Cside









"チャンミン知ってる?"

「なんだよ急に」

"伝説の営業マンが帰ってくるって!"

「え…いつ?」

"来月だったかな?"

「来月……」

"厳しい人って噂じゃん。目付けられないようにしなきゃっ!"

「厳しい人じゃないよ。
すごく心の温かい人。勘違いするな」

"え?チャンミンどういう…"

「仕事に戻れよ」

"あ、あぁ…じゃあまたな"

「ん、」







僕はシムチャンミン。
不動産会社に新入社員として入社してから早5年。
僕ももう28歳になった。


今のは同期で営業部のキュヒョン。
本人は向いてないと言っているが、口が達者で営業としてそこそこの成績を出している。




僕はというと審査部に所属。
営業部が結ぶ新規案件の契約書等に不備がないか、後々面倒なことにならないように契約書の文面を審査する部署だ。



細かい作業は得意な方だから、
審査部は僕に向いていると思っている。













そんなことよりも、







「帰ってくるんだ……ヒョン」
































『お久しぶりです!あ、はじめましての方もいらっしゃいましたね。
日本支社より戻りましたチョンユンホです。今までの経験を活かしまたソウル本社でも活躍できるよう精進いたします』

"堅苦しいぞ〜"

『僕真面目なので許してくださいw』

"どの口が言うんだか"

『あーはーはーw
そういうことで皆さんよろしくお願いします』

















"なんか想像と違うんだけど"

「…………………」

"てか、あのスタイルと顔はずるいよな。
せめて性格は悪くいてほしいってのに何?好青年が全面に出てるじゃん。
チャンミンもそう思うだろ?"

「…………………」

"おいチャンミンってば!"

「え?あ、何?なんか言った?」

"なんだよボーっとしちゃってさ。
自分よりイケメンがいてショックだったか?大丈夫だよチャンミンとチョンさんはタイプ違いのイケメンだから"

「なにそれ」

"羨ましいってこと。
なー今日飲みに行こうよ"

「…………東方商事との契約書差し戻したと思うけど?期日迫ってんだろ?」

"うぅ、そうだった。
今月中に契約締結したいんだった"

「飲んでる場合じゃないだろ?」

"…………わかったよ"





あからさまに肩を落とし
キュヒョンは自分のデスクへと戻っていった。



あの人のいる…
営業部へと。


























〜5年半前〜







「日本?」

『うん』

「どれくらい?」

『わかんない。
半年かもしれないし、3年…ないしはもっとかも』

「…………行かないって選択肢は…ないの?」

『仕事だよ?あるわけないじゃん』

「…………離れたくない」

『……………………』

「ヒョンは平気なの?僕と離れて…」

『……………………』

「…………平気……なんだ…」

『チャンミナ…』




















『別れよう』















大学に入学してすぐの頃、
なかなか気の合う友達に会えず中庭で本を読んでいたら、



『いつも何の本を読んでんの?』




って話しかけてくれたヒョン。
そっから僕たちが恋人関係になるのにそれほど時間はかからなかった。








ヒョン…



チョンユンホ。
大学の先輩で年齢は3つ上。



僕が本を読んでいると、
決まって僕の隣に座って話しかけてくる。
僕が本を読んでいるのだから邪魔しないでほしいと訴えても、

『チャンミナのことが知りたいんだよ』

なんて人タラシ丸出しの笑顔で言ってくるもんだから、
僕もすっかりハマってしまった。






ヒョンが就職して営業として毎日遅くまで仕事をしていることは知っていたから、
僕は口を出さずただただ応援をしていた。



そんなある日、
突然ヒョンから日本支社への転勤話をされた。



頭が真っ白で、ヒョンが何を言ってるのか全然頭に入ってこなかった。



でも、







別れよう







金槌で殴られたような感覚になったことは覚えている。
その後、どうやって話を終えたのか、
どうやって家に帰ったのか、
全く記憶がない。


とにかく衝撃的で、ショッキングな出来事だった。










その上、神様は僕に試練を与える。




それはヒョンに驚いてほしくて内緒で受けたヒョンが勤めている会社の最終面接。


内定の連絡をもらってしまった。





悩んだ。
だって来年の春にはヒョンがいない。
だって元恋人と同じ職場なんて気まずい。




なのに僕はどうかしてたんだ。














「内定ありがとうございます。
ぜひお受けいたします」




と応えてしまっていたのだから。









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