こんばんは(^^) なるほど、大変鋭い質問ですよ。「初歩的」どころか、貴方自身の地理への深い理解を感じます。

 

>季節風は陸と海の比熱の違いから生まれると解釈しています

 

その通りです。液体(海洋)は比熱が大きく、暖まりにくく冷めにくい。固体(陸地)は比熱が小さく、暖まりやすく冷めやすい。これにより、夏は気温が「海洋<陸地」であるため気圧が「海洋>陸地」となり、海から陸へと風が生じます。冬は気温が「海洋>陸地」であるため気圧が「海洋<陸地」となり、陸から海へと風が生じます。

 

>なので世界のどこでも生じるものだと思うのですが

 

実はそうなんですよ。というか、このしくみによって生じる風で最も我々の身近にあるものは、昼の風と夜の風です。つまり一日における風向変化なのです。太陽の照り輝く昼間は陸地で高温となるのに対し、海洋ではさほど気温は上がりません。気圧は海洋で高くなり、「海風」が生じます。太陽が沈むと陸地は急激に冷えますが、海洋は比較的温度が高い状態が続きます。夜間の気圧は陸側で高くなり、「陸風」が生じるのです。海陸の気温がほぼ同じとなる朝や夕方は風がなくなり、それぞれ「朝凪」、「夕凪」となります。こちらの言い方の方がよく知られているかも知れませんね。

 

>とくに高緯度地域では季節風の影響に言及した説明を見たことがないように思われます。

 

まさにその通りなんですよ。世界中のどの地域でも季節風は間違いなく生じています。ただ、それがモンスーンアジア(東アジアから南アジア)ほど強くないために、地理という科目において話題とされないだけなのです。

 

>季節風の影響を受ける地域の代表はアジアやインドだと思いますが

 

結局テストで問われるのはこの地域だけなんですよね。例えば、偏西風が強く吹き付ける西ヨーロッパでも、局地的にみれば多少は季節風は生じているはずです。ただ、それが出題されることはないわけです。

 

>他の地域では季節風が気候に影響を与えることはないのでしょうか?

 

結局のところ、世界中のどこでも季節風は生じていますし、前述のように一日のうちでも時間によって風向も変化します。ですので、少なからず気候に影響は与えられています。しかし、それが入試問題などで問われることはないのですよ。

 

ただ、いくつか代表的な場所を示しておきます。まず、アメリカ合衆国南東部とアルゼンチン東部です。ここは日本と同じような温暖で降水量の十分な気候がみられます。同緯度の西岸地域が降水量の少ない気候(地中海性気候など)であるのに対し、こられの地域は夏に亜熱帯高圧帯の影響に入るにも関わらず多雨となります。日本と同様に、海洋から湿った風が入り込むことによって降水がみられるわけです。この「海洋からの風」を季節風と解釈することは可能で、「中緯度の大陸東岸」は一般的に季節風の影響が強いと言えるわけです。

 

さらに、これはちょっとした発展編なのですが、西アフリカのギニア湾岸です。コートジボワールやガーナ、ナイジェリアですね。植生としては熱帯雨林が繁茂する森林地域なのですが、雨季と乾季の降水量の差は大きいです(一応、気候区分ではサバナ気候に分類されています。ただ、上述のように植生としては「サバナ=熱帯草原」ではなく「熱帯雨林」となっています)。

これについては気圧帯の移動を考えてください。赤道周辺の「熱帯収束帯」が7月(北半球の夏)になると北上しますよね。ギニア湾沿岸ではこれが北緯10°ほどの内陸部に移動するわけです。赤道周辺の海洋で気圧が高く、北緯10°の内陸部で気圧が低い。ギニア湾からコートジボワールやガーナの沿岸部へと湿った南風が吹き込み、多雨となります。

逆に1月(北半球の冬)になると気圧帯が南下します。赤道より南側の海上で気圧が下がり、内陸部から海洋への北風が吹き出すことになり、この時期に乾季となります。

つまりこのギニア湾岸地域は明確に季節による風向の逆転およびそれによる雨季と乾季が生じるわけですよね。まさしく「季節風」であり、気候(降水量)に与える影響は極めて大きくなります。

 

旧課程時代ですが、このギニア湾岸も「季節風がみられる地域」として出題されたことがあります。発展的な知識として覚えておいていいかもしれませんね。

 

このように赤道周辺地域では熱帯収束帯の移動によって風向が入れ替わり、結果としてそれが「季節風」になることがあります。システムとしては納得できることだと思います。

 

以上になりますが、理解していただけたでしょうか。とても素晴らしい質問だったと思います。また疑問点があれば、いつでも質問してくださいね。