

[ファーストインプレッション]人口とGNIの問題ですよね。人口が多ければ人数は多くなる余地が増え得るし、GNIが大きければ金額も大きくなるだろう。
[解法]延べ被災者数と総被害額が問われている。人数と金額だね。人口が多い国でこそ人数は大きくなる傾向があるだろうし、経済規模(GNI)が大きい国でこそ金額が大きくなりやすい。
サとシ、二つのグラフを参照し、最初に注目するべきは数字と単位。サでは横軸の目盛りは最大で300。首位Rの値は270にも達する。シでは100であり、首位Pの値も90ほど。これ、大きな違いがあるよね。
単位は被災者数については「100万人」、金額は「10億ドル」。例えばサを被災者数とするとPの値は270×100万人で2億7千万人。これ、極端に大きな値になるよね。述べ被災者数なので人口とダイレクトに関係させるわけにもいかないけれど、それでも人口が多い国だからこそ被災者も多いと考えていいと思う。人口は「アメリカ合衆国>バングラデシュ>日本>タイ」の順。これ、どうやって考えればいいんだろうね。普通に人数が多い方から、Rがアメリカ合衆国、Qがバングラ、Pがタイと考えていいのだろうか。しかしそれならそれで日本の値が極端に小さいこともちょっと気になる。日本こそ災害が多い国だと思うのだが。。。
ただ、ここでヒントになる文があるね。注釈に「高潮、津波は除く」という文言があるじゃないか。年代は1980~2020年であり、この間に日本は東日本大震災を始め多くの地震(海底地震)による震災に見舞われ、津波の被害も大きかった。津波によって失われた命はおそらく地球最大だろう。さらに日本は台風(熱帯低気圧)の襲来も極めて大きい国。熱帯低気圧による海面上昇が高潮であり、それによって沿岸部では浸水被害が生じ、我が国でも熱帯低気圧による高潮被害は大きい。でもこれは今回は含まれないということ。
さらに東日本大震災の経験を振り返るまでもなく、我が国において津波による被害は甚大である。東日本大震災の際には三陸海岸を中心に多くの命が失われ、さらに都市施設も壊滅的な被害を受けた。1990年代には北海道奥尻島の津波でも死亡者・行方不明者が多数を数え、多くの家屋も失われた。しかし、津波被害についても今回は「浸水」被害には含まれないとのこと。これら以外のケースを考えないといけない。
そうなると思い浮かぶのは「河川」流域での浸水である。豪雨によって河川が氾濫し、周囲の沖積平野(氾濫原や三角州)が広く浸水する。このことによる被災や被害を考えるべきなのだ。なるほど、サやシでに日本の値がさほど大きくない(とくにサはほとんどゼロである)点にも納得。気圧低下による高潮や海底地震による津波被害を考えればこんな数字にとどまるわけはない。
というわけで今回の「浸水」については河川を考え、とくに河川下流域の低地(三角州など)での被災者や施設の被災を受けやすい国はどこか、という観点がカギとなってくる。そう、これについて真っ先に思い当たる国、それはバングラデシュなんじゃないかな。巨大なガンジス川の下流域に国土が広がり、その大部分は大河が形成される三角州から成っている。河川の氾濫により国土の広い範囲が水没し、水害の被害がとくに大きいのではないか。夏の季節風や熱帯低気圧によって大量の降水がもたらされることもあり、その被害は甚大なものになる。
ただ、ここでちょっと考えて欲しいのだが、サとシ、果たしてどちらが被災者でどちらが被害額だろうか。つまり「人=人口」か、「金=経済」か。それを先に仮定してしまった方が分かりやすいと思う。日本に注目してみよう。日本は先にも述べたように高潮(台風)や津波による死者は少なくないと思う。とくに時期が1980年から2020年までなので奥尻や三陸海岸の津波被害者は相当数に上る。しかし、それは今回はカウントされない。河川氾濫だけの数字ならばどうだろう?「緊急事態において迅速な救助を必要とする」ほどの被災者はいないんじゃないか。
その一方で被害額はどうだろう?日本は1人当たりGNIが高く、さらにGNIも大きな国である。例えば家が一軒破壊されたとしてその復旧には物価が高い国であるのでそれなりの金額はかかると思う。また経済規模が大きいので例えば都市において建築コストが高い建物が密集している可能性がある。その一角が水没したらやはり復旧には多額の金額がかかってしまうはず。日本において被害額はそれなりに大きな値となるはず。どうだろう?このことからサを「延べ被災者数」、シを「総被害額」と考えてみていいんじゃないか。もちろん決めつけるには早いので、とりあえず「仮定」として話を進めてみる。
そうなるとバングラデシュはどうだろう?ガンジス川の三角州に国土が広がる低地国。背後のヒマラヤ山脈との対比がはっきりしているね(南アジアの地形は第6問問1でも問われている)。バングラデシュは人口が多い国(世界第9位)でもあり、被災者が多く数えられることも納得。その一方でバングラデシュは世界最貧国の一つで1人当たりGNIは極めて低い。洪水によって家財道具一式が流されたとしても、その金額は(先進国に比べれば)安いものである。GNIも小さく都市施設もさほど整備されていない。ダメージを受けるはずの送電施設や上下水道設備がそもそも少ないのだ。被災者は極めて大きいが、そのわりに被害額が少ないRをバングラデシュとみていいだろう。1人当たりの被害額が小さいということ。経済レベルの低い国だからである。
逆の考えかたをするならばPがアメリカ合衆国になるのではないか。被害者数に比して被害額が大きい(1人当たりの被害額が高い)という傾向がはっきりしている。これは先進国であり、さらに経済規模が大きい国の特徴なのではないか。1人当たりGNIが高く物価が高いので、建物が一つ流された時の損害額が大きい。GNIが大きく大都市が多い。洪水によって被害を受ける可能性がある都市施設もその分だけ多いと考えられる。被災者数に比べ被害額が大きいPがアメリカ合衆国。
残ったQがタイだろう。タイの国土の中央を大河(チャオプラヤ川)が流れ、洪水は少なくないだろうし、それによる被災者や都市施設の被害も大きいとは思われる。しかし「低地国」バングラデシュほどにはそれは深刻ではないんじゃないかな。経済レベル(1人当たりGNI)は7000ドル/人であり、発展途上国としてはやや高い。1人当たり被害額を考えてみた場合、アメリカ合衆国よりは低いがバングラデシュよりは高い値となっている。
以上より「仮定」として話を進めてきたが、こちらの形で全く問題はなく適切だったと思われる。仮定通りサが「延べ被災者」、シが「総被害額」、そしてそれによって国も特定されPがアメリカ合衆国、Qがタイ、Rがバングラデシュである。
[アフターアクション]とにかく真っ先に考えたのが「1人当たりGNI」。1人当たりGNIの低い国では物価が安いので、家の一軒当たりの値段も安いはず。1人当たりGNIが低い国では、被害の深刻さに対し被害額が小さくなるんじゃないかという予測がなりたつ。つまり「被災者1人当たりの被害額は小さくなる」んじゃないかという理論的思考。これ一発で解けるよね。
もちろんバングラデシュの地形的特徴は知らないといけないが、それは過去問を見れば十分に知識として得られること。第6問問1にも南アジアの地形が登場している。決してハードルが高い知識ではないと思うよ。