Yside











カシャッ







カシャッ










カシャッ
カシャッ











『………………ん……?』






頭上で何か音がしたから、
重い瞼を仕方なく開く。







俺の目に飛び込んできたのは、
チャンミン………ではなく、
カメラのレンズ。






『………ん、ナニ…?』

「あ、動かないで!」

『…………………?は、撮るんじゃねーよ』

「えーせっかくのユノさんだったのに」

『せっかくのって意味不明なんだけど』

「口を開けてマヌケな顔で寝てたから」

『今すぐ消せ!』

「むりーでーすww」





『ふざけんなって』

「ふざけてないですよ。
どんなユノさんも格好いいからカメラに収めたくて」

『…………さっきはマヌケって言っただろ』

「マヌケなユノさんも格好いいです」

『意味不明…』

「僕だけのユノさんですから」

『………………』





まぁ、別に誰かに見せるとかじゃねぇからいいっ言ったら言い…けど……





















"俺は朝帰りを推奨するために定時で上がらせたわけじゃないぞ?"

『…………朝帰りだなんて…』

"どう見ても昨日と同じ服で、
髪はいつもとは違ってストレート。ワックスでセットもしてない"

『………そんなこと…男なら普通…だよ』

"あと、誰が見ても幸せオーラ放しているユノを見て朝帰りしたなんてことは容易に想像できる"

『…………名探偵…』

"余裕だな"




ホジュニヒョンの言うとおり、
チャンミンの家に泊まりゆっくり朝飯を食ってたら出社ギリギリになってしまった。

夏でもねーし、
下着以外は昨日のまま。





そしたら名探偵の如く、ホジュニヒョンに当てられたってわけなんだけど。








"幸せなら許す"

『はい、幸せです』

"惚気けんな"

『どっちだよ!』





こうしてホジュニヒョンにイジってもらえるのも正直悪くはない。
ま、ホジュニヒョンには絶対に言えねーけど。









































"美しき貴公子に存在した美しき彼氏"







あれから数日後に突然舞い込んできた週刊誌の見出。
そこにはチャンミンの顔写真とともに、
どう見ても俺の顔に目元が線で隠された写真が掲載されていた。






えーと、






これってチャンミンの初スキャンダルってやつ…だよな?






別にテレビで特集を組まれているわけでもなければ、
まだまだ世間の認知度は低い。
それでも週刊誌の半面がチャンミンと俺(たぶん)とのことが書かれている。





合っているものもあれば、
どっから湧いたって思うほどの嘘も書かれている。












"おーおーユノヤ、週刊誌デビューか?"

『望まないデビューですよ』

"いい写真じゃん"

『線で隠された顔をよくもまぁ"いい"写真だなんて……ヒチョルヒョンぐらいですよそんな風に言うの』

"そうか?それでも俺様には負けるけどな"

『争ってません』

"つまんねー奴だな"



どうやって仕入れたのか、
真っ先にヒチョルヒョンが俺に電話をかけてきてくれた。




『どうやって知ったんですか?
ネットニュースにもなってないのに』

"チャンミンが自ら話してきたぞ?"

『そう……ですか』



いくら従兄弟だろうが、
いくら将来義理の弟になろうが、
チャンミンにとっては大切なヒョンなんだってことを改めて思い知らされた。




いいことなんだけど。






なんかこー胸のあたりがモヤモヤする。











"ユノが美しいって表現されてて喜んでたぞ?"

『誰が?』

"チャンミンしかいねーだろ"

『嘘ですね。チャンミンなんて貴公子って書かれてましたよ』

"自分のことはどうでもいいんだろ?
いつもいつもユノさんユノさんって嫌になるよ"

『……………』

"あと、"

『…………??』

"申し訳ないって"

『目を線で隠されてたから?』

"逆だよ。
線でしか隠されてねぇんだ、ほぼ顔を晒されたと同じだって"

『………いやいや、俺の写真をデカデカと展示しといて言います?』

"あれは横顔じゃん"

『…………………そぅですけど』

"晒され方が違うだろ?"

『…………………』





確かに、週刊誌に目を隠され俺は犯罪者のような晒され方だ。
チャンミンの写真で俺は世間に顔を知られたわけだが、
あくまで作品。
悪いことをしたとかではない。

そういう意味では週刊誌に載るってなんか……嫌だな。
でもチャンミンなんて顔も名前も週刊誌に載り、男の恋人の存在まで書かれてんだ。
しかも文面的には憶測の域。





『よく憶測で記事なんて書けるよなー』

"商売なんてそんなもんだろ。
ジャーナリズムを持った奴なんてミジンコほどもいねぇよ"

『………………』





"俺様なんて他人の男がシム製薬の次期社長だなんて書かれ方だならな。
他人じゃねーのにな!"

『………………(そこ?)』

"まぁ、まだチャンミンがシム製薬の長男とはバレてねぇみたいだが…
時間の問題かもな。
バレたときは……色々と面倒なことが起こるだろうし"

『………………』




ヒチョルヒョンの言う通り。
チャンミンがシム製薬の御曹司だなんてバレ、その上次期社長が長男であるチャンミンではなく従兄弟がなるなんてことが世間に知れたら、
本当に好き勝手書かれるんだろうな…



ゾクッ





想像しただけで憂鬱になる。








チャンミンは大丈夫なんだろうか。











"万が一バレたら、ユノヤ
お前がチャンミンを支えるんだろ?"

『………………ヒョン…』

"今から怖気づいてんのか?"

『……愚問です。
チャンミンは俺が支えるだけでなく、
俺が守るんです。すべての敵から』

"…………………"



ヒュ~



"俺様に惚気けてねーで、
チャンミン本人に言ってやれー"

『………………』

"心の中で想ってるだけじゃ伝わんねーからな"

『…………はい』














チャンミン…今何してっかな?
今日は早朝に週刊誌の件で電話が来て以来、連絡を取っていない。


『いつも頻繁に連絡しあってるわけでもねぇし…』







プルルルルルッ





プルルルルルッ








『チャンミン?』

「あ、もしもし?すみません今忙しいですか?」

『定時も過ぎてんだから忙しくねぇよ。
もう家にいるし』

「よかった……あの…
色々とご迷惑おかけすることになッ」

『気にしてねーよ』

「………いや、その…」

『迷惑だなんて思ってねーし、
それにチャンミンの方が大変だろ?
だから俺に気なんて使うな』

「や、あの…ですねッ、
なんて言うか、僕が悪くてですね」

『チャンミンは何も悪くねーだろ?
それに俺たちは別に悪いことなんて何ひとつもしてない。だろ?』

「…………………」

『恋人関係だって叫びたいぐらいだ』

「…………本当ですか?」

『男に二言はねぇ』

「………ありがとうございます」







チャンミンが謝ることじゃない。
チャンミンだってある種被害者だ。



そりゃあ俺の写真を"最愛"というタイトルで展示したのがきっと事の発端だろうけど、
だからって週刊誌に載っていいってわけではない。



















って思ってた。























『なんだこれっ?!?!!』

「だから先に謝ったじゃないですか」ニコッ

『はぁ?!いつ!?』

「先日の電話で♡」

『電話っ?!…………ッ!!!!!!』

「迷惑をかけることになるって事前に」

『あれは週刊誌の話であって、
今回のこの話のことなんてしてねぇ!!』

「僕は週刊誌の話のつもりではなかったんですよ。
ユノさんが遮って最後まで言わせてくれなかんですー」

『ナニっ?!!』











チャンミンは個展での作品に1つ追加することを発表した。
写真はどこにも公開されていない。
来場者のみが知れる。
個展のホームページには追加作品があることしか触れていないし、
マスコミも今の段階では特段動きはない。







個展の開催途中に追加作品を発表だなんてあまり聞かないから、
一体どんな作品か軽い気持ちでチャンミンに直接聞いた。






ら、






















『いつ?!いつ撮った?!!』

「僕の家でセックスした翌朝です♪」

『………………ぁああ!!あの時の!!!』



















"最愛の味"






そうタイトル付けされた作品は、



俺の寝顔……で唇にピントが合っている写真…。





俺自体にはピントが合っていないし、
目は閉じてはいる。



でもそんなことよりもっ!!
肩や鎖骨があらわになっていて、
裸…上半身裸なのは容易に考えられる。




男の恋人がいるかもしれないと
週刊誌に書かれた上に、
こんな写真!!







男の恋人がいることをさも正解と自分から暴露しているのと同じじゃないか!









何考えてんだよチャンミン!!








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