Cside
ﾊﾟｼｬｯﾊﾟｼｬｯ
"落ち着いたか？"
「キュヒョン……」
"何も叫ばなくてもいいだろ？"
「驚いただろ？」
"何が？"
「だから僕が…」
"いやいや、もとは俺が吹っかけたわけだし。それにチャンミンの気持ちに気付けた俺って凄くない？"
「引かないのか？」
"だから、俺はチャンミンの気持ちに気付いたわけ。つまり引いてもないし、そもそも引く理由がない"
「キュヒョン…」
いつもは憎たらしくて、
腹の中ブラックのくせに、
今はキュヒョンの言葉が心に染みる。
そうして僕は顔を洗ってスッキリし、
仕事へと戻った。
部長はこんな僕に何も声をかけることなく、
いつも通り接してくれて、
そんなことも今の僕には有り難かった。
"でさ、とっくって何？"
「とっく？」
"叫んだじゃん"
「……………あ、うん。」
その日の夜に僕はキュヒョンと飲みに手軽な居酒屋に来た。
お互い生ビールで"お疲れ〜"とか言いながらグビグビ飲んでいたところに、
さっきのキュヒョンからの問いかけ。
まぁ、その話になることぐらい百も承知だったんだけど、
開始早々その話題ってのもなぁなんて渋っていたら、
"チャンミンが言いたくないなら別にいいけど？"
「…………………」
"気になならないって言ったら嘘になるけど、人の恋愛に土足で踏み込む気はない"
「キュヒョン……」
"言いたくなったら言えばいい"
「いつも土足で踏み込んでくるくせに…」
"前言撤回。今すぐ吐け！"
「……………それでこそキュヒョンだな」
ﾊｧｧ
キュヒョンは"折角の俺の善意を無駄にしたな"
なんてため息混じりで独り言か僕に言っているのか分からない声量で呟いていた。
僕は全てをキュヒョンに話した。
大学時代に付き合っていたこと。
ユノヒョンから別れを切り出したこと。
僕が意図的にこの会社に入社したこと。
それから
まだユノヒョンを好きなこと。
キュヒョンは唖然としてた。
そりゃあそうだよ。
想像していたストーリーと違ったんだから。
それでも黙って僕の話を聞いてくれているキュヒョンに心底感謝した。
「驚いた……でしょ？」
"まぁ、そりゃな"
「……………狂ってるよな？」
"何が？"
「え？いやだから、
僕は振られたのにまだ好きで、その上会社にまで来たんだぞ？まるでストーカーじゃん」
"まぁ、そう考えられなくもないけど。
でもものは考えようじゃん？"
「？？？？」
"良く言えば一途？"
「………………悪く言えば…？」
"好きすぎる？"
「……………なんだよそれｯ！」
"照れんなよーwww"
キュヒョンめ、
僕のことを馬鹿にしてる。
一途で好きすぎるだなんて、
僕のユノヒョンへの想いって…
ﾎﾞｯ!!!
なんだか急に顔が熱くなってきて僕は気を紛らわす為にも手でパタパタと扇いだ。
キュヒョンはビールを片手に僕のことをニヤニヤとうっざい顔で見てくるから、
めちゃくちゃ恥ずかしくなってメニュー票で顔を隠した。
くそっ！恥ずかしい！！！
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