Yside











ゴクゴクゴクッ






「ぷふゎぁぁぁぁ」

『禁酒してなかったっけ?』

「個展の取材も全て終えましたので、
ビール解禁ですよー」

『そりゃよかったな』

「ユノさんは?」

『俺はレモンサワーで充分だよ』

「そうですか?」

『苦いのが苦手なんだよ』

「人は見かけじゃないの例文に使いたいぐらいです」

『は?』

「ふふふ」





酔ってんなこれは。
一仕事終えたんだから酒も飲みたいだろうし、気が緩むのも分かるが、






『寝んじゃねーよ』

「うー」

『寝るなら……シャワーしてからにしろ』

「一緒に…」

『嫌だね、酔っぱらいの相手はしたくねーよ』

「ぶぅぅッ!酔ってないのに!!」

『………………完全に酔ってやがる』






これを酔ってないと誰が言える?
チャンミンにしてはありえない距離感。
もともと恥ずかしがり屋だから
恋人の日常的な距離感なんて皆無。
それが今は俺の肩に頭を乗せ、
ムニャムニャ言葉にならない言葉を発している。

ローテーブルの下では足を絡めてきてるし。




はぁぁぁ、
ゴムもローションも無いチャンミンの家ではなんもできねぇっつーのに、
俺は地獄にでも来たのか?












「シたいです」

『我慢しろ』

「どうして…ですか?僕たち恋人なのに」

『俺はお前を想って言ってんの』

「………意味不明です」

『分かれ』

「わかんないですよー。
僕を想ってるならシてくれるはずです」

『……………はぁぁぁ
あのな、ここはチャンミンの家だろ?』

「そーですよ?」

『なら、ゴムもローションも無ぇんだからできないだろ。分かれよそれぐらい』

「…………………」

『今日は酔ってそのまま寝ろ。
連日の取材で疲れただろーし』

「…………………」

『俺は……帰るから』

「抱きしめるこさえしてくれないですか」

『チャンミンって悪魔だな。
俺だってシてーの!それを我慢してんだから』

「だからシましょって言ってます!」

『だーかーらーゴムもローションも…っ』

「ありますよっ!!」




……………ん?



『…………あ……る?』

「ありますよ…ゴムもローションも…」

『そんな…わけ………』

「……………////」





だっていつも俺の家でしかシねーし、
だから自分の家には必要ないって言ってたし、それなのに今はあるだと?




何故?









『………………』ジーッ

「なんですかその目は」

『怪しい』

「はい?!」

『だってそーじゃねーか!
ヤる時はいつも俺の家なんだから
チャンミンの家にあるなんて怪しすぎる!』

「はいぃぃぃ?!」

『使ったのか?いつ?………だ…れと?』

「…………酷いですね」

『…………………』

「僕が自ら買って、ひとりで使ったらダメなんですか?」

『ひとりで使った……のか?』

「…………………えっと…まぁ、…///」



自分で言っておいて、
顔も耳も真っ赤になってる。







『なんで?』

「なんでって…///……そんなこと…」

『話すまで問い詰めるから、でなんで?』

「……………意地悪です」

『もともとこーゆー性格なんだよ』

「……………嘘です。
ユノさんは意地悪なんかじゃないです」

『……………………』



今、その話につっかかる場面じゃなくね?
自分が問い詰められてるっつーのに、



『俺がもともと意地悪か今はどうかはどうでもいいし』

「だめです。
ユノさんは優しい性格で本当は皆と絡みたいと思ってる不器用な人だってことはハッキリ言わないとです!」

『…………………』




分かった風に言いやがって。








不器用ってのは当たってるけど。










さらっと俺の喜ぶツボを押してくるあたり抜かりない。
本人はそんなつもり無いのだろうけど、
俺の心臓が持たねぇ。
だって確実に俺は今キュンとしたのだから。



嬉しくて舞い上がっちまうところだった。









「いいですか?
自分を卑下にしないでください。ユノさんはとても魅力的なんですから」

『………………』

「…………返事は?」

『わかったよ』

「ふふ、約束ですよ♪」

『………………』








酔ってるくせに、
俺から問い詰められてるくせに、












可愛いすぎるだろ。
















『わかった。約束する』

「本当ですか?」

『あぁ、だから俺の問にもちゃんと答えろ』

「……………問い?」

『ゴムやローションをひとりで使ったのは何故?』

「あ、それは……///」

『それは?』




俺はわかってる。
チャンミンは恥ずかしがり屋のくせに
問い詰められると折れるんだ。
俺のこの視線から逃れられない奴だってことぐらいわかってんだよ。
だから俺から『言わなくていい』なんて言うはずがない。






「…………淋しくて」

『寂しい?』

「忙しくてなかなか会えていなかったですし、それってつまりシてないってことですし…」

『チャンミンが忙しいから暫く会えないって言ってきたと思うんだけど?』

「そうですけど!」

『………………』

「でも、ユノさんの存在が僕には大きすぎました。
会えないと淋しいし、
触れていないと悲しい気持ちになる」

『………………』

「だから……///」

『だからひとりで抜いたってのか?
つまりは欲求不満だったってことか』

「欲求不満……とは違います。
ユノさん不足なだけです。欲を欲したわけではありません」

『俺を想って抜いたってのか?』

「……………………はい」





えろい奴。
今、どんな顔か分かって言ってんのか?




『そんな顔で言うな』

「そんな顔ってどんな顔ですか?」

『…………俺を欲してる顔だよ。
ひどく官能的だな』

「わかりません」

『わからなくて結構。
他の奴にもこんなエロい顔されたら、たまったもんじゃねぇよ』

「どんな顔かは全然わかりませんが、
他の方にユノさんに見せる顔をするわけないじゃないですか」

『なに?どこで習うわけそんな言葉』

「……………秘密です」

『ふーん、別にいいけど』

「…………………」






フッ









何が合図だったかはわからねぇけど、
俺が右口角をスッと上げ、
鼻で笑った瞬間、
チャンミンはゆっくりと綺麗な瞳を閉じ
俺に向かって顔を近づけてきた。



チュッ







『チャンミンは俺とのキスが本当に好きだな』

「……………ユノさんとのキス…好きですけど、一番はユノさんの味が好きなんです」

『幕の内弁当の味?』

「…………………っそれは忘れてください!」

『あーはーはー』

「もぅっ!」

『ほらチャンミン。

俺不足だったんだろ?』




俺が両手をは広げてやると、
チャンミンは一瞬ポカンとしたが、
花が綻ぶような可憐な笑顔で俺の胸に飛び込んできた。






『ゴムとローションはどこにあんだ?』






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