Cside















数年に1度ある海外公演が好きだ。
特に事務所のアーティストが一堂に会するSMTOWNはまた少し違ったテンションになる。



僕はSMエンターテイメント所属で東方神起というグループでアーティスト活動をしている。
メンバーはユノヒョンと僕の二人組。

この韓国エンターテイメント業界で二人組ってのは珍しいけど、
人生の半分以上を共にしたユノヒョンは本当の兄のような、もう家族同然なのだ。














『チャンミナめっちゃご機嫌じゃん』

「ふふ、わかります?僕海外公演好きなんですよ」

『そうなの?』

「なんか非日常的というか、僕達のことを知っている方が少ないので街を歩くのが楽しいです」

『確かにそれはあるな』



僕たちは永くアーティスト活動をしている。入れ替わりが激しい世界だけど、運良く僕たちをずっと応援してくれているファンがいてくれる。
特に日本のファンは僕たちをいつも歓迎をしてくれて有り難い。






今日はタイに来ている。
事務所の先輩、後輩たちと一緒のステージはいつもと違った雰囲気で緊張感というより楽しさが勝る。





"チャンミ〜ン久しぶり"

「シウォニヒョンお久しぶりです」

"裸の付き合いをした仲なのになんか言葉が固いなぁ"

「裸の付き合い?」

"風呂一緒に入ったじゃ〜ん"

「それはただ軍生活を共にしただけじゃないですか」

"連れないな〜"



このシウォニヒョンはほぼ同じ時代を生きたスーパージュニアというグループのメンバー。
少しベタベタしてくる傾向があるが、
まぁ軍生活を過ごした仲として話も弾む。
あとお金持ち。




"チャンミン気をつけなよ?"

「何がですか?」

"ここはタイだ。同性カップルも多いんだよ?"

「…………………だから?」

"チャンミン可愛いからゴツい男に襲われそうで心配"

「不要ですね。僕だって日々鍛えているんです。あと可愛いくはないですので」

"…………甘く見ないほうがいいぞ"

「ご忠告ありがとうございます」





バカバカしい。
何が襲われるだよ!
僕は大韓民国の軍隊をも終えた立派な男だ。筋肉だってほぼ毎日トレーニングをして鍛えている。
襲われるだなんてあるわけがない。











『チャンミン、シウォンとそんなに仲良かったっけ?』

「軍生活で一緒だったので」

『あぁそうだったな』

「はい……えっと、なにか?」

『何でもないよ。シウォンとはどんな話を?』

「バカバカしい話です。
タイは同性カップルが多いから気をつけろとかなんとか。僕を女々しい男みたいに言うんです」

『……………………』

「襲われるとか、僕は身も心も男なのに」

『…………まぁ気をつけるに越したことないから、な?』

「ユノヒョンまで!?ひどいなぁ」







ユノヒョンにとっては僕はいつまでたっても弟。
心配性なんだよなぁ。
そりゃあ結成当初は10代だったから心配してくれるのは有り難かったけど、
僕だって30代というかぶっちゃけアラフォー。
いつまでも心配されるのってどうなんだろか。

































コンサートは大盛況で終えた。
やっぱり僕はコンサートが好き。
ファンの皆とアイコンタクトを取りながら、僕たちに熱い応援をしてくれる。
後輩のステージを見るのも刺激になるし、
後輩とコラボステージをするのも、
違った歓声や感覚になれるから好き。




もちろんユノヒョンとのステージは何物にも変えられない楽しさや緊張感もある。
何度ステージを重ねても、
完璧を追い求めるユノヒョンの隣で歌って踊るのは、緊張と責任を感じてしまう。
でもそれは良い意味で。


ユノヒョンに置いてかれないように、
僕は常に努力を重ねる。
ファンの皆さんとユノヒョンに失望されないために…




















プルルルルルルッ


プルルルルルルッ








「もしもし?」

"チャンミン飲みに行こうよ"

「キュヒョンお疲れ。飲み?外出ていいの?」

"ホテルにラウンジがあるって"

「まじか!行こ!!!」




ピッ





やった!
ライブ後のお酒が1番美味しいんだ。
しかも明日は遅めの時間で帰国。
つまり朝ゆっくり寝ていられるってこと。


最高だ!!!







『どした?ウキウキして』

「キュヒョンと飲むことになったんです」

『よかったな。ハメ外すなよ?』

「勿論ですよ。僕だって人の目がある場でハメなんて外しません」

『人の目?キュヒョンの部屋で飲むんじゃないの?』

「あ、ホテルのラウンジで飲むんです」

『え?大丈夫か?』

「何がですか?」

『ほら同性カップルが多いから…』

「なっ?!大丈夫に決まってます!!」

『でも…』

「キュヒョンもいますから!」

『……………そうだな。キュヒョンもいるし大丈夫か。でも何度も言うように…』

「わっかりました!!気を付けますから」

『うん。楽しんで』

「…………行ってきます」






心配性を通り越して過保護すぎだなユノヒョンは。
これじゃあ兄と弟ってよりは、
父親と息子だよ。

息子というか、娘?

えーなんだかなぁ








     




ホテルのラウンジに直接向かうと既にキュヒョンはカウンターで飲み始めていた。



「おまたせ」

"先に飲んでるぞ"

「うん。あ、すみません同じので」

"かしこまりました"





「おつかれ〜」

"おつかれさん"



チャーンッ




ゴクッゴクッ



「あーー美味っ!」

"やっぱライブ後の酒は最高だな!"

「ほんとに!!」




そんな感じでキュヒョンと飲みすすめて大体1時間立った頃、




"あ、電話だ"

「なんだよ彼女?」

"まぁ?"

「出てあげな?」

"悪いちょっと席外すわ"





そう言ってキュヒョンはラウンジを出たところで彼女の電話に出た。



「彼女ねぇ……」


別に彼女の存在が無かったわけではないけど、今はいない。
現状困ってもいなければ、特段欲しいわけでもない。

自分のことで忙しいってのと、
ヒョン……ユノヒョンのお世話って言ったらおこがましいけど、ユノヒョンってなんかほっとけないんだよなぁ。


すぐ部屋散らかすし、
気を抜くと食生活荒れるし。
24時間ダンスと歌のことを考えてるって言っても過言じゃない。




「知らないだけでユノヒョンにも彼女いるかも知れないけど……」



ハァァァ





ん?

なんで溜息?







「変なの……」












ワインをグイッと飲み干し次のお酒をお願いしようとしたら、隣の席に人の気配がした。




「キュヒョン早いな?彼女大丈夫なの……か?って………どちら様?」


横に視線を移動させると、
キュヒョンだと思っていたら全く知らない外国人の男性がキュヒョンの席の前に立ち僕を見ていた。



「えっとそこは友人の席ですが……」


"……………………"



韓国語が通じないのだろう。
英語か?えーと……






"you are cute and beautiful!"

「は?」

"do you have a boyfriend?"

「ちょっ!はいぃぃ?」




キュート?ビューティフル??
ボーイフレンドォォ???




この程度の英語なら正直理解できるけど、
内容的には理解し難い。








僕が脳内フル回転しグルグル考えていたら、
急に外国人の男性が僕の顔を覗き込み、





気がついたら、
















「………………ッ!!!!!!!!」





僕はキスをされていた。




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