質問ありがとうございます。言われてみれば直接結びつくものではありませんよね。こういったちょっとしたことでもどんどん質問してくださいね。

 

まず「海岸侵食」の定義から。海岸に沿って、砂浜海岸や三角州などの地形が形成されます。砂浜海岸は、河川から流出した土砂が沿岸流(海岸線に沿って並行に流れる海水の動き)によって運ばれ沿岸に堆積することによって形成されます。三角州は、河川によって運ばれた土砂が河口付近に堆積することによって形成された低地です。

 

ただし、これらの地形は無条件に成長するものではありません。そこには波(海岸に沿って垂直に流れる海水の動き)による「侵食」との争いがあるわけです。波による侵食の作用が、土砂の堆積を上回れば土地は削られていきます。ただし、そもそも三角州や砂浜海岸が成長するということは土砂の堆積作用が強いわけであり、「堆積>侵食」の関係です。土砂が盛んに供給され、三角州や砂浜海岸がつくられます。一部は波によって侵食されるでしょうが、全体としては「プラス」のベクトルにあり、土地が拡大していくのです。

 

ただし、このバランスが崩れたらどうなるでしょう。そう、土砂の供給量が減少するわけですね。河川から吐き出される土砂の量が減ってしまえば、三角州や砂浜海岸の成長の度合いは下がります。波の侵食によってそれらの地形は大きく削り取られることになり、今度は土地の成長ベクトルは「マイナス」となってしまうのです。拡大を続けたそれら土砂の堆積地形は縮小することになります。

 

では、「河川から流出する土砂の量」はなぜ減るのでしょう。もうわかりましたよね。もちろん「ダムの建設」が最大の要因です。ダムの建設により上流から流れ落ちてきた土砂がそのダム湖に堆積します。土砂の流出が少なくなり、三角州や砂浜海岸の形成がおぼつかなくなるわけです。

 

いかがでしょうか。一見すると何も関係がないような人工的な建造物と自然の地形との関係ですが、「土砂」をキーワードとするとそこに大きな関係性があることがわかりますよね。人為的な活動によって大きく自然環境が損なわれることがあることを、我々は考えないといけません。