Cside








見られた…




今までずっと秘めていた…僕の秘密。












『なぁ?写真に写ってんのって俺…だよな?』

「…………………」

『しかも、俺たちが付き合う前…じゃないか?』

「…………………」

『なんで付き合う前の俺の写真を持ってんの?しかもなんで飾ってなんて…』

「……………そんなの、」

『ん?』

「そんなの、ずっとユノヒョンが好きだからに決まってんじゃん!」

『……チャンミナ…』





僕は、ユノヒョンが僕に話しかけてくれたあの日よりもずっとずっと前から、



僕の視線はユノヒョンを追っていた。



































大学に入学してからほぼ毎日のように独占していた中庭のベンチ。
そこで本を読むのが僕の癒やしだった。


大きな桜の木がすぐ隣りにあって、
程よく影を作ってくれる。
風が吹けば葉と葉が揺れサーッサーッと奏でる音。




そんな僕の癒やしの時間にある日、
1つのサッカーボールが足元へと転がってきた。








『ごめーん、そのボール投げてもらえる?』

「………………」キョロキョロッ





僕に言って…んのか?






『君だよー!』

「………………」

『悪いんだけどさ投げてもらっていい?』

「………………」



僕は球技が苦手だ。
彼との距離は推定30メートル程。
この距離を投げるなんてきっと無理だ。
投げて届かなかったり、
全然違う方向に飛んでいってしまったら、
笑われるかもしれない。



『……………え、』

「確かにお渡ししましたからッ」

『あーはーはー、うん!ありがとう♪』

「…………………」ドキッ






僕は笑われたくなかったから、
ボールを投げずに転がした。
そう、ボーリングのように。


すると知らない彼は僕をバカにした笑いじゃなくニカッとした笑顔で大爆笑をした。







"ユノー!遅えよ!"

『悪い!今行くからー
じゃあありがとうね♪』

「…………………いえ」














「なに…?ボールを転がしただけで…
あんな笑顔をするの?」



遠くてもわかった。
彼は笑顔がすごく素敵だってこと。




ドキッ







ん?



ドキッ




ドキッ








ちょっ?!えっ何?!!





ドキッ



ドキッ



ドキッ
ドキッ




ちょっ、なんでドキドキしてんの?
何に?理由がわかんない!







そんな不思議体験をした数日後に僕は気付いてしまった。


彼は頻繁に中庭で友人たちとサッカーをしている。
女性はいなくて同性とばかりつるんでいるようだ。



そしてもう一つ気付いてしまった。








僕が毎回彼を目で追ってしまっているということ。

あれ以来彼と話すこともないし、
彼の年齢も専攻科目も知らない。
ただただ目で追う。

本を読んでいるようで、全く頭に入ってこない。
彼の動きをバレないように見ている。
顔を本で隠しながら。


でも彼の笑顔を見ると何故か心が暖かくなる。





















「今日は風が強いな」



いつものようにベンチで本を読んでいるけど、風が強くて読みづらい。




ザーッザーッ





「桜ももう終わりの時期かな」


桜の花弁が風で舞っている様を見つめていたらその先に彼がいた。
変わらず友人たちといる。


変わらない笑顔と桜の花弁のコントラストが言葉では言い表せない程素敵だった。





カシャッ






気付けば僕はスマホのカメラで彼を撮ってしまっていた。




「盗撮じゃん…」




でも彼にバレなければ大丈夫….。




「笑顔…素敵だな……」



スマホの画面に向かって話す僕はものすごく滑稽だ。





そう、これが僕の秘事。








その数ヵ月後に思いもよらないタイミングで彼が僕に話しかけてくるなんて誰が予想できただろうか……



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