Yside







「チョンさん…あの、どうしてここに?」

『だからシムを迎えに…』

「迎えって…僕は今日の夕方にソウルに帰りますよ?」

『………………え、俺に地元に戻るってメッセージを送ったよな…?』

「送りましたけど、別に永遠に戻るって意味でもありませんし、
用事があって戻ってるだけですよ?
ほらスタジオにはいないので連絡をと思って送ったのですが…」

『……………まじか…』




とんだ勘違い!!
いや、もともと迎えに行くっていう発想ではなかった。
シムがスタジオに飾るようなのか俺の写真を準備し、しかもその写真のタイトルを"最愛"にしてたから……
そんなん知ったらシムの過去とかそういうのを受け入れてやるべきだって思ったんだ。
愛おしくなったというか…




ただ、






目の前に奴がいるとは聞いてねぇし、
現に奴の姿形を見ると、
とんでもなく許さねぇってなる。
シムもそうだけど、
当の塾のセンコーなんて悪気が無いって態度じゃねぇか!!




『かっ、勝手に来て悪いって思ってるけどなんでコイツがいるわけ?』

"こいつってもしかして僕?"

『黙ってろ』

"ヤンキーくんは怖いなぁ"クククッ

「先生、チョンくんはヤンキーではないですよ?"元"です!」

『………………』



シムの微妙な訂正。
有り難いような…そうじゃないような……
なんか論点ズレてるし。



「チョンさん、先生とはたまたまお会いして立ち話もどうかと思ってですね、」

"そーそー久しぶりの再開に話が弾んでいたわけ。そこにチョンくんが来ちゃって台無しだよ"

『…………………』

「先生とはいろいろ…その話さないとなって思ってたので…」

『いろいろって?』

「その……」

"だからさっき言ったよね?
僕とチャンミンの関係を知ってるでしょ?ってそのことだよ。でしょ?チャンミン"

「………………はい」

『だったらこの場に俺がいないとおかしいってことだよな』

「……え?」

"まぁいてもらっても僕は構わないよ"

「先生……」

『内容によっては俺はお前を警察に付き出す』

「チョンさん?!」

"別に構わないけど?"

『…………………』




この挑発的な瞳。
なんなんだ?犯罪と言ってもおかしくない行為をシムにしておいて、
その余裕はどこから来るんだ?



"まぁ、チョンくんの話を誰が信じるか、だけどね。
君は"元"とはいえヤンキーで高校を退学。
僕はソウル大出身で韓国では名の知れた企業の息子。
誰がどう見ても答えはわかるよね?"

『………………』



なるほど。
そういうことか。
権力と金がこいつの裏には存在してるってわけか。







『たとえお前に権力とやらが働こうが、被害者のシムが証言すれば多少は警察も…』

「チョンさん、僕は警察には……」

"チャンミンが被害者?
笑わさないでよ。チャンミンは被害者じゃない。チャンミンは……共謀者だ"

「先生…」

『シムが黙ってるからって調子に乗るなよ!』

"本当だよ。だって僕達は互いに必要としてたんだから"

『は?』

"確かに初めは僕が一方的だったよ。
でもチャンミンも求めてるってわかってたから僕は……"

『シムも求めて……た?』

"ふふ。何も知らないくせに、よくもまぁでしゃばれるね?"

「先生……」




ちょっと待てよ。
シムも求めてたってどういうことだよ。
嘘だと、こいつが自分に都合の良いように解釈してるだけ、ただの妄想だ。
と思いたいが、シムも否定も訂正もしないってことは本当にシムも……?




"チャンミン、ちゃんと言わねーとユノが勘違いするだろ?"

"君こそ1番の部外者だね"

"お前にとっては部外者でも、
チャンミンやユノからしたらそうでもねーんだよソレが"

"ふ〜ん"

"ふ、納得いってねぇくせに。
言っとくけど俺様はチャンミンの気持ちを全部知ってる。お前なんかよりよっぽどな"

"じゃあ教えてもらおうか、
チャンミンの気持ちってのを"

"教えてやってもいいが、
チャンミンの気持ちはチャンミン本人が話さないと誰も納得しねぇだろ?"

「ヒチョルヒョン……」




俺の知らないヒチョルヒョンの表情。
こんな真剣な眼差しのヒョン初めて見た。
いつもふざけたり、アニメやゲームの話ばっかのヒョンなのに、
少し怒りを含めた口調、
シムとはまた違った大きな目にグッと力を込めあいつを睨んでいる。


これがヒョンの言う"チャンミンを守る"なのか?







「僕、僕は……」


シムらしくない声。
俺の知ってるシムはたまに怒る。
屋上ではシムは常にプリプリしてたっけな…あ、怒るじゃねーか、叱るだな。
でもって興味があるのかないのか声からでは分からない奴。
でもふと、俺の心をギューッんと掴むくらい嬉しい言葉をくれる。




でも今のシムは、
悲しみ?不安?そんな感じ。





"チャンミンの気持ちを話して"



特徴的な眉をハの字にし、
ゆっくりとシムは口を動かした。





「僕、先生のこと……好きでしたよ」








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