Cside















「ゆの様…なぜ………ここが…?」

『チャンミン…』

「あの…」

『チャンミン、チャンミンッ』

「……ゆの様…あの……」

『チャンミン……』




ギュゥゥゥ




駄目だ。
全然僕の声を聞いてくれない。






"仕方ないよ。やっと見つけたんだから"

「……ウニョクさん」

"灰人みたいなユノ初めて見たよ。
だから今は大人しく抱きしめられておけ"

「…………………」





ユノ様が灰人になってたなんて…
僕のせいで…?心が痛い。






"しかしチャンミンが名前を偽ってたなんて。そりゃ見つからないよ"

「…………きっと王室命令で色々探すと思いましたので」

"仕事はするはずだから、すぐに見つかると思っていたけど、パクチャンミンに偽名とは…身分証とか良く通ったな?"

「あ、ちょっと適当な会社でして身分証の提出が不要でした…」

"国としては考えもんだな。家は?賃貸だろ?さすがに賃貸ってなると身分証が必要だと思うんだけど"

「あ、社宅なんです」

"なるほどな。だからなかなか見つからなかったのか……たく手間かけさせないでよ"

「…………すみません」





『チャンミン…』

「あの、ユノ様……」

『チャンミン帰ろう?俺たちの家に』

「………………」

『……チャンミン?』

「……………ユノ様あの……」




"ちょぉぉぉっっっとすみません!!
頭の中全然整理出来てないんですけど!"

「ドンウさん…」

"チャンミンさんってあのチャンミンさん?王様の恋人のチャンミンさんってこと?!!"

「…………………」

『そうです。チャンミンがお世話になりました』

"あ、いや俺は別に…普段はばーちゃんが"

『お婆さん?』

"てか、ばーちゃんすげー大正解じゃん!"

『????』

「あの……ひとまずリビングへ行きませんか?お婆さんをお呼びしますので。きっと寝室にいらっしゃるかと」

『あぁ…』

「………あの、離していただかないと…//」

『………………このままで』

「えっと……さすがに抱きしめられたままだと移動ができないので…//」

『………………』



僕を抱きしめる腕の力が緩まなくて焦る。
さすがにこのまま移動ってのは
物理的に無理だ。



『離したら、またいなくなる気がする』

「……………ユノ様」

『俺の側からいなくならないでくれ』

「…………申し訳ございませんでした…」



お辛い表情のユノ様に、
心臓がナイフで切りつけられたように痛い。
僕は取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。




「いなくなりません」

『……本当か?』

「信じて下さいだなんてどの口がと思われるでしょうが、今は本当に信じてください」

『………………』





ギュッ




「これでよろしいですか?」

『…………あぁ、』



初めて僕からユノ様の手を握った。
少しホッとなさったユノ様の表現に僕は安堵した。

ごめんなさいユノ様。
















「こちらは家主のお婆さんで、私が家事代行として通っております。この方がお婆さんのお孫さんのドンウさん。たまたま休暇でいらっしゃっています」

"こんにちは王様"

"まじでイケメン!チャンミンさんすごいよ"

「………あははは…
お婆さん、ドンウさん。こちらは東方の國の王様とボディーガードのウニョクさんです」

"お邪魔しております"

『…………………』




ユノ様とウニョクさん。
対面でお婆さんとドンウさん。

ユノ様は黙ってお婆さん?を見つめていらっしゃる。




『ご連絡をしていただいたのは、お婆さんですね?』

"なんでもバレちゃうんですねぇ"

「え?!お婆さんが連絡って?」

"家事代行をしている方がチャンミンさんではないかと連絡をしたまでです"

「………………どうして」

"そんなの愛し合ってるのに別々だなんておかしいじゃない"

「………お婆さん…」

"ばーちゃんボケてるわけじゃなかったのかよ…"

『すごく助かりました。本当にありがとうございます』

"王様が頭なんて下げないでくださいよ"

『王とか関係ないです。感謝するときは立場など関係なく頭を下げるものです』

"……素敵だねぇ。チャンミンさんは良い男をゲットしたもんだ"

「お、お婆さん……////」

『あーはーはーありがとうございます!』





ユノ様の大きな笑い声が部屋中に響き渡った。
この笑い声…久しぶりだな。
アーモンドアイが弧を描いているような笑顔がとても綺麗で、
あぁ、僕はこの笑顔を危うく失うところだったんだと自分のバカさ加減に落ち込んだ。





『チャンミン帰ろう』

「…………でもあの…仕事を途中で放り投げられないですし…」

"勤め先には退職の旨既に伝えてきた"

「え?!」

"王様の執事だと伝えたらすぐに了承は得られた"

「そう…なんですか…でもウニョクさん…僕は」

"そもそも執事って仕事を途中で放り投げたくせにね"

「!!!すみません!!!!」

『戻りたくないのか?』

「…………………そういうわけでは…」




だってお婆さんは僕がいないと家事が大変だ。
今はドンウさんがいるからまだ大丈夫だろうけど、ドンウさんももうすぐお仕事に戻られる。
それにお婆さんは1人だと寂しいんじゃないだろうか……




"たまに来てくれるかいチャンミンさん?"

「…………お婆さん…?」

"時々来て私の話を聞いてくれるだけでいいんだけどね"

「…………はい!僕でよろしければ!!」

"ふふふ"













「では、お世話になりました」

"こちらこそチャンミンさん"

「来週また来ますね」

"おやおや早いこと"

「ふふ、無理に洗濯とか掃除はしないでくださいよ。溜めてていいですからね」

"はいはい。ほら早く行きな。
王様をお待たせするんじゃないよ"

「…………はい。本当にお世話になりました」




こうして僕の数ヶ月の家出?は幕を下ろした。

帰りの車の中では、
ユノ様と手を繋ぎながら、ウニョクさんからのお説教を聞かされていた。


チラリとユノ様に視線を動かすと、
甘ったるい表情で僕を見ていらしたから咄嗟に視線を戻してしまった。



グイッ







急にユノ様に顎を掴まれ、
気が付いたら





特大のキスをされてしまった。


あ、久しぶりのユノ様の唇。
柔らかくポテッとした唇が僕の唇をハムハムと包み込んでいる。

甘く熱い唇が、
気持ちいい。








"俺の前でキスなんてするな!"





「ウニョクさん…////!!!!!」

『仕方ないだろ今まで我慢してたんだから』

"ふざけんな!"



耳がキーンッとなってしまうほどの大声で怒られてしまった。





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