Yside







"なるほどな"

『話したのでシムを何処で見かけたのか教えて下さいよ』



っていっても今更だけど。




"チャンミンなら家だろ。
家に帰ると言っていたし"

『家……』



家となると会える可能性はゼロに等しい。
住所も知らねぇし、もし万が一住所が分かっても家族団らんの中入り込むなんて出来ない。



"つーか、お前等そういう仲になったんなら俺様に言えよな"

『いや〜なんていうか、微妙な内容だし』

"俺様は偏見なんてねぇし、
そもそもお前等の気持ちを知ってんだから今更隠してんじゃねーよ"

『そうだとして………も……ん?』

"それに俺様のお陰でだな、"

『ヒョンっ!!!!』

"うるせぇな!鼓膜がやられるだろ"

『お前等ってなに?!』

"なんだ?国語の問題か?"

『お前等って"等"ってどういう意味?!』

"等?等は言葉のままだろ"

『俺とシムってこと?!』

"おーおーわかってるじゃないか"

『さっきお前等の気持ちを知ってるって言ったよね?ヒョンは俺の気持ちだけじゃなく、シムの気持ちも知ってたってこと?!』

"あたりめーだろ?"

『…………………なんで?』

"は?"

『なんでヒョンが知ってんの?!!』

"んなの、聞いてたからに決まってんだろ"

『……なんで?!』

"お前そこになんでと言われても"

『なんでヒョンとシムが知り合いなの!』

"そりゃあ従兄弟だからな"

『…………い…と……こ…?』

"そ、従兄弟♪"





従兄弟ってあれ?
親戚?血の繋がり……はあるのか知らん!
ってかそういう世界線なわけヒョンとシムって?!はっ?!!





『そんなこと今まで知らなかった!
なんで話してくれなかったの?!
相談もしてたし、なんならヒョンはずっと"シム"って呼んでたじゃん!』

"ん〜?別に俺様とチャンミンが従兄弟だろうと関係ねーじゃん。ユノのくせにグチグチ言うな"

『ユノのくせには余計ですよ……』

"おーおー気弱になりやがって。
ソウルに一人で行ったって大口叩いていたユノはどこに行った?"

『別に大口なんて叩いてないですよ…』

"で、チャンミンの家に行かなくていいのか?俺様なら家も知ってるぞ?"ニヤニヤ



う、





魅力的な言葉なのに…
ヒョンのこの状況が楽しくて仕方ないって表情が……なんかムカつく。



『ヒョン!楽しんでるでしょ!
俺はこんなに悩んでるのに!!』

"はぁ?俺様が楽しんでるだと?
ユノや、お前はまだ俺様をわかってねぇな。俺様が楽しんでるだなんて…ありえねぇだろ?"

『ヒョン……』



なんだかんだヒョンも俺やシムを弟のように心配してくれてるんだ……



"楽しんでる以上に超絶おもろくてウッキウキだね"

『……………………』

"こーんなにおもしれぇことが目の前にあって、ウキウキしねぇ方が人間じゃねぇよ"

『…………………………………あっそ、』





少しでもヒョンが良い人って思った俺が悪かった。
ヒョンはそういう人じゃないか。
分かってたのに、
いや、心配はしてくれる人だけど、
人の悩みを楽しむ人だった。







"たぶんだけど、
チャンミンの奴、その塾のセンコーと会ってると思う"

『…………え、』

"見たわけじゃねぇけど、
たぶんそうだと思う。ユノの為に決着を付けようとしてんじゃね?"

『なんでそう…思ったんですか?』

"俺様の勘だよ"

『……………(信用できない)』

"疑ってるだろ?
俺様のチャンミンを見る目を見くびるなよ。少しの変化で気付くんだからよ"

『なんでシム限定?』

"そりゃガキのころからチャンミンを守ってきたからな。
めちゃくちゃ可愛かったぞ。
俺様は美人だと言われたが、
チャンミンは可愛いと言われ姉妹と間違われるほどだったからな。
そりゃあ俺様が守ってやらねーと"

『……………………』


だったら塾のセンコーからも守ってほしかったけど?


"よし!チャンミンの家に突撃だー!"

『ちょっ、ヒョっヒョン?!!』



ヒチョルヒョンは俺の左腕を掴み、
俺の家とは真逆にドンドン進んで行く。
華奢な腕のくせにどこからそんな力が沸くんだ?


でも心のどこかで
ヒョンがいてくれて良かったって思ってる。
もし本当にシムの家に塾のセンコーがいたとしたら、
俺は立ち向かう勇気なんてないから。











にしても、
ヒョン………







掴まれてる腕が痛いって!!


























『ここがシムの家……』



やっぱ金持ちだったんだ。
なんとなく身なりとかでそう思ってた。
俺の家とは天と地の差…こんな豪邸が同じ地域にあったなんて知らなかった。







『っっっヒョン!!駄目ですって!!』



ヒチョルヒョンはチャイムも鳴らさずにシム家の玄関に触れたから、
慌てて止めた。




いや、さすがにさ…
いくら従兄弟でも自分の家じゃないわけで、ヒョンが勝手に開けるって駄目…だよな?普通……



"俺様はシム家みたいなもんだから大丈夫だよ"

『………………』


シム家みたいなもんって何?!
そんなの罷り通んの?!




と俺が心配していたら、
玄関から見える部屋の扉がガチャリと開き、

"あらヒチョルくん久しぶりね"

"チャンミンいる?"

"部屋にいるわよ、高校の時に通ってた塾の先生が今いらして……って"

『シムっ!あ、お邪魔しますっ!!』

"あー俺の後輩だから大丈夫"

"そう?すごい剣幕した表情だったけど?"

"ただの青春だから♪"




俺はシムの母ちゃんらしき人が、
部屋でシムとあの塾のセンコーがいると言って居ても立っても居られなかった。
初めてで本来なら挨拶とかしないと不信がられるのに、
そんな時間今の俺にはなくて、とにかく必死にでかい家の2階に向かった。




2階は想像通りでかくて部屋も複数ある。
どの扉がシムの部屋へと繋がっているのかわからない。


暫く悩んでいると、





"一番奥だよ"

『ヒチョルヒョン……』




この扉の向こうにシムと……奴がいる。
急に怖気づいてしまった。
だってもし扉を開けた時に致していたら?
無理無理無理無理。
発狂しちまう。




そんなことを考えていたらヒョンが痺れを切らし、
んっ、と顎で扉を早く開けろと無言の圧をかけてきた。




えーい。もう知らねぇ!!!







バンッ!


『シムッ!!!』




俺は目をギュッと閉じ意を決して扉を開けた。
さすがに直視はできないから。









"チョン……さん?"

「…………チョンさんどうしてここに…?」



俺が聞いたこともない声で俺の名を呼んだ奴がいた。
誰だよって言いたいところだが、
たぶん…いや間違いなくそいつはシムの塾のセンコーでシムを襲ったやつ。



『シム、迎えに来た』

「え?迎えですか?」

『俺が悪かった。
もっとちゃんとシムの話を聞いてやるべきだった。だからごめん許してくれ』 

「許す?」

『俺と一緒にソウルに帰ろう』

「…………………」



ヒチョルヒョンもいたし、
俺の敵、塾のセンコーもいたから超絶恥ずかしいセリフだったけど、
それほど俺はシムを取り戻したかったし、
このクソすぎるセンコーから早く離れてほしかった。



"チョンくん話が勝手すぎるよ"

『…………………』

"チャンミンはさ、"

『うるさい!外野は黙ってろ!!』

"………………外野ねえ…。
果たして本当に僕は外野なのかな?"

『何が言いたい』

"知ってるんでしょ?僕とチャンミンの関係を"

『なっ?!』



関係だと?!
関係なんてねぇだろが!
お前が自分勝手にシムを襲っただけだろ?!
あえて関係があるとしたら、
塾のセンコーと生徒ってことだけだよ!





つーか、俺に向かって不敵な笑みを浮かべてきやがる。
気に食わねぇ!ただでさえ気に食わねぇのに更に気に食わねぇ!!!






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