Cside


















コンコンッ





「チャンミンです。突然申し訳ございません」

"入れ"

「失礼します」





僕は緊張しすぎてノックする手が震えていた。
だって今から辛い選択をするんだから。






"どうした?"

「お父さん……勝手で申し訳ございませんが、王様の執事を辞めようかと……」

"何を言っておる。辞める辞めないなどチャンミンの気持ちでできるものではない"

「重々承知しております。
ただ、王様のお気を悪くさせてしまい…すぐに王様から執事を降ろすようお話があるかと存じます」

"………………チャンミンが?…一体何をしたのだ?"

「それは……申し訳ございません。お話でき兼ねます」




僕はユノ様にお気持ちを伝えた夜に、
お父さんの部屋に行き執事を辞める意思を伝えた。


当然、代々王族の執事をしていたシム家だから執事を辞めるだなんて通用しないことぐらい十二分にわかっていたが、
ユノ様から直接、やめてほしいと連絡がくるだろうと思い先にお父さんに伝えたまで。




"今、王様は大変な時期だ。
TVXQ連合も控え、お父上も余命宣告されている。執事のチャンミンが支えなくてどうする"

「お支えしたい気持ちは勿論ございますが…私がしたことで王様はきっと……」

"…………………"

「ウニョク様もいらっしゃるので」

"王様の執事兼ボディーガードをウニョク君1人に任せるという無責任なことをチャンミンは申しているのか?"

「決して無責任とは……」

"私には無責任としか思えない"

「………………申し訳ございません」





難しいことを言っていると自覚はある。





でも、












"わかった。チャンミンがそこまで言うのなら…"

「ありがとうございます!!」

"最後まで話を聞きなさい。
王様の執事を辞めることをシム家から申し上げることはできない"

「………………」

"納得はしていないが、ウニョク君と立場を交代することはできる。
だからウニョク君に事情を説明しよう"

「…………ウニョク様とお立場を交代…?」

"今、王様の日常の執事をチャンミンが担当し、学校生活や登下校のボディーガードをウニョク君とチャンミンで担当しているな?それを交代するということだ"

「…………………」



それは僕にとっては良くも悪くもある内容だ。
ユノ様のお側にい続けられるという喜びと、ユノ様に嫌悪の眼差しを直接受けるという地獄。


ただ…僕の我儘をお父さんは納得はしていないが受け止めてはくださった。
これ以上下手なことは言えない。



それにユノ様から辞めるよう話が出たら、
否応なしに辞めることになるのだから。
きっと少しの間だけ。



「そのようにしていただければ幸いです」

"…………………チャンミン、最後にもう一度聞く。一体何をしたというのだ?"

「…………申し上げることがてきません」


ハァァァ




お父さんの大きな溜息。
きっと僕に失望なさったはずだ。






"ウニョク君、悪いが私の部屋に来てくれるかな?"

"申し訳ないね"



お父さんは内線電話でウニョクさんを部屋へと呼び30秒くらいかな?ウニョクさんがいらした。




"ウニョク君申し訳ない"

"いえ……滅相もございません"








そうして、お父さんからウニョクさんへ説明をしウニョクさんは僕の顔をジッと見つめた。




"私は構いませんが、チャンミン…本当にそれでいいの?"

「はい…そのように…」

"…………………わかった。では明日よりチャンミンと交代します"

"申し訳ないね"

"いえ"

「ウニョクさん、ありがとうございます」











バタンッ




"……………意気地なしだなチャンミンは"

「え?」

"王様から返事を聞いていないくせに、勝手に判断しちゃってさ"

「!!ウニョクさんご存知なんですか?」

"部屋から追出すなんてチャンミンも酷いよ。王様のお気持ちを考えないと"

「………………」

"本当に……なんで2人揃って鈍感なのかさっぱりだよ"

「????」

"じゃ、明日の車の準備とか王室での作業お願いね"

「あ、はい。ウニョクさんも王様のお迎えや勉強など宜しくお願いします」

"はーい"




そう言ってウニョクさんは自室へと戻られた。

ユノ様…僕がお気持ちをお伝えしたことウニョクさんにお話なさったんだ…
それって気持ちが悪かったから?
嫌悪の気持ちで一杯だったから?


そうじゃなきゃ態々ウニョクさんに話すわけがない。






グスッ








わかっていたことだけど辛い。




















Yside





『今日もウニョクか?』

"今日も明日も明後日も私です"

『は?』

"昨日付けで私の業務とチャンミンの業務を交代することになりました"

『どういうことだ?』

"私は何も、ただチャンミンからの申し入れとのことです"

『チャンミンから……』

"安心してください。
完全に執事を辞退したわけではなく、今までの私の業務と交代したまでです"

『………そう、か』







昨日は風邪で迎えに来れなかったチャンミンも、今朝は扉を開けたらいつもの可愛い笑顔があると思っていた。

でもそこにはウニョクしかいなくて、


チャンミンとウニョクの業務を交代?





なんでだよチャンミン!












「おはようございます王様」

『…………おはよ』

「……………………おはようございますウニョクさん」

"おはよう"




そんなありきたりな挨拶だけを車内で交わし、俺達は沈黙のまま学校へと向かった。






チャンミンは至っていつも通り。
いつも通りすぎて、昨日の告白がなかったかのよう。

あれか?
愛してるなんて、なんかの間違いなのか?
今更訂正できなくなったとか?




それとも……

無かったことにしてほしい……とか?












"ユノ〜おはよ"

『あぁ、おはよ』

"ウニョクもチャンミンもおはよ"

"おはよー"

「おはようございます」


教室に入ってからも変わらずクラスメイトと会話をする。



授業中もいつも通り真面目に受け、
俺が先生にあてられるとこっそりとヒントをくれる。
答えじゃないところが通常運転のチャンミン。
移動教室だって俺の一歩後ろを歩き、
掃除の時間も誰も気付かないような場所を隅々まで掃除をしている。



ただ今日は……朝の挨拶をしてから放課後まで1度も目が合っていない。


いつもはボディーガードも兼ねているから常にチャンミンの視線を感じることができていたのに、



今日は1度も合っていない。







『なんだよ……俺のことを見ろよ』
























"チャンミン!痒み止めの薬とか持ってない?"

「え?急ですね」

"ほらここ見てよ、プクッて赤くなってるだろ?"

「本当ですね、冬だというのに…
ちょっと待ってください塗り薬を持ってますので」

"さすがチャンミン!"



さぁ今から帰るって時に、
クラスメイトの奴がまたもチャンミンに薬を求めてきた。
しかも絆創膏野郎と同じ奴じゃねーか。
これは…チャンミンに気があるか?


チャンミンもチャンミンだ。
そんな絆創膏野郎に微笑みながら受け答えなんてしやがって。





「ありました、どうぞ」

"チャンミン塗ってよ、ここ塗りにくくて"

「え………あ、その」

"だめ?"

「そういうわけでは………」





チャンミンは絆創膏野郎に絆創膏を貼ったことを俺が嫌だと言ったことを思い出したのだろう。


チラッ


今日初めて目があった。
恐る恐る俺にお伺いを立てているって感じの視線。



『いいよ、塗ってやれ』

「………承知しました」


チャンミンは少し安堵した表情になり、
クラスメイトに薬を塗ってやった。




チャンミンの人差し指が絆創膏虫刺され野郎(酷い)の赤く腫れた皮膚に触れている。
ただそれだけのことなのに、







無性にイライラする。













はっ!!!!!



チャンミンがユノ以外に優しくしていて嫉妬しただろ?


俺だけのってチャンミンはユノのものなの?


王様の反応は素直すぎる。チャンミンのこと好きだって顔に書いてあるようなもの。







ウニョクに言われた言葉が脳裏を過った。
ちょっと待て、これって本当に俺はチャンミンのこと…好きみたいじゃねーか!







"抱きしめて、キスしてみたらわかるよ"


ウニョクが言ったバカみたいなことだけど、






『試して……みる…か?』




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