[ファーストインプレッション]これ、いい問題ですね。地理の学習者としてこういった問題を楽しむことができれば相当レベルが高いと思うよ。

 

[解法]災害がテーマの問題だが特別な知識が問われているわけではなく、ジャンルとしては「考察問題」に区分される。しっかり文章を読んでいこう。ただし文章を読むとは言っても現代文(国語)のような高度な文章読解力が求められるわけではない。現代文ならば情緒的というか、著者や登場人物がどのように考えているかといったような感情を想像することも必要となる。でも地理はもっとメカニカルな科目。人の気持ちなんか関係ない。機械的にワードを拾っていって、それを無機質に組み合わせて解答を得ればいい。パズル的でもあるかな。

こういった問題について図から見てしまえ」ばいたずらに時間を使ってしまう。文章から直接見ていこう。aが「退避が必要な人数」、bが「避難が間に合わない可能性がある人数」、cが「避難場所別の避難者数」である。

まずマから。「津波浸水想定区域」と「人口分布」をレイア(重ね合わせ)させる。津波浸水が強く想定される地域に多くの人が住んでいれば、それだけたくさんの人が避難しないといけない。これによって非難が必要な人数が想像できるんじゃないかな。aとしてみよう。

ミとムはちょっと複雑かな。「津波避難場所」が示され、それぞれの避難場所について「避難場所からの特定の距離圏」も表されている。人々はいざとなったら最寄りの避難場所に逃げたらいいわけだ。いろいろな情報を一気に処理するのは大変なので部分的に解析しよう。「人口分布」と「避難場所からの特定の距離圏」を重ね合わせると何がわかるか。例えば避難場所については地域全体にほぼ均等に設けられているようだが、人口分布については多いところと少ないところで粗密がある。人口が多いところの避難場所には多数の避難者が殺到するだろうし、人口が少ないところならば受け入れ人数にかなり余裕が生じるかもしれない。人口分布の情報と避難場所の位置を重ね合わせることで(つまりミ)でcの「避難場所別の避難者数」が推計できるはず。

一方の「重ならない領域」ならば、「避難場所からの特定の距離圏」から外れた範囲のおおよその居住者が算定できる。そこが「津波浸水想定区域」から外れていればいいけれど、たとえば沿岸部で高い津波に襲われると見込まれている地域で、人口も多いところがある。しかし、そこが「避難場所からの特定の距離圏」から外れており、つまり近隣に避難所がない場合がある。「避難が間に合わない可能性」がそういった人々には生じるのではないか。cがムになる。

 

[アフターアクション]もちろん何の対策も要らない問題。特定の知識は求められず。文章を読解するだけで解答が得られる。とくに現代文(国語)のような感情に基づく文章解釈は全く不要であり、メカニカルに機械的な文章の読み取りに徹すればいい。だから別に高度な国語力(文章読解力)が必要というわけではないんだよね。冷静に文字を追っていく。

 

第3問問5

[ファーストインプレッション]これ、厄介な問題なんですよね(涙)ただ、こういった意味のわからない問題だからこそ文章の中に必ずヒントがある。がんばって文章を読んで! さらにXとYが何だろう、とかタとチは何だろうとそれぞれを考えるより、最も特徴的なものを一つピックアップし、それをはっきりと指摘しまった方がいい。おそらく一つだけ「特異点」がある。

 

[解法]問題文が長い問題はその中に確実にヒントが隠されている。意味なく長文が用意されていることはない。まずは丁寧に読み砕いていこう。

「地球温暖化」に関する問題だが、温室効果ガスの増加などそれが生じる理由が問われているわけではない。「緯度ごとに異なる」のだそうだが、その背景として「海陸の割合」がある。これが最大のポイントになりそう。

「海氷に覆われた海は日射を反射する」ため、つまり氷によって太陽光(太陽熱)が跳ね返されるため、「海氷面積の増減は気温上昇に影響を与える」のだそうだ。なるほど、そういうこともあるんだろうね。つまり現状で海氷面の割合の高い緯度帯では気温はあまり上がっていないのだろう。しかしもしも海氷が溶けてしまって、海が直接太陽光を受け取るような状況になると海水が熱せられ、さらに気温もより上がりやすくなるんじゃないか。そういった想像ができるよね。

ちょっとおもしろいのがここであえて「海氷」と言っている点。陸上の氷でも同じような効果があるとは思うのだが(大陸氷河は太陽光を跳ね返すが、露出した地面は太陽熱を吸収してしまう)、「海」に限定されている点が非常に興味深い。海と陸とでどういったメカニズムの違いがあるかはわからないが、問題の意図として「海」であることは重要なのだろう。

 

さらにここからは図の説明。XとYが「緯度30~40度帯または80~90度帯」。中緯度と極周辺。タとチが「北半球または南半球」。おおまかに「北極海」、「日本」、「オーストラリア」、「南極大陸」といったところだろうか。縦軸は面積割合、横軸は上昇気温。上昇気温は現在と比べどれぐらい気温が上昇するかという数値。面積割合はおそらくこれは合計で100%になっているのかな。例えばXタならば、気温が1.2℃上昇するのがこのエリアの40%の地域(この棒グラフは0.2℃ごとに刻まれているようだね)。

 

文章に戻ろう。「地球全体の平均気温が2℃上昇する」という予測があるそうだ。では各グラフにおいて「2℃」のところに線を引いてみよう。縦にまっすぐな線になるね。Xタでは棒グラフのほとんどはこの線よりも左側(値が小さい)、Yタは2よりも大きい。Xチはほぼ平均。半分が2未満、半分が2以上。Yチには驚かされる。値がほぼ6以上。地球平均が2℃の上昇であるのに、この緯度帯においてはほぼ全域において6℃以上の気温上昇が予想されている! 2℃でもとんでもない数字だと思うけれど(例えば現在は最高気温が35℃を超えると猛暑日とされているけれど、それが37℃になったら体温以上。猛暑を超えた猛暑。でもこの緯度帯においてはそれが6℃以上と予想されているのだ。35℃から6℃プラスで41℃! これはもはや殺人的な暑さ(熱さ)ではないか!そんな状況、考えられるかい???

 

このグラフにおける特異点は間違いなく「Yチ」なのだ。なぜこういった状況が生じるのだろう?そのヒントはここまでに読んだ文章の中にある。「海氷に覆われた海は日射を反射する」ことにより気温が上がりにくい。しかし海氷が溶けてしまい海水面が露出した場合は海が太陽光を直接受けることで(つまり海水が太陽光・太陽熱によって暖められることで)気温が上がりやすい状況となる。今まで海氷に覆われていたのに、海氷が溶けてしまうところこそ急激な気温上昇が考えられるのではないか。

 

氷が存在するのは日本やオーストラリアではない。両極地方である。さらに「海氷」に限定するのならば北半球である。北極点は大陸には位置せず、北極海が広がる。海氷に覆われた海域である。南極点は大陸中央部であり、海は存在しない。南緯80~90度は全域が南極大陸である。

 

さぁ、これを文章内の「海氷」の説明と結びつけよう。現状で海氷に覆われた北極海は氷が太陽光を跳ね返すため、受熱量は小さい。しかし氷が溶け、海面が剥き出しになると太陽光によって海水が直接暖められ、急激な気温変化が予想される。その温度上昇の幅は将来的な地球温暖化の平均上昇(2℃)を大きく上回るのではないか。Yチを北緯80~90度とし、このことより緯度30~40度帯はタ、北半球はYとなる。

 

[アフターアクション]難しい。そもそも意味がわからない。でもそういった問題だからこそチャンスがある。わかるわけのない問題だからこそヒントは全て文章内にあるし、余計なことを考えず素直にそれに従って思考を展開すればいい。今回ならば「海氷」である。なるほどそれまで太陽光(太陽熱)を跳ね返していた氷がなくなれば、熱が直接海水を温めることになる。急激な環境変化は急激な気温上昇に結びつくのはないかという推測が成り立つ。

 

その一方で、これって陸上ってどうなの?っていう疑問もあるんですよね。地表面の氷が溶けて地面が露出すれば海水面以上に太陽熱を受け取るんじゃないか?でもこれについては「ノーコメント」になっていますよね。全く言及されていない。

 

南緯80~90度はYタのはずなのだが、Yチほどの気温上昇はみられないね。これはどうしたことだろう?これ、僕は思うのですが、南極大陸は極めて分厚い氷に覆われており、将来的な地球温暖化があったとしても北極海の海氷とは異なり、下の地形(北極海ならば海、南極大陸ならば陸地)が露出しないってことなのでは?現状はもちろん氷に覆われている。将来的に気温が数℃上昇したとしても氷の全体が溶けるわけではないので依然として南極周辺の土地は氷に覆われたままであり、やはり太陽光を跳ね返す。さほど気温が上昇しないのは(それでもグラフを見る限り、2℃以上上がっているのだが)それが理由なのではないか。

 

以上全て推測の域を出ないのだが、特別な知識がなくても文章に沿って丁寧に考えれば正解に至るという典型的な「思考問題」でしたね。

 

[ファーストインプレッション]人口とGNIの問題ですよね。人口が多ければ人数は多くなる余地が増え得るし、GNIが大きければ金額も大きくなるだろう。

 

[解法]延べ被災者数と総被害額が問われている。人数と金額だね。人口が多い国でこそ人数は大きくなる傾向があるだろうし、経済規模(GNI)が大きい国でこそ金額が大きくなりやすい。

サとシ、二つのグラフを参照し、最初に注目するべきは数字と単位。サでは横軸の目盛りは最大で300。首位Rの値は270にも達する。シでは100であり、首位Pの値も90ほど。これ、大きな違いがあるよね。

単位は被災者数については「100万人」、金額は「10億ドル」。例えばサを被災者数とするとPの値は270×100万人で2億7千万人。これ、極端に大きな値になるよね。述べ被災者数なので人口とダイレクトに関係させるわけにもいかないけれど、それでも人口が多い国だからこそ被災者も多いと考えていいと思う。人口は「アメリカ合衆国>バングラデシュ>日本>タイ」の順。これ、どうやって考えればいいんだろうね。普通に人数が多い方から、Rがアメリカ合衆国、Qがバングラ、Pがタイと考えていいのだろうか。しかしそれならそれで日本の値が極端に小さいこともちょっと気になる。日本こそ災害が多い国だと思うのだが。。。

ただ、ここでヒントになる文があるね。注釈に「高潮、津波は除く」という文言があるじゃないか。年代は1980~2020年であり、この間に日本は東日本大震災を始め多くの地震(海底地震)による震災に見舞われ、津波の被害も大きかった。津波によって失われた命はおそらく地球最大だろう。さらに日本は台風(熱帯低気圧)の襲来も極めて大きい国。熱帯低気圧による海面上昇が高潮であり、それによって沿岸部では浸水被害が生じ、我が国でも熱帯低気圧による高潮被害は大きい。でもこれは今回は含まれないということ。

さらに東日本大震災の経験を振り返るまでもなく、我が国において津波による被害は甚大である。東日本大震災の際には三陸海岸を中心に多くの命が失われ、さらに都市施設も壊滅的な被害を受けた。1990年代には北海道奥尻島の津波でも死亡者・行方不明者が多数を数え、多くの家屋も失われた。しかし、津波被害についても今回は「浸水」被害には含まれないとのこと。これら以外のケースを考えないといけない。

 

そうなると思い浮かぶのは「河川」流域での浸水である。豪雨によって河川が氾濫し、周囲の沖積平野(氾濫原や三角州)が広く浸水する。このことによる被災や被害を考えるべきなのだ。なるほど、サやシでに日本の値がさほど大きくない(とくにサはほとんどゼロである)点にも納得。気圧低下による高潮や海底地震による津波被害を考えればこんな数字にとどまるわけはない。

 

というわけで今回の「浸水」については河川を考え、とくに河川下流域の低地(三角州など)での被災者や施設の被災を受けやすい国はどこか、という観点がカギとなってくる。そう、これについて真っ先に思い当たる国、それはバングラデシュなんじゃないかな。巨大なガンジス川の下流域に国土が広がり、その大部分は大河が形成される三角州から成っている。河川の氾濫により国土の広い範囲が水没し、水害の被害がとくに大きいのではないか。夏の季節風や熱帯低気圧によって大量の降水がもたらされることもあり、その被害は甚大なものになる。

 

ただ、ここでちょっと考えて欲しいのだが、サとシ、果たしてどちらが被災者でどちらが被害額だろうか。つまり「人=人口」か、「金=経済」か。それを先に仮定してしまった方が分かりやすいと思う。日本に注目してみよう。日本は先にも述べたように高潮(台風)や津波による死者は少なくないと思う。とくに時期が1980年から2020年までなので奥尻や三陸海岸の津波被害者は相当数に上る。しかし、それは今回はカウントされない。河川氾濫だけの数字ならばどうだろう?「緊急事態において迅速な救助を必要とする」ほどの被災者はいないんじゃないか。

 

その一方で被害額はどうだろう?日本は1人当たりGNIが高く、さらにGNIも大きな国である。例えば家が一軒破壊されたとしてその復旧には物価が高い国であるのでそれなりの金額はかかると思う。また経済規模が大きいので例えば都市において建築コストが高い建物が密集している可能性がある。その一角が水没したらやはり復旧には多額の金額がかかってしまうはず。日本において被害額はそれなりに大きな値となるはず。どうだろう?このことからサを「延べ被災者数」、シを「総被害額」と考えてみていいんじゃないか。もちろん決めつけるには早いので、とりあえず「仮定」として話を進めてみる。

 

そうなるとバングラデシュはどうだろう?ガンジス川の三角州に国土が広がる低地国。背後のヒマラヤ山脈との対比がはっきりしているね(南アジアの地形は第6問問1でも問われている)。バングラデシュは人口が多い国(世界第9位)でもあり、被災者が多く数えられることも納得。その一方でバングラデシュは世界最貧国の一つで1人当たりGNIは極めて低い。洪水によって家財道具一式が流されたとしても、その金額は(先進国に比べれば)安いものである。GNIも小さく都市施設もさほど整備されていない。ダメージを受けるはずの送電施設や上下水道設備がそもそも少ないのだ。被災者は極めて大きいが、そのわりに被害額が少ないRをバングラデシュとみていいだろう。1人当たりの被害額が小さいということ。経済レベルの低い国だからである。

 

逆の考えかたをするならばPがアメリカ合衆国になるのではないか。被害者数に比して被害額が大きい(1人当たりの被害額が高い)という傾向がはっきりしている。これは先進国であり、さらに経済規模が大きい国の特徴なのではないか。1人当たりGNIが高く物価が高いので、建物が一つ流された時の損害額が大きい。GNIが大きく大都市が多い。洪水によって被害を受ける可能性がある都市施設もその分だけ多いと考えられる。被災者数に比べ被害額が大きいPがアメリカ合衆国。

 

残ったQがタイだろう。タイの国土の中央を大河(チャオプラヤ川)が流れ、洪水は少なくないだろうし、それによる被災者や都市施設の被害も大きいとは思われる。しかし「低地国」バングラデシュほどにはそれは深刻ではないんじゃないかな。経済レベル(1人当たりGNI)は7000ドル/人であり、発展途上国としてはやや高い。1人当たり被害額を考えてみた場合、アメリカ合衆国よりは低いがバングラデシュよりは高い値となっている。

 

以上より「仮定」として話を進めてきたが、こちらの形で全く問題はなく適切だったと思われる。仮定通りサが「延べ被災者」、シが「総被害額」、そしてそれによって国も特定されPがアメリカ合衆国、Qがタイ、Rがバングラデシュである。

 

[アフターアクション]とにかく真っ先に考えたのが「1人当たりGNI」。1人当たりGNIの低い国では物価が安いので、家の一軒当たりの値段も安いはず。1人当たりGNIが低い国では、被害の深刻さに対し被害額が小さくなるんじゃないかという予測がなりたつ。つまり「被災者1人当たりの被害額は小さくなる」んじゃないかという理論的思考。これ一発で解けるよね。

もちろんバングラデシュの地形的特徴は知らないといけないが、それは過去問を見れば十分に知識として得られること。第6問問1にも南アジアの地形が登場している。決してハードルが高い知識ではないと思うよ。

[ファーストインプレッション]ちょっと変わった問題ですね。案外とこういった問題の方が難しかったりして。普通に考えて普通に解く。

 

[解法]コーヒーと茶の1人1日当たり消費量が問われている。昔早稲田の問題で日本人の1人1日当たり消費量は茶とコーヒーどちらが多いかっていう問題が出されていて、正解はコーヒーだったっていうのがあったんだけど、ちょっと意外な統計かな。東洋は茶の方が多いイメージでしょ?ただ、重量ベースにすると乾燥させた茶葉の重量は軽く計算されてしまうので、コーヒーの粉末の方が「重い」のは当たり前だったりするんですよね。とはいえ、やはり日本人の「茶離れ」と「コーヒー嗜好」もはっきりしており、とても興味深い問題だった。

本問でも表に日本が示されている。茶は0.6杯、コーヒーは0.9杯ほど。茶は1杯3グラム、コーヒーは1杯10グラム換算なので、茶が2グラム、コーヒーが9グラムって感じなのかな。日本を基準に考えてみると、そもそも両者の量が多いのが1、ほとんど茶のみでコーヒーを飲まないのが1と3。ただし、3はそもそもの量も少ない。4は茶は少ないがコーヒーが主。

シンプルに「茶=東洋、コーヒー=西洋」ってイメージでいいんじゃないかな(このイメージで解くところが「変わった問題」なんですよね。でもたまにはそういった問題にあっていいとは思います)。コーヒーがメインである4を西洋のイタリアとしてしまおう。コーヒーをほとんど飲まない2と3を東洋の国と考え、中国かインドネシアのいずれか。

イギリスは1なんじゃないかな。イギリスは紅茶で知られる国であり、茶がよく飲まれている。しかし、西洋の国でありコーヒーの消費も少なくない。単なるイメージで解いてしまっているけれど、おそらくそれで間違いない。

 

[アフターアクション]ホント、変な問題。普通に考えて普通に解く問題というか、一般的な「クイズ」みたいだよね。テレビのバラエティ番組で大学生タレントが答えるみたいな。どうですか、私、賢いでしょ?みたいな感じ(笑)「イギリス=紅茶」のイメージで解くのだけれども、ヨーロッパだからそれなりにコーヒーも飲んでいるんじゃないかって予想で解いてしまう。僕的にはあまりいい問題とは思わないな。共通テストの黒歴史的な問題だね。

 

 

[ファーストインプレッション]ちょっと曖昧な問題でかなり自信はなかったけど、なんとか正解できました。「えっ、こんなところが誤ってるの???」って、問題としては正直クオリティが低いようにも思う。ただ、この「質の低さ」が実は地理総合・探究の特徴の一つでもあるんだろうな。さらに気がついた特徴ししてはマルチジャンルであるという点。一見すると「農業」ジャンルの問題に見えるのだが、解いてみるとこの問題が「気候」ジャンルの問題でもあることがわかる。地理の問題はジャンル分けが難しく、単元ごとに学習することに意味がないことがわかるね。地理は全体を俯瞰する総合的な力が問われるのだ。

 

[解法]

農業と気候のハイブリッド問題。正文判定問題なので、誤りを3つ指摘してみよう。

まず農業についてだが選択肢2がわかりやすい。農産物の名称は出題のポイントになり、とくに「湿潤」か「乾燥」であるかが非常に重要。農産物の栽培条件について考えてみよう。

ヤシにはいくつか種類があり。ココヤシ、アブラヤシ、ナツメヤシの3種類が問われる。いずれも高温の気候環境で栽培されるものだが、湿潤であるか、乾燥であるかが異なっている。ココヤシとアブラヤシは「湿潤」の環境が必要。ココヤシはフィリピン、アブラヤシはインドネシアやマレーシアが生産上位国。いずれも東南アジアが栽培の中心であることがわかる。

それに対し、

なお、ココヤシの胚珠を乾燥させたものがコプラであり、これから油脂が採取される(ヤシ油)。アブラヤシは実からパーム油が採取される。ともに油脂原料として重要な商品作物である。それに対しナツメヤシは自給作物であり、主に食料となる。実を加工したデーツは乾燥地域の人々の重要なカロリー源となる。

 

さらに選択肢3。この選択肢が曲者なんだよな。「農業」の思いきや「気候」の問題。しかも気圧帯の移動に関連させて考える箇所。ウについては低緯度であるため日射量が多く「高温」であることは間違いない。アフリカ大陸低緯度地域は東部が高原であり、西岸から内陸部まではコンゴ川流域の低地(盆地)が広がり標高は低い。「高温」である。

ポイントは「雨季と乾季が明瞭」かどうかということ。低緯度地域で雨季と乾季が生じるメカニクスは地球の気圧帯の季節的な移動によるもの。緯度10~20度付近。夏は熱帯収束帯に覆われ多雨、冬は亜熱帯高圧帯の影響で少雨。北緯10~20度付近は、7月には赤道方面から北上する熱帯収束帯によってスコールに見舞われ、1月はサハラ砂漠方面から南下する亜熱帯高圧帯によって乾燥気候がもたらされる。南緯10~20度付近は、7月には高緯度方向から北上する亜熱帯高圧帯の影響で乾季、1月には赤道方面から南下する熱帯収束帯により雨季。

このようなメカニズムを考えた場合、ウの降水パターンはどうなるだろう。ウは赤道直下である。気圧帯の季節的移動がみられたとしても亜熱帯高圧帯が赤道直下まで影響を及ぼすことはなく、年間を通じて熱帯収束帯の支配下にあり多雨となる。一年中いつでもスコールが降る。「雨季と乾季が明瞭」とはちょっと考えにくいんじゃないかな。誤りとなる。なお「焼畑」と「キャッサバ」は適切。

最後に4。エのケープタウン周辺は地中海性気候がみられる。夏(1月)には気圧帯が軟化することによって亜熱帯高圧帯に覆われる。少雨となり乾季となる。冬(7月)は偏西風や寒帯前線(高緯度低圧帯)の影響によって一定の降水がみられる。樹木栽培が盛んであり、とくにブドウの生産が多い。「冬より夏の降水量が多い」が誤っているね。

 

以上より1が正解。アは黒海北岸でウクライナ。ステップが広がりやや降水量が少なく草原が広がっている。偏西風が吹き込むヨーロッパであり、降水の年変化は少ない。気温はやや冷涼であるが、植物の腐敗が妨げられるほどの寒冷な気候というわけではない。植物が適切に腐敗し、つまり「腐植」がつくられ肥沃な土壌として小麦栽培に利用されている。ホイットルセー農牧業区分の「企業的穀物農業」もキーワードになるのでぜひとも知っておこう。

 

[アフターアクション]本問でおもしろいのは出題がマルチジャンルというかジャンルレスというか。特定のジャンルに偏った問題ではなく、農業(農産物の栽培条件)や気候(気圧帯の季節的な移動)のハイブリッドという点。これ、共通テスト以降に顕著になった傾向でとくに新課程になってこのパターンの出題が目立っている。「農業」の問題だと決めつけないで、「実は気候に関する箇所がNGなんじゃないか?」って考えながら解かないといけないね。とても興味深い。