Yside














『チャンミン……これ…俺だよな?』





チャンミンが俺に背を向け、
パタパタと手で顔をあおいでいるすきに、
申し訳ない気持ちではあったがペンダントの写真を見た。



そこにはチャンミンの父親の写真が入っていると思っていた俺にとって、
予想外過ぎた、まさに青天の霹靂。




俺の……写真?








「王様…あの、」

『俺が王位継承したときの写真だよな?』

「……………………」

『これは……忠誠心?』

「忠誠心……もございます」

『も?』

「……………………」




黙り込むチャンミン。
ずっと背を向けたままだったが、俺の方へ体を動かしゆっくりと視線を俺に定めた。





ドキッ



『チャンミン…』

「王様…あの、」




驚いた。
振り向いたチャンミンの顔が赤く染まっていた。


瞳が少し艶めき、
表情もなんとも形容しがたい表情。
あー当てはまる言葉が…わかんねぇ!


赤く染まった頬は、
熱のせいではないような、朝見た時とは違う紅さ。


さっき過って倒れた際に感じた、
白く艷やかな肌とはまた違う。



触れたい。







そう思わされた。










『熱が上がってきたのではないか?
顔が赤い。体調不良だというのに悪かった』

「え?」

『この話はまたにしよう。
まずはチャンミンの体調が1番だから』

「あの、王様!」

『ん?』

「…………………忠誠心だけではないという事だけは知っていただきたいです……」

『それは……どういう…』

「……………………」

『わかった』








バタンッ
















わっかんねぇぇよ!!!



何が『わかった』だよ。
何ひとつわかんねぇつーの!









『なんであんな瞳をするんだ?
あんなの、まるで……俺のこと……』



フルフルフルッ




『そんな訳ない。チャンミンだぞ?
真面目なチャンミンが…俺を?
あーーーー!考えても埒が明かない。チャンミンの体調が戻ったらもう一度確認すればいいだけ。そうそう!』






今日も宿題があるんだから、
さっさと終わらせて……お、チャンミンもいないことだしゲームでもしよ♪













ガチャッ




"チャンミンの様子はいかがでしたか?"

『!!!!びっくりした……
ウニョクか、驚かせないでくれよ』

"………………失礼しました。
で、チャンミンに聞きたかったこと聞けましたか?"

『あ、聞けてない……』

"何やってるんですか王様"

『ちょっと色々あったんだよ』

"…………素直には…なってないんですね?"

『素直……?』





ハァァァ……






嫌味ってぐらい大きく溜息をしたウニョク。





"別に私が介入することでもないのでいいですけど王様、チャンミンについてちゃんとお考えになられたらいかがですか?"

『は?』

"目の前で色々気を使うの嫌なんですよ"

『意味がわからん』

"チャンミンとは昔からのよしみなので私はチャンミンの味方です"

『は?ウニョクは俺の執事兼ボディーガードだろ?』

"職務ではなく友情を選ぶとなったらチャンミンですね"

『俺との友情は?』

"…………今から申し上げることは王様の友人として申し上げます"

『お、おぅ!』

"どーー考えてもユノが気付かないのが悪い。いや、チャンミンも気付いていないのも悪いけど、ユノの方が自分にも相手にも鈍感!よってユノの方が悪いし俺はチャンミンの味方!以上!!"

『…………………』

"……失礼しました"

『いや………ありがと?』

"ではチャンミンに代わって、宿題をし終えるまで私はお部屋におりますので"

『え?ゲーム…をし……』

"………チャンミンに申し伝えますよ?"

『…………宿題します』







ウニョクに気負けした。
久しぶりにあんな言葉遣いを受けた気がする。




チラッ



"なんですか?ゲームは駄目ですよ?"

『………たまにはさ、さっきみたいに気楽に話してほしいんだけど』

"………………"

『俺ら友達じゃん?』
 
"…………たまに…ですよ?"

『ありがとな!約束だからな!!』



やっぱりさ、気楽に話せる奴がいないとやっていけないよな。




『…………でさ、鈍感って俺のこと?』

"王様以外ありえませんね"

『…………そう……か……』

"手を動かしてください"

『はい』






どうやら俺はウニョクいわく鈍感らしい。
何に対して?
誰に対して?


ウニョクの言葉から、
チャンミンに対して…ってことなんだろうけど、



チャンミンの何に?










『やっぱりチャンミンは…俺のこと?』






だってあの瞳。
あの頬の紅さ。


そして写真。












『無理!やっぱ気になる!』


"ちょっ!王様どちらへ?!"

『気になって宿題どころじゃないから、
チャンミンの部屋に行ってくる!』

"…………承知しました"







違ったら超絶自意識過剰なんだろうけど、
モヤモヤするぐらいなら一層直接聞いてみよう。









コンコンッ



『チャンミン、俺だ。
体調悪いときに何度も悪い』

"……………………"

『開けてくれないか?』






















Cside











絶対バレた!!
何バカなことをしてるんだよ僕は!


熱で思考回路おかしくなった?




ううん。
ちょっとだけ、ムカついた。
ペンダントに写真まで入れてることがバレたのに、なのに忠誠心?


もちろん忠誠心はある。
東方の國で生活をしている以上、王族に対して忠誠心は持っている。


でもそれ以上に、ユノ様へのお気持ち…全然伝わっていなかったんだ。




「伝わらないようにしてたくせにね…」



自分勝手だな僕は。
この邪な恋心がバレないよう日々心がけていたのに、
手の届く距離にいればいるほど気付いてほしいって欲が芽生えていたんだ。






手なんて届く身分でもないのに。






欲深く、そして汚れ。














グスッ





「泣く資格さえないのにね……」






コンコンッ







自己嫌悪に陥っていると、
扉の向こうからユノ様がもう一度いらした。
いつもより少し低い声で名前を呼ばれて、
あぁなんてセクシーな声なんだってこの期に及んで、そんなことを考えてしまうん自分にも溜息さえ出てしまう。









ガチャッ



「……………はい」

『ごめん。気になることがあったらすぐに聞きたい性格なんだ』

「……………………」

『写真……の真実が知りたい』

「……………………」

『中に入れてくれないか?』

「……………どうぞ」

『ありがとう』




もう逃げられない。
僕はそう悟った。



自分から仕掛けたくせに。











「お茶をご用意します」

『大丈夫だ』

「…………………」

『身体辛いならベッドに横になってていい。でも話はしたい』

「……………大丈夫です。
こちらの椅子にお掛けくだはい」



そう言い、そう広くはない僕の部屋にある椅子をベッドの横につけた。

僕がベッドに腰掛け、
対面にユノ様。












気まずい雰囲気が1分ほど流れた。
僕は視線を下にしていたから、
ユノ様がどういう表情をなさっているのか、全くわからない。









『俺の写真を入れていた理由に忠誠心以外があるような言い方をしていたけど、
その理由を話してほしい』





少し低めのユノ様のお声。



「…………………」

『…………………』

「…………………」

『……………チャn』

「僕は今まで彼女がいたことがないと、
お話したことがございますが、理由を覚えていらっしゃいますでしょうか?」

『………あぁ、覚えているよ。
好きな…女性がいるから……と』

「概ね合っていますが、
好きな女性ではございません」




ゴクッ






ユノ様の喉がなった。








「私がお慕いしている方は……
女性ではなく、王様………でございます」

『…………………それは忠誠心では?』

「お気を悪くなさるかと存じますが、
私は…………王様を……愛しております」

『愛って………』

「……………申し訳ございません。
理由を申し上げましたので、よろしいでしょうか」

『え?』

「風邪が移ってはいけませんので、
そろそろ自室へお戻りください」

『ちょ!チャンミンッ』

「申し訳ございません」

『チャンミン!』

「申し訳……………ございま、せん」グスッ

『え?ちょっ、おい!チャンミンッ!』

「申し訳ございません!!」





バタンッ






『チャンミン!』



『チャンミン!!』



『チャンミン!!!』





ドンドンドンッ






僕は強引にユノ様の背を押しながら、
部屋から出ていってもらった。


言い方を悪くすると、
追い出したってこと。













ユノ様も扉を叩きながら僕の名前を呼んでいたけれど、
すぐに呼ばれることもなくなり去っていったのがわかった。








「ユノ様……今までお側にいることができて幸せでした」





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