ヒトラーのナチズムとパレスチナ・アラブ人のテロリズム | 岩本龍弘のブログ

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1964年、愛知県半田市に生まれる。イスラエルから発信される英語の記事が伝えるイスラエルと、日本のメディアが伝えるイスラエルがまったく違うことに気づいたことがきっかけで、イスラエルを応援する記事を書いている。今はアメリカに関心がある。

ヒトラーのナチズムとパレスチナ・アラブ人のテロリズムは同じ方向に進んでいた。ヒトラーは全ヨーロッパのユダヤ人を滅ぼすことを目標に掲げていた。その一方で、パレスチナ・アラブ人のイスラム教指導者は、中東のアラブ世界のユダヤ人を滅ぼすことを目標に掲げていた。


歴史家のロベルト・S・ヴィストリヒによると、19411128日、アドルフ・ヒトラーはベルリンで、パレスチナ・アラブ人のイスラム教指導者、ハジ・アミン・アル=フセイニと会談した。当時、アル=フセイニは亡命中で、ベルリンに住んでいた。アル=フセイニはドイツの秩序と規律を称賛しながら、ヒトラーが中東を支配するイギリスを打ち倒し、パレスチナのユダヤ人を滅ぼすための支援をしてくれることを期待していた。ベルリンでの会談で、アル=フセイニはイスラム・アラブ軍をバルカン半島に派遣することでドイツ軍に協力する用意があることを表明した。その見返りとして、パレスチナからユダヤ人を一掃するというアラブ人の目標を、ヒトラーが支持してくれることをアル=フセイニは求めた。ヒトラーはこの取引に応じなかったが、「ドイツはユダヤ人に対し断固たる戦いに打って出る」と語った。さらにヒトラーは、自分が始めた第2次世界大戦について、アル=フセイニに向かって次のように説明した。


「ドイツは現在のところ、ユダヤ人勢力の二つの牙城と死闘を繰り広げている。イギリスとソ連だ」


つまり、ヒトラーが始めた第2次世界大戦は、ユダヤ陰謀説が想定するユダヤ人勢力に対する戦争だったのだ。ヒトラーはイギリスの資本主義の背後にも、ソ連の共産主義の背後にも、神話的なユダヤ人勢力がいると見ていた。


パレスチナ・アラブ人のイスラム教指導者は、ヒトラーのこの戦争を支持した。さらにヒトラーは、ユダヤ人の民族的郷土にユダヤ人の国が建設されることに反対の意を表明した。このユダヤ人の国が建設されることは有害でしかない、とヒトラーは考えていたのである。歴史家のヴィストリヒによると、ハジ・アミン・アル=フセイニは、ヒトラーのこの意見を聞いて安心した。つまり、ヒトラーとパレスチナ・アラブ人の指導者は、反ユダヤ主義、反イスラエルの立場で完全に一致していたのである。


このような歴史から得られる教訓は極めて重要である。ここで強調したい教訓がふたつある。ひとつは共産主義者の活動に関するものである。今日、イスラエルに敵意を抱きながらボイコット運動を促進する左翼の活動家は、アドルフ・ヒトラーの反ユダヤ主義の路線を継承しているのである。もうひとつの教訓は、わが国の保守派の中に浸透したユダヤ陰謀説に関するものである。今日の日本の保守派の間にユダヤ陰謀説をはびこらせている人々も、実はヒトラーの歴史観を継承しているのである。ヒトラーの過ちを繰り返さないためには、ユダヤ陰謀説を含む反ユダヤ主義に対して、常に反対の声を上げ続ける必要があるのだ。


資料:ロベルト・S・ヴィストリヒ『ヒトラーとホロコースト』大山晶訳、相馬保夫監訳、ランダムハウス講談社、2006年、p.168以下。


写真:https://ja.wikipedia.org/wiki/アミーン・フサイニー