これ、たしかに疑問ではあるんですよね。以下はあくまで私の考えであって、ソースがあるわけではありません。ただ、納得できる内容ではあると思いますので、参考にされてください。

 

統計で確認してみましょう。パキスタンの米の生産は1000万トン。これ、日本より多いんですよね。それに対し輸出量は400万トン。差し引き国内消費量は600万トンです。人口は2億人ですから1人当たり30キロ。日本人は1人当たり60キロ以上の消費(供給)ですから、日本人の半分の米でパキスタン人は生活してる???

 

ただ、すでにみなさんも気づいているとは思いますが、そもそもパキスタンの主食はナンであり、小麦ですよね。小麦の生産は米よりはるかに大きく、それによっておなかは十分に満たされているわけです。パキスタンでは米はあくまで「副食」に過ぎず、むしろ最初から輸出目的で栽培されているのですね。

 

パキスタンでなぜ米が栽培「できる」のか、そしてパキスタンでなぜ米を栽培「しないといけない」のか。この2点について考えてみましょう。

 

砂漠国パキスタンでなぜ米が栽培できる?これは植民地時代のイギリスの力が大きいようです。インダス川の河口付近、港湾都市カラチを中心とした地域ではイギリスによって灌漑施設が整備され、米の増産が行われました。もちろん米はパキスタン人にとって伝統的な食材ではないのですが、インダス川からの灌漑によってインダス川の三角州は米作地帯へと変貌しました。

 

ではなぜ米を栽培しないといけないのか。当時南アジアはすべてイギリス植民地でした。人口分布には偏りがあり、インド北部やバングラデシュでは人口過密であり、しばしば食料不足となりました。これを補うため、耕地に余裕があるパキスタン南部で米の増産が行われたわけです。実際、パキスタンとバングラデシュはかつて一つの国でした(パキスタン連邦)。インダス川流域で生産された米が、当時東パキスタンと呼ばれていたバングラデシュへと輸送(同じ国ですから「輸出」ではありませんよね)されていたのです。

 

バングラデシュが独立してからはそんな義理(?)はありませんので、米の栽培を止めてしまってもいいのですが、今度は新しい「お客さん」が現れるのです。現在、米の重要な輸入地域の一つが西アジアであり、ここにはオイルマネーで潤う国も多いですよね。サウジアラビア、アラブ首長国連邦などです。距離的に近いパキスタンは、これらの国々にとって重要な米の輸入先となるわけです。「パキスタン→西アジアの産油国」という関係性を考えれば、パキスタンの米がいかに必要とされているかわかるでしょう。

 

ただ、ここまで読んできておわかりとは思いますが、一般的に「自給的」に栽培がされるはずの米がパキスタンでは「商業的」に栽培されているわけです。パキスタン国内でどんなにたくさん米を作ろうと、それがパキスタン国民に渡る割合は低く、アラブの富豪によって独占されます。パキスタンは穀物の輸出国でありながら、国民の食生活は貧困であり、常に食料不足や飢餓の危険と隣合わせとなっているのですね。こうした「格差」をいかに解消するか。食料不足は農業生産の問題ではなく、社会システムの問題であるのです。現代を生きる我々の大きな課題になっているのです。