「ギャオ」というのですね。地理に関して深い見識をお持ちのようで素晴らしいと思います。ただ、いくつか勘違いされているようですので、その点をお伝えさせていただきますね。

 

まず「アフリカ大地溝帯は広がる境界です」。

 

仰せのように「大陸の裂け目」であり、プレートはこの箇所から広がっています。おそらく地下に「マントル対流」があるのでしょうね。マントルが地球の中心部から地表面方向に向かって「上昇気流」のように突き上がってくる一帯となっており、それによって新たにプレートが形成され、両側(東西方向)へと広がっていくのでしょう。

 

スタディサプリの高校地理の授業の中でも「アフリカ大地溝帯」は「広がる境界」であることは強調しています。再確認しましょう。

 

また、この地域の複雑な地帯構造については、You Tube動画「紅海」の中でも簡略化してお話ししています。良かったら参考にしてくださいね。

 

要するに「紅海」、「アフリカ地溝帯」、「インド洋中央海嶺」はいずれも広がる境界となっています。アフリカ大地溝帯とインド洋中央海嶺がともに広がる境界ならばその中央に将来的にはプレートの狭まる境界が形成されるとは思うのですが、それは数千万年後の話でしょうね。我々が知る由もありません。

 

おそらく貴方は地図帳のプレート配置図をみて、アフリカ大陸が一枚のプレート上にあり、東部地域にその境界がないことを見て勘違いしてしまっているのでしょう。東アフリカ大地溝帯は「最近」になって動き始めたところであり、まだ明確なプレートの分裂はみられないのです。大陸そしてプレートは常に動いていることを忘れないでください。

 

たとえていえば、貴方が鉄板でお好み焼きをつくっているとします。大きなお好み焼きができて、それをコテで切り離しますよね。一つ一つの断片がプレートであり、貴方がコテを入れた断面がプレート境界です。

 

ただ、このように完全にお好み焼きが切り離されるばかりではありません。

 

お好み焼きは「厚さ」を持っていますよね。コテを途中まで入れて、そこをちょっと開いてみましょう。中では具材や小麦粉がいい感じで焼けている様子が見られるかもしれません。この「途中まで切り裂いた」段階がアフリカ大地溝帯なのです。まだアフリカプレートの一部ではあります。でもさらにコテを深く入れて、完全に切り離してしまえば、将来的には「西アフリカプレート」と「東アフリカプレート」とに分裂する可能性もありますよね。先にも言ったように大陸は常に動いています。そして同じく先に申し上げたように、それは数年万年後の地球の姿でもあるのです。それは我々には知りえませんから想像するしかないんですけどね。

 

それから「新期造山帯」についてはその定義を確認してください。「新期」にばかり気を取られていませんか?「造山帯」の方が大切ですよ。

 

教科書新編詳解地理B(二宮書店)から引用です。「せばまる境界の一帯で、新たな大山脈や列島をつくる大規模な地殻変動を造山運動とよび」とあります。造山運動が生じた地域がもちろん造山帯なのですが、「せばまる境界」に沿うことが条件なのです。この辺りの定義、あいまいになっていませんか。

 

さらに「安定陸塊」の定義も誤解しているようですよ。同じく教科書の定義ですが「先カンブリア時代の造山運動によってつくられた陸地」とあります。この場合の造山運動は造陸運動と言い換えてもいいとは思いますが、別に地震や火山がないとは一言もありませんし、変動帯でないとも言われていません。そもそも安定しているとも定義されていないのですよ。唯一、明確な定義は「先カンブリア時代」つまり6億年以上前の大変古い時代につくられた「古大陸」であるということだけです。

 

先ほどのお好み焼きの話に戻りましょうか。例えば6時間前につくられたお好み焼きがあります。鉄板は冷え、気温も低ければそれはカチンカチンに固まってしまいますよね。これが安定陸塊つまり古大陸です。横では2時間前につくられたお好み焼き(古期造山帯)や、数十分前につくられまだ熱い鉄板の上にあるお好み焼き(新期造山帯)もあるかも知れません。この安定陸塊であるお好み焼きに対して、再び熱いコテを入れ、今まさに大地を切り裂こうとしている。これがアフリカ大地溝帯なわけですよね。アフリカ大陸の大地自体は古い時代に形成されたものです。アフリカ大地溝帯という新しい動きがあろうとなかろうと、これが「先カンブリア時代」につくられたという事実は動きません。ゆえに「アフリカ大陸=安定陸塊」なんですよ。

 

そもそも新期造山帯だからといって火山活動が活発なわけでもありませんよね。これもスタディサプリの授業では説明しています。アルプス山脈やヒマラヤ山脈、チベット高原には火山はありません。

 

むしろ安定陸塊であるアフリカ大陸にこそキリマンジャロのような火山はありますよ。古い時代に形成された大地が、今まさに新しい命を得て、火山を作り出しているわけです。

 

貴方からは地理という科目に対する深い愛情を感じますし、深く理解しているからこそこのような疑問が出てくるのだなと、非常に感心しました。しかし、ちょっと言葉に囚われすぎというか。「安定陸塊だから安定しているに違いない」というこだわりによって、逆にいろいろなことが見えなくなっているのだと思いますよ。

 

大地は現在進行形で常に動いているものです。貴方も固定観念にとらわれず、常に「動き続ける」柔軟な思考によって地理という学問と向かいあってみませんか。

 

今回は素晴らしい質問ありがとうございました。