Yside
俺は仕事で海外に来てもルーティンを欠かさない。
ライブ後はストレッチをして、
今日の日記なんかも書く。
チャンミンは仕事終わりのお酒がご褒美なんだろうけだ、俺はあんまり飲まない。
どちらかというとコーヒーを飲みながらゆっくり脳を休めるのが至福の時間かも。
『ほんと真逆だよなー』
そんなことを思いながら、
キュヒョンとラウンジに行った弟のことを考えていた。
シャワーも浴び、少しほっこりタイム。
そんな中俺のスマホは珍しい相手からの着信を知らせた。
プルルルルルッ
プルルルルルッ
『キュヒョン?』
"すみませんユノヒョン今部屋にいますか?"
『いるけど…あれ?チャンミンと飲んでるんじゃないのか?』
"それがですね………ちょっとトラブルが"
『トラブル?』
聞くところによるとラウンジでキュヒョンがいないタイミングに見知らぬ外国人の男性にチャンミンはキスをされたようだ。
『チャンミンは今どこ?』
"とりあえず僕たちの部屋にいます。
ユノヒョン迎えにこれますか?
チャンミンが「ヒョン…ヒョン…」って言ってるんですよ"
『…………わかった。迎えに行くよ』
"すみません。俺が離席したせいで……"
『キュヒョンは悪くないよ。すぐ部屋に行くからそれまでチャンミンを頼む』
"はい!"
そうして俺はシャワー後ってことも有りかなりリラックス着だったけど、
そのままチャンミンのいる部屋へと向かった。
"ユノヒョンこっちです!"
『キュヒョンありがとう。チャンミンは?』
"…………それが…"
『ん?』
俺がキュヒョンの部屋に入るとチャンミンはベッドの上で体育座りをし、
シウォンとヒチョルヒョンがチャンミンの横で同じくベッドの上にいた。
口元をタオルでグルグル巻にして。
唇を守ってるのか?今更だけど……
ヒチョルヒョンはチャンミンの頭を撫でながら、
"可哀想なチャンミン。俺様が慰めてやるよ"
"ヒョンに慰められるなんて恐怖だよ。
俺が慰めてやるよチャンミン"
"言うね〜シウォン。お前こそ変な意味でチャンミンを慰めかねないけどな"ニヤリ
『……………………キュヒョンこれは?』
"だーーーーー!ヒョン達離れて!"
"キュヒョナ、俺様に楯突くっての?"
「……ヒョン………ヒョン……」
"ほら、チャンミンだって俺たちを呼んでんだろ?"
そう言いいながヒチョルヒョンはチャンミンの頭だけでなく、頬や肩を撫でる。
チャンミンはその手を振り解くこともせず、されるがまま。
なんだヒョンなら誰でもいいんじゃん。
「………ヒョン………ヒョン……ッ」
"おーおーヒョンならここにいるぞシウォ二ヒョンが♡"
"お前バカか?ヒチョルヒョンがいるんだからシウォ二は用無しだ"
『…………………』
なんか俺いる意味あるか?
チャンミンもまぁこの部屋にいるなら安心安全だし、ひとまずチャンミンが落ち着くまで俺は部屋に戻ろうかな。
「…………ヒョン…ッヒョン……」
"どーした?チャンミン♡"
「僕のヒョンはユノヒョンだけです!!!」
『………………え?』
「ヒョン……ユノヒョン……帰ろう?」
『……あぁ、俺たちの部屋に帰ろう』
チャンミンが俺へ腕を伸ばしたから、
俺はその腕を掴みキュヒョンの部屋を後にした。
シウォンは愕然っといった表情で、
ヒチョルヒョンはなんだかニヤニヤとした表情だったけど、
俺はとにかくチャンミンを部屋へと帰すのに必死だった。
部屋に戻っては来たが、
チャンミンはずっと下を向いたまま。
『口元のタオル外したら?』
「………あ」
『もう安全なんだから、な?』
「…………はい……」
ゆっくりとタオルを外したらチャンミンの唇が現れた。
『っめっちゃ赤く腫れてる!まさか…!赤く腫れるほどキスをされたっていうのか?!』
くそっ!俺の可愛い弟に!!!
「あ、違います。気持ち悪くて……ゴシゴシしちゃったら赤くなってしまって…」
『………あぁそっか……でももうゴシゴシしたら駄目だよ?明日の空港でペン達が心配しちゃう。冷やそう?って冷やすもの無い…』
「……………うぅぅぅ」
チャンミンは呻くように泣き、また手で唇をこすりだした。
『駄目だってチャンミン!』
「だって気持ち悪い……」
『とりあえずこのタオルを濡らしてくるから待ってて』
洗面台でタオルを濡らしに行った。
可哀想なチャンミン。
俺が何とかしてあげないと…
ふと洗面台の鏡に映る自分の表情に驚いた。
"僕のヒョンはユノヒョンだけです"
チャンミンの言葉が頭の中で繰り返され俺の口元はダラシない。
チャンミンがこんな目にあったのに喜ぶなんて……ダメな兄だ。
『チャンミン、タオル濡らしたから冷やそう?』
「……………………ごめんなさい」
『ん?いいって』
「そうじゃなくて……気をつけるように言われていたのに…僕…気を抜いてて…」
『チャンミンは悪くないよ。
それに酒を飲んでいたんだから気は緩むものだし』
「………………ヒョン…」
『それよりどう?唇に熱はない?赤みが収まれば良いんだけど』
「はい………冷たくて気持ちいいです」
『よかった』
暫く沈黙が続き少し気不味い。
チャンミンになんて声をかけてあげれば良いんだろう。
気の利いた言葉が出てこない。
大丈夫だよ?
たかがキス?
忘れよう?
どれも違うことぐらい分かる。
「ヒョン…………キスしてください」
ん?
『……………幻聴?』
「失礼な。キスしてくださいと言いました」
『!!!!!!!』
「そんな驚かなくても…いいじゃないですか」
『だって!さっき男にキスされて落ち込んでたじゃん!なのになんで?!!』
「嫌な思い出は上書きすれば良いって言うじゃないですか。だから僕の気持ち悪い唇の感覚を上書きするために、キスして欲しい……です」
『……………彼女とかにお願いしたらいいんじゃ?』
「今はいません」
『………そっか…』
「ヒョンは今彼女いますか?」
『いないけど……』
「だったらお願いします。こんなことヒョンにしかお願いできません」
『……………………なぁ、その"ヒョン"って誰でもいいじゃないの?』
「?????」
『…………………』
あぁ今すっげぇ意地悪なこと言ってる。
可哀想なチャンミンに言うことじゃない。
でも、チャンミンが言う"ヒョン"ってシウォンもヒチョルヒョンも含まれるくない?
「僕のヒョンはユノヒョンだけです。
辛いとき側にいてほしいヒョンはユノヒョンだけです。他のヒョンたちは楽しい時だけ、キスのお願いなんてユノヒョンにだけです」
『…………………』
こんなこと……普段のチャンミンなら言わない。
それほど切羽詰まってる。
キスのおねだりなんて普通弟にされたら、
拒否でしかないんだろうけど、
チャンミンには、
してあげたい。
俺は赤く腫れたチャンミンの唇に触れ、
『後で怒るなよ?』
「怒りませんよ」
『……下手………とか言うなよ?』
「ヒョンが下手とか想像できません」
『何その想像……』
「……ユノヒョン…?」
大きな瞳がウルウルなチャンミン。
上目遣いで俺をジッと見つめている。
『………目閉じて…』
「……はい…」
チュッ
俺は優しく唇を重ねた。
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