十分名族にあたる訳です、私は「サクラウチ」がウケモチ系ではないかと思っているので、孝昭天皇の皇后である「世襲足媛」もウケモチ系女王ではないかと調べています。
ウケモチ系と高御産巣日系（ハコクニ系）が争っていた時に、世襲足媛が女王になったからこそ、子で第一皇子の天足彦国押人命が「天」を名乗り、第二皇子が「日本（ヤマト）」を名乗った、つまり世襲足媛が卑弥呼である可能性を示唆していると思うのです。
勿論、宇那比媛が女王を継承していた可能性も大いにあると思われ、宇那比媛の死後に第二皇子が天皇となり孝安天皇となって、また対立が深まった可能性があると思っています。
まだ具体的な記述は見つけられていませんが大いに可能性が出てきたと思っています。
また後漢書に載る「王帥升」ですが、西暦１０７年の事として「安帝永初元年 冬十月倭國遣使奉獻（本紀）安帝永初元年 倭國王帥升等獻生口百六十人 願請見」と書かれているのてすが「倭國王帥升（倭国の王、すいしょう）」という人は見あたらず研究者を悩ませています。
しかし「升」を「飛」の略字として捉えた場合、「王帥飛等」となり「オシヒト」と読めることを駒形 一登氏が指摘されていますが、私もその通りではないかと思っています。
駒形 一登氏は孝安天皇（諱がオシヒト）ではないかとしていますが、私は天忍穂耳（諱が同じオシヒト）の事では無いかと思っており、天忍穂耳→瓊瓊杵命→火明命→鵜葺草葺不合命→神武天皇→綏靖天皇→安寧天皇→懿徳天皇→孝昭天皇となっているので。
一代が約10〜15年といわれているので孝昭天皇までで約百年となり、天忍穂耳に百年を足すと卑弥呼時代になるという訳です。
ヤマト女王が孝昭天皇の死後に女王になった世襲足媛とその次の宇那比媛の可能性は大いにあるのです。
もしくは世襲足媛をバックにつけた宇那比媛だけが実際の女王卑弥呼の可能性もある訳で、世襲足媛なら葛城の掖上に居た可能性が高く、宇那比媛なら春日縣（大和）の可能性が高く、どちらにしても邪馬台国とは「大和」となってしまいますが、現時点では仮説でも私は大いに可能性があると思っています。