質問ありがとうございます。とても素晴らしい質問ですね。おそらく自分では何が素晴らしいのか自覚できていないとは思いますが(笑)。数字に基づいて考える思考法ができています。これは地理の基本的な考え方ですよ。

 

「日本は耕地面積が限られ土地生産性が高い、タイは広大な沖積平野があり土地生産性が低い」とはまさにその通りです。生産性についてきちんと「分母」を考えることができていますね。土地生産性は「収量÷面積」ですよね。分母である面積を考えることができている点において、あなたの地理的な思考は完成されていますよ。

 

だからこそ、ちょっと惜しかったなと思うのですよ。「1人当たり耕地面積」についても同じように考えられませんか。1人当たり耕地面積は「面積÷人口」ですよね。この場合の人口は「農業就業者」の人口です。

 

発展途上国であるタイの農業就業者(第1次産業就業者)割合は高く40%ほどです。タイの総人口は7000万人ですが、そのうち半分の3500万人が労働力人口としましょうか。その40%ですから、農業就業者の人口は1400万人ということになります。

 

一方、先進国である日本の農業就業者割合は低く、3%ほどです。日本の総人口1.2億人の半分が就業者人口として6000万人。この3%ならば、180万人です。

 

どうでしょう?「1人当たり耕地面積」の分母は農業就業者です。タイはこれが1400万、日本は180万です。その差は約10倍ですよね。よほどタイの方が広大な面積の耕地を有していない限り、計算すれば日本の方が1人当たり耕地面積の値は大きくなりませんか?

 

タイは日本より大きいとはいえ、せいぜい1.5倍ほどの差です。国土における耕地面積割合もタイの方が高いとは思いますが、それでもさすがに10倍はないはずです。日本も決して耕地面積割合が低い国ではありません(15%程度です)。1人当たり耕地面積は、農業就業者が少ない日本でこそ広くなるのです。

 

いかがでしょうか?数字で考えることができるあなたならば十分に理解してくれたと思います。割合を考える場合には、分子だけではなく必ず分母も考えてください。そして。そうした考え方はあなたは十分にできています。数字を使って考える思考、これからも大切にしてくださいね。